巡回指導の準備|当日までに揃える書類と、見られ方
公開 2026年8月21日/更新 2026年10月3日
目次12項目
巡回指導は、都道府県のトラック協会に置かれた適正化事業実施機関が行うものです。監査とは別のものになります。ここが混ざっていると、必要以上に身構えることになります。
一般に、巡回指導は、すべての事業所を対象に、概ね2年程度の間隔で回ってくる形で運用されています。訪問の前に案内の文書が届くので、当日までに準備ができます。
巡回指導
- 適正化事業実施機関が実施
- 事前に案内の文書が届く
- 指導・助言が目的
監査
- 地方運輸局・運輸支局が実施
- 予告なしの場合もある
- 処分につながることがある
ポイントはここです。巡回指導は、直すべきところを教えてもらえる場面です。
指摘が出ること自体は、悪いことではありません。むしろ、放置したまま監査を受けるほうが影響は大きくなります。
巡回指導で揃えておく書類一覧
巡回指導で揃えておく書類は、日々の記録が中心になります。新しく作るものは、ほとんどありません。すでにある記録を、見られる形にしておく作業になります。
| 分類 | 主な書類 |
|---|---|
| 運行の記録 | 運転日報、運行指示書、タコグラフの記録 |
| 点呼の記録 | 点呼記録簿、アルコールチェックの記録 |
| 運転者の管理 | 運転者台帳(乗務員台帳)、教育記録、適性診断の受診状況、事故の記録 |
| 車両の管理 | 車両台帳、点検整備記録簿、日常点検の記録 |
| 労務の管理 | 就業規則と36協定の届出、出勤簿、拘束時間の管理表、健康診断個人票 |
| 事業の管理 | 事業計画の届出の控え、運行管理者・整備管理者の選任届、運輸安全マネジメントの取組 |
| 保険の加入 | 労災保険・雇用保険、健康保険・厚生年金保険の加入が分かる書類 |
量としては多く見えますが、どれも普段から作っているものです。指導項目は全部で38項目あり、事業計画、帳簿類、運行管理、車両管理、労基法等、法定福利、運輸安全マネジメントの7つの区分に分かれています。労務の帳簿の揃え方は運送業の法定三帳簿、ヒヤリハットや教育の記録の回し方は安全記録を回すに整理しています。巡回指導チェックリストで自社の状態を先に確認しておくと、当日までにやることが決まります。
巡回指導で指摘が多い項目
巡回指導で指摘が出やすい項目には、傾向があります。いくつか挙げておきます。
ひとつめが、点呼記録の不備です。実施者の欄が空いている、方法の欄が書かれていない、運行があった日に記録が無い。こうした抜けが見つかりやすい部分になります。
ふたつめが、日報の記載漏れです。休憩の欄が空欄、走行距離が入っていない、経過地が書かれていない。空欄が多い日報は、書き忘れとして扱われます。
みっつめが、教育記録の内容です。「安全教育」とだけ書かれていて、何を伝えたかが分からない記録は、実施の証明として弱くなります。
よっつめが、期限の管理です。適性診断の未受診、定期点検の遅れ、選任の届出漏れ。日付で管理していないものが、抜けやすくなります。
どれも、当日に直せるものではありません。だからこそ、日々の運用のほうに手を入れておく形になります。
もう少し細かく見ると、指摘は3つの型に分かれます。
ひとつめが、記録が無い型です。運行があった日の点呼記録が無い、教育を実施した記録が無い。この型は、日々の運用が回っていないことを示しています。
ふたつめが、記録はあるが不十分な型です。欄が空いている、内容が読み取れない、日付が入っていない。この型は、様式か書き方を直すと解消します。
みっつめが、期限を過ぎている型です。適性診断、定期点検、届出。この型は、期限の持ち方を変えると出なくなります。
自社の指摘がどの型かを見分けると、手を入れる場所が決まります。とはいえ、3つとも様式を作れば直るわけではありません。ひとつめの型は、様式を増やしても解決しない部分になります。
点呼の実施内容は点呼で確認すること、日報の書き方は運転日報の書き方に整理しています。
巡回指導に日常の運用で先回りする
巡回指導に先回りできることは、そう多くありません。いちばん効くのが、月末に枚数を突き合わせる作業です。
- 1 運行のあった日数 カレンダーで数える
- 2 日報の枚数 束を数える
- 3 点呼記録の枚数 束を数える
- 4 差を確認 合わなければ探す
数が合っていれば、その月は抜けがありません。合わなければ、日付順に並べて飛んでいる日を探します。この作業を毎月やっていると、巡回指導の前にまとめて確認する必要がなくなります。
もうひとつが、期限を日付で持つことです。適性診断、定期点検、車検、選任の届出。これらを一覧にして、日付で並べておきます。そのうえで、月に一度、翌月と翌々月の期限を確認する習慣があると、遅れが出なくなります。
車両の期限管理は運送業の車両管理に整理しています。
巡回指導の当日はどう進むか
巡回指導の当日は、書類の確認と、聞き取りが行われます。訪問するのはトラック協会の指導員で、2人1組で回るとされています。書類は、束のまま見られることが多くなっています。1枚ずつ精査するというより、全体として辻褄が合っているかという見方です。
聞き取りでは、運行管理の実態について質問が出ます。誰が点呼を行っているか、指導はどのように実施しているか、記録はどこに保管しているか。ここで答えに詰まるのは、たいてい「担当が決まっていない」項目です。
誰がやっているかが即答できない業務は、実際には回っていないことが多くなっています。
準備としては、書類を揃えるだけでなく、誰が何を担当しているかを一度整理しておくと落ち着いて対応できます。とはいえ、分からないことをその場で取り繕う必要はありません。「確認して後日回答します」で構いません。
同席する人も、決めておくと進みやすくなります。運行管理者と、記録を作っている事務の担当者。この2人がいると、たいていの質問に答えられます。
経営者だけが対応する形だと、日々の運用について答えに詰まる場面が出ます。逆に、事務担当だけだと、体制についての質問で止まります。
指導員は1日に2か所ほどを回るとされているため、当日は半日程度を見込んでおくと安心です。運行が重なる時間帯を避けて日程を組んでおくと、落ち着いて対応できます。
指導の場では、聞きたいことを聞いてしまうのが良いです。日ごろ判断に迷っている運用について、その場で確認できる機会になります。質問を紙に書き出しておくと、当日に思い出せます。
巡回指導で指摘を受けたあとの改善報告
巡回指導で指摘を受けた項目については、改善の報告を求められます。報告の期限は通常3か月以内、Gマーク(安全性優良事業所)を申請したあとは1か月以内とされています。指摘が多くて全部が間に合わないときも、期限までに直せた部分を報告する形が案内されています。
ここで大事なのが、直し方です。その場しのぎで書類を作ると、次回に同じ指摘が出ます。指摘は、記録が無いことより、運用が回っていないことを示している場合が多いためです。
たとえば、点呼記録の抜けを指摘されたとします。抜けていた日の記録を作るのではなく、なぜ抜けたのかを見ます。臨時の運行だったのか、担当が不在だったのか。原因に手を入れると、次回は指摘が出ません。
- 3か月改善報告の通常の期限
- 1か月Gマークを申請したあとの期限
- 半年D・E評価のあと、次の巡回指導まで
巡回指導と監査の違い
監査は、地方運輸局や運輸支局が行うものになります。法令違反が疑われる場合や、重大な事故が発生した場合、通報があった場合などに行われます。予告なしで来ることもあり、結果によっては行政処分につながります。
巡回指導との違いは、目的です。巡回指導は指導と助言、監査は法令の遵守状況の確認になります。
とはいえ、見られる書類はほとんど同じです。巡回指導の準備ができている状態は、監査に対する備えにもなります。
日々の記録が整っていれば、どちらが来ても対応できます。
逆に言うと、巡回指導のためだけに準備する形は、あまり意味がありません。数年に一度のために慌てるより、月末の30分を習慣にするほうが軽くなります。
巡回指導の準備を軽くする書類の置き方
巡回指導の準備は、書類の置き方でも当日の負担が変わります。年度ごと、月ごとに分けて綴じておくと、求められた期間をすぐ出せます。
保管場所も、1か所にまとまっているほうが早くなります。運行の記録は事務所、労務の記録は別の部屋、という形だと、行き来が発生します。
電子で持っている記録は、当日に画面で見せられるかを確認しておきます。印刷が必要な場合は、時間がかかることもあります。
保存期間が過ぎたものは、処分しておくと束が軽くなります。期限の整理は書類の保存期間にまとめています。
当日に探す時間が減ると、それだけで進み方が変わります。書類がすぐ出てくる事業所は、日々の運用も整っていることが多くなっています。置き方は、運用の状態がそのまま出る部分でもあります。
巡回指導の評価と次回までの間隔
巡回指導では、項目ごとに適否が判定され、そのうえで営業所ごとにA〜Eの5段階の総合評価が通知されます。運行管理者の選任届出、過労防止、点呼、乗務員の指導監督、特定の運転者への特別な指導と適性診断、整備管理者の選任届出、定期点検、健康診断の9つは重点指導項目で、ここに「否」があると総合評価が1段階下がるとされています。
A・B・Cの評価であれば、次の巡回指導は通常の間隔(概ね2年程度)になります。D・Eの評価だと、改善報告のあと、半年ほどで次の巡回指導が来ます。改善報告を出さない、または改善が見られない場合や、3回続けてD・E評価の場合は、国へ報告される仕組みです。国へ報告されると、地方運輸局の監査や処分の対象になり得ます。
このあたりの扱いは、細かな運用が地域で違うことがあります。詳しくは、所管のトラック協会(適正化事業の担当)に確認しておくと確実です。
評価そのものを目的にする必要はありません。ただ、D・Eの評価が続くと半年ごとに対応が要るため、事務の負担は大きく変わります。
一度整えてしまうと、その状態を保つほうが楽になります。ゼロから作り直すより、続けるほうが手間が小さいためです。
巡回指導を初めて受けるとき
巡回指導は、新規に事業を始めた場合、比較的早い時期に来ます。時期は地域の実施機関によって違うため、許可を受けた時点で所管のトラック協会に確かめておくと準備の段取りが立ちます。
このときは、記録がまだ少ない状態です。だからこそ、様式と運用を決めておく良い機会にもなります。
指摘された内容は、これから何年も使う運用の土台になります。その場で直すというより、形を決める作業だと考えておくと受け止め方が変わります。
分からないことは、その場で聞いてしまうのが早道です。適正化事業実施機関の担当者は、指導と助言のために来ています。「この様式でよいか」「この書き方で足りるか」といった質問には、答えてもらえます。
自社だけで考えて何か月も迷うより、一度聞いておくほうが早く形になります。準備の面では、点呼記録と日報がそろっていることが最優先です。この2つが毎日書かれている状態であれば、あとは順に整えていけます。
なお、指導の項目や進め方は、地域や時期によって変わることがあります。具体的な内容は、日程の連絡が来た際に確認しておくのが確実です。
巡回指導は、身構える場面として語られがちです。実際には、外の目で自社の運用を見てもらえる数少ない機会になります。普段どおりの記録を、普段どおりに出せる状態にしておく。準備としては、それで足ります。
そのために効くのは、当日の1日ではなく、毎月の30分です。月末に枚数を数え、期限を確認する。この2つが習慣になっていれば、連絡が来ても慌てずに済みます。
指摘が出たら、その内容は自社の弱いところを教えてくれています。書類を直すのではなく、運用を直す。そこまでやると、次の数年が楽になります。
一度で全部を整えなくても構いません。指摘された順に、ひとつずつ形にしていけば足ります。
まずは、いま手元の書類が求められた期間ですぐ出せる状態かどうか。そこを試してみると、当日までにやることが見えてきます。出てこない書類があれば、そこが最初に手を入れる部分になります。
巡回指導にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
巡回指導は、ここ数年で低い評価の事業所への扱いと、巡回の場で集める情報が変わってきています。以前の巡回指導の経験だけで準備していると、当日に聞かれることが増えている場合があります。
| 時期 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 2023年度 | D・E評価の事業所を重点化。改善報告のあと半年ほどで再び巡回し、3回続けてD・Eの場合や、改善が見られない・報告がない場合は国へ報告する形に | 近畿運輸局「適正化実施機関の活動」、労働新聞 2023年4月24日 |
| 2023年7月 | 国土交通省が「トラックGメン」を発足。荷主・元請の違反原因行為(長時間の荷待ちなど)の情報を集める | 三重運輸支局 2024年12月5日発表資料 |
| 2024年4月1日 | 改善基準告示の改正が施行。巡回指導の「過労防止」で見る基準が、1日の拘束時間は原則13時間・最大15時間、休息期間は継続9時間を下回らない形に | 令和4年厚生労働省告示第367号 |
| 2024年度 | トラックGメンを「トラック・物流Gメン」に改組。都道府県のトラック協会に「Gメン調査員」を置き、巡回指導の際に資料を配って荷待ちなどの情報を聞き取る | 三重運輸支局 2024年12月5日発表資料、近畿運輸局資料 |
| 2026年4月 | Gメン調査員が集める情報に「白トラ委託等」が加わった | 近畿運輸局「適正化実施機関の活動」(2026年7月版) |
巡回指導の38の指導項目そのものは、2018年4月の見直しで「運輸安全マネジメント」が加わった形から大きく変わっていません。変わったのは、低い評価が続いたときの扱いと、巡回指導が荷主側の情報を集める場にもなった点です。荷待ちや契約にない作業で困っていることがあれば、当日に伝えられる形でメモにしておくと、その場で話が進みます。
出典:
- 貨物自動車運送事業法(e-Gov法令検索)
- 近畿運輸局「適正化実施機関の活動」(2026年7月)
- 東京都トラック協会「適正化だより」第19号(巡回指導の指針とマニュアルの改訂)
- 三重運輸支局「トラック運転者への聞き取り調査を実施します」
- 厚生労働省「トラック運転者の改善基準告示」
確認日は2026年10月3日です。巡回指導の時期や当日の進め方は、所管の都道府県トラック協会(適正化事業の担当)で確かめられます。
巡回指導に出てくる用語
巡回指導の案内文や結果の通知には、制度の言葉がそのまま出てきます。意味を押さえておくと、指摘の読み違いが減ります。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 地方実施機関 | 国土交通大臣が区域ごとに1つ指定する、地方貨物自動車運送適正化事業実施機関。各都道府県のトラック協会が担う | 貨物自動車運送事業法第38条 |
| 地方適正化事業 | 法令の遵守について事業者を指導することや、苦情の処理などの事業。巡回指導はこの「指導」にあたる | 同法第39条 |
| 指導項目 | 巡回指導で適否を判定する38の項目 | 巡回指導の指針・マニュアル(2018年4月改訂) |
| 重点指導項目 | 38項目のうち、「否」があると総合評価が1段階下がる9項目 | 同上 |
| 総合評価 | 営業所ごとに通知されるA〜Eの5段階の評価 | 同上 |
| 改善報告 | 「否」とされた項目を直したことを報告する書類。通常3か月以内 | 同上 |
| 監査 | 地方運輸局などが立入検査などで法令の遵守状況を確かめるもの。結果によって行政処分がある | 同法第60条(報告の徴収及び立入検査) |
巡回指導の用語で迷いやすいのは「重点指導項目」です。38項目のどれでも「否」は改善報告の対象ですが、重点の9項目は総合評価そのものを下げます。点呼、過労防止、健康診断の3つは、とくに日々の記録で差が出ます。
巡回指導と一緒に押さえておきたいこと
巡回指導の健康診断は「全員」と「深夜業の6か月」で見られる
巡回指導の健康診断の項目では、すべての運転者に1年以内ごとに1回の定期健康診断をしているか、記録を5年残しているかが見られます。午後10時から午前5時までの深夜業に常時従事する運転者は、6か月以内ごとに1回です(労働安全衛生規則第45条・第51条)。年1回でまとめて受けさせている事業所は、夜間の運行がある人だけを抜き出して、半年後の受診予定を先に入れておくと指摘を避けやすくなります。個人票の書き方は運送業の健康診断個人票にまとめています。
巡回指導では事故報告書の提出も確かめられる
巡回指導の帳簿類の項目には、事故の記録が保存されているかに加えて、自動車事故報告書を出しているかが含まれています。報告の対象になる事故があったのに出していないと、帳簿が整っていても「否」になります。事故のあとの書類の流れは運送業の自動車事故報告書に整理しています。
巡回指導の結果はGマークの申請にも響く
巡回指導の結果は、安全性優良事業所(Gマーク)の申請と関わります。Gマークを申請したあとに指摘があると、改善報告の期限が1か月以内と短くなります。申請の予定がある年は、巡回指導の時期と重ならないかを先にトラック協会へ確かめておくと、慌てずに済みます。

よくある質問
書類が一部欠けている場合、当日はどうすればよいですか。
取り繕わず、欠けていることと、その原因、再発防止の対応を説明するのが基本です。欠けている項目は改善報告の対象になるため、誰がいつまでに直すかを示せる状態にしておくと、通常3か月以内の報告にそのままつなげられます。
電子データで保存している書類はどう見せますか。
画面で確認してもらえる場合もありますが、印刷して綴じた状態を用意しておくと確実です。事前に確認しておくとよいでしょう。