運送業の法定三帳簿|出勤簿・労働者名簿・賃金台帳の要点
公開 2026年8月21日
法定三帳簿という言い方があります。出勤簿・労働者名簿・賃金台帳の3つです。労働基準法にもとづき、事業場ごとに備え付けます。
どの業種にもある帳簿ですが、運送業では市販の様式のままだと足りません。理由は2つあります。改善基準告示があること、賃金の構成が複雑になりやすいことです。
3つの役割
| 帳簿 | 何の記録か | 根拠 |
|---|---|---|
| 出勤簿 | いつ働いたか | 労働時間の把握義務 |
| 労働者名簿 | 誰が働いているか | 労働基準法 第107条 |
| 賃金台帳 | いくら払ったか | 労働基準法 第108条 |
3つは繋がっています。出勤簿の労働日数と労働時間数が、そのまま賃金台帳に転記されます。両者の数字が食い違っていると、どちらが正しいのか誰にも分かりません。
運送業で足りなくなる欄
出勤簿には拘束時間と休息期間を足す。一般的な出勤簿は「始業・終業・労働時間」で完結します。運送業はそこに改善基準告示が乗るため、始業から終業までの拘束時間(休憩・荷待ちを含む)と、前日の終業からの休息期間が要ります。詳しくは拘束時間の数え方で整理しています。
労働者名簿には免許と適性診断を足す。免許の有効期限を1か所で見られる状態にしておくと、更新漏れが防げます。
賃金台帳は手当を分ける。歩合給・無事故手当・宿泊手当をまとめて「諸手当」にすると、後から内訳が追えません。無事故手当を止めた月があれば、その理由も備考に残しておいてください。
乗務員台帳との重複
労働者名簿と乗務員台帳は、氏名も生年月日も住所も重なります。それでも片方では済みません。根拠が違うからです。
| 労働者名簿 | 乗務員台帳 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 労働基準法 | 貨物自動車運送事業輸送安全規則 |
| 対象 | すべての労働者 | 運転者 |
| 単位 | 事業場ごと | 営業所ごと |
事務職や整備士は労働者名簿だけ、運転者は両方。この整理を最初にしておくと、「二重に書いている」という不満が出ません。
つまずきやすいところ
タイムカードがあるから出勤簿は不要、ではない。タイムカードで労働時間を把握していれば記録にはなります。ただし拘束時間・休息期間は自動では出ません。集計する表は別に要ります。
歩合給の割増計算は固定給と同じではない。出来高払制の部分は、割増賃金の計算方法が固定給と異なります。当サイトのテンプレートに計算式を入れていないのは、自社の制度と合わないまま使われる方が危険だからです。判断に迷う場合は社会保険労務士または労働基準監督署にご確認ください。
保存期間は最新の取り扱いを確認する。法改正の経過措置が関わる部分があります。所管の労働基準監督署にご確認ください。
月末の手順を決めておく
- 出勤簿を締める(拘束時間の月累計を確認)
- 労働日数・労働時間数を賃金台帳へ転記
- 数字が合っているか突き合わせる
- 入退社・免許更新があれば労働者名簿を直す
4を忘れると、名簿だけが1年古いままになります。月次の手順に入れてしまうのが確実です。
よくある質問
3つを1つのファイルにまとめてもいいですか。
それぞれに求められる記載事項を満たしていれば、様式の作り方は自由です。ただし労働基準監督署の調査で個別に提示を求められることがあるため、シートを分けておくと説明しやすくなります。
役員も対象ですか。
労働者に該当しない役員は対象外です。使用人兼務役員など判断が分かれる場合は労働基準監督署にご確認ください。