運送業の法定三帳簿|出勤簿と賃金台帳の書き方
公開 2026年8月21日/更新 2026年10月3日
目次10項目
法定三帳簿は、出勤簿、労働者名簿、賃金台帳の3つをまとめた呼び方です。労働基準法は、労働者名簿(第107条)と賃金台帳(第108条)を事業場ごとに作ることを定め、第109条でこの2つと「労働関係に関する重要な書類」の保存を定めています。出勤簿という名前は条文にはありませんが、厚生労働省のガイドラインでは、出勤簿やタイムカードなど労働時間の記録も第109条の保存の対象とされています。運送業に限った話ではありません。人を雇っているすべての事業所が対象になります。
ただ、運送業には運送業なりの事情があります。乗務員台帳との重なり、拘束時間との関係、直行直帰の扱い。ここが、他の業種と違ってくる部分です。
- 出勤簿いつ働いたか
- 労働者名簿誰が働いているか
- 賃金台帳いくら払ったか
一般に、この3つは別々に作られています。ばらばらに作ると、同じ人の情報を3回書くことになります。
ポイントはここです。3つの帳簿は、労働者名簿を起点にすると重複が減ります。
法定三帳簿の3つの役割とは
法定三帳簿の3つの役割は、それぞれ答える問いが違います。
労働者名簿は、「誰が働いているか」に答えます。氏名、生年月日、住所、雇入れの日、従事する業務など。
出勤簿は、「いつ働いたか」に答えます。労働日、始業と終業の時刻、休憩時間、休日労働や深夜労働の状況。
賃金台帳は、「いくら払ったか」に答えます。賃金の計算期間、労働時間数、基本給、手当、控除の内容。
3つそろってはじめて、その人の働き方と処遇が説明できる形になります。
保存期間は、労働基準法第109条で5年と定められ、当分の間は3年とされています(同法附則第143条)。数え始める日も決まっていて、労働者名簿は退職・死亡・解雇の日、賃金台帳は最後に記入した日からです(労働基準法施行規則第56条)。運送業の輸送安全規則が求める記録とは、年数も数え始めも別の系統の話です。同じ会社の中に、2つの系統の記録があるという理解をしておくと、整理しやすくなります。
輸送安全規則の側は、日報や点呼記録です。労働基準法の側が、この3つになります。保存期間の全体像は書類の保存期間にまとめています。
運送業で出勤簿の欄が足りなくなる理由
運送業で出勤簿の欄が足りなくなる理由は、労働時間と拘束時間が別のものだからです。出勤簿は、労働時間を記録する帳簿です。一方で、改善基準告示が見ているのは拘束時間で、この2つは範囲が違います。
労働時間
- 労働基準法の概念
- 賃金の計算に使う
- 休憩は含まない
拘束時間
- 改善基準告示の概念
- 始業から終業まで
- 休憩も含む
そのため、運送業では出勤簿と拘束時間管理表の両方を持つ形が一般的です。出勤簿だけだと、拘束時間の管理ができません。拘束時間管理表だけだと、賃金計算の根拠になりません。
もうひとつ足りなくなりやすいのが、直行直帰の扱いです。営業所に立ち寄らない運行では、始業と終業の時刻を誰がどう記録するのかを決めておく必要があります。運転日報の乗務開始・終了時刻から拾う形が広く使われています。
拘束時間の数え方は拘束時間の数え方に整理しています。
直行直帰の記録では、始業と終業をどこで区切るかも決めておく必要があります。自宅を出た時点なのか、車庫に着いた時点なのか。ここが人によって違うと、同じ運行でも時間数が変わってしまいます。
一般的には、車両に乗り込んだ時点を始業とする形が多く使われています。決め方そのものより、社内でそろっていることのほうが大事な部分になります。決めた内容は、就業規則や社内の取り決めに書いておくと、後から入った人にも伝わります。
もうひとつ、運転者以外の従業員の扱いも忘れずに見ておきます。事務員、整備担当、配車担当。運転者ではない人も出勤簿の対象です。運転者の管理に手をかけていて、事務所の側が抜けている事業所があります。三帳簿は、雇っているすべての人が対象になります(労働者名簿だけは、日々雇い入れる人を除くとされています)。
労働者名簿と乗務員台帳の重複
労働者名簿と乗務員台帳は、書く内容が重なります。乗務員台帳は、輸送安全規則第9条の5では「運転者等台帳」という名前で定められています。氏名、生年月日、住所、雇入れの日。この4つは、どちらにも入ります。一方で、それぞれにしかない項目もあります。
| 項目 | 労働者名簿 | 乗務員台帳 |
|---|---|---|
| 氏名・生年月日・住所 | ○ | ○ |
| 雇入れの日 | ○ | ○ |
| 従事する業務 | ○(常時30人未満の事業は不要) | - |
| 退職の年月日と事由 | ○ | 運転者でなくなった年月日と理由 |
| 運転免許の種類・番号 | - | ○ |
| 事故の概要・特別な指導の実施 | - | ○ |
| 健康状態 | - | ○ |
| 適性診断の受診状況 | - | ○ |
労働者名簿の項目は労働基準法施行規則第53条、運転者等台帳の項目は輸送安全規則第9条の5に書かれています。根拠の法令と記載事項が違うため、それぞれの項目を満たす形で別々に持つのが一般的です。ただ、重なる部分については、入力を1回で済ませる工夫ができます。
同じ表計算のファイルに両方のシートを置き、共通項目を参照する形にしておく。これだけで、住所変更のときの二度手間がなくなります。
更新を忘れやすいのは、重複している項目のほうです。片方だけ直して、もう片方が古いまま残る。この形が、いちばん起きやすい間違いになります。
法定三帳簿でつまずきやすいところ
法定三帳簿でつまずきやすいところは、いくつかの型に分かれます。
ひとつめが、出勤簿の記録方法です。タイムカードがあれば足りると思われがちですが、始業と終業の時刻が分かる形になっている必要があります。押した時刻だけが並んでいて、どちらが始業か分からない記録は使いにくくなります。
ふたつめが、労働者名簿の更新です。住所が変わったとき、業務が変わったとき、名簿も更新します。入社時に作ったきり、という状態になっている事業所が多く見られます。
みっつめが、賃金台帳の項目です。運送業では、歩合給や各種手当を組み合わせている場合が多くなっています。それぞれの手当がどういう性質のものかを、台帳の上で区別できる形にしておきます。割増賃金の計算に含めるものと含めないものが混ざっていると、あとから確認できなくなります。
歩合給を採用している場合は、割増賃金の計算方法が固定給とは変わります。ここは間違いが起きやすい部分なので、社会保険労務士に一度見てもらうやり方が安心です。
台帳の上では、支給項目を一覧にして、それぞれが割増の基礎に入るかどうかを書いておくと分かりやすくなります。いつ決めたかも書いておくと、あとから見た人が経緯をたどれます。
よっつめが、退職者の扱いです。3つの帳簿は、退職後も保存が必要です。労働者名簿なら、退職の日から5年(当分の間は3年)になります。退職と同時に処分してしまうと、あとから照会があったときに答えられません。
有給休暇管理簿も同じ場所で持つ
年次有給休暇管理簿も、法定三帳簿とあわせて作成と保存が定められています(労働基準法施行規則第24条の7)。取得した時季、日数、基準日を、労働者ごとに記録するものです。労働者名簿や賃金台帳とあわせて1つに作ってよいとされています(同第55条の2)。年10日以上の年休がある人には年5日を取得させる義務があるため(労働基準法第39条第7項)、取得状況を見える形にしておく必要があります。
有給休暇管理簿は、出勤簿と同じ場所に置いておくと運用が楽になります。
運送業では、繁忙期と閑散期の差が大きい事業所があります。取得しやすい時期をあらかじめ決めておくやり方が、実務では使われています。年度の終わりが近づいてから慌てて取らせると、運行に穴が空きます。
基準日をそろえるやり方も、実務では使われています。入社日ごとに基準日が違うと、管理する日付が人数分に増えます。全員の基準日を同じ日にそろえると、確認するのが年に一度で済みます。
そろえる場合は、前倒しで付与する形になります。導入するときは、就業規則の変更が必要になることが多いため、事前に確認しておくのが良いです。
取得状況は、月に一度ながめておくと安心です。年度の後半になってから残日数が多い人が見つかると、調整に無理が出ます。
法定三帳簿の月末の手順を決める
法定三帳簿の月末の手順は、3つで更新する時点が違うことを前提に決めます。労働者名簿は、変更があったときだけ。出勤簿は毎日。賃金台帳は毎月。
この違いが、更新漏れの原因になります。毎日書くものは習慣になりますが、たまにしか書かないものは忘れられます。
- 1 入社時 労働者名簿を作る
- 2 毎日 出勤簿に記録
- 3 毎月 賃金台帳を作成
- 4 変更時 名簿を更新
- 5 退職時 保存期間を確認
月末の手順に、名簿の確認を1行入れておくと抜けにくくなります。「今月、住所や業務の変更があった人はいるか」と確認するだけで足ります。手順に載っていないものは、思い出したときにしか更新されません。
もうひとつ、年に一度の見直しも入れておくと安心です。在籍している人が全員名簿にあるか、退職した人の記録が保存期間の中にあるか。年度末や決算のタイミングで確認する形が扱いやすくなります。
見直しのときに、置き場所も一緒に確認しておくと安心です。三帳簿には、住所、生年月日、賃金といった個人情報が集まります。誰でも開ける場所に置いておくのは避けたい部分です。
鍵のかかる場所に保管し、開ける人を決めておく。電子で持っている場合は、閲覧できる人を限る形にしておきます。
在籍者と退職者を分けて保管しておくと、探すときにも早くなります。退職者の分は、保存期間を書いた紙を添えておくと、処分の判断ができます。紙で持っている場合は、年ごとに箱を分けておく形が扱いやすくなります。期限が来た箱から順に処分できます。
法定三帳簿の担当を決めておく
法定三帳簿は、担当が分かれやすい書類になります。出勤簿は運行管理の担当、賃金台帳は経理の担当、労働者名簿は総務の担当。こういう分かれ方をしている事業所があります。
分かれていること自体は問題ありません。困るのは、境目にある情報が誰のものでもなくなる場合です。
たとえば、住所の変更です。本人は運行管理者に伝えます。その情報が総務に届かないと、名簿は古いままになります。
決めておくと楽になるのは、情報の入口です。変更があったときに、誰に伝えるのかを1か所にしておく。そこから各帳簿に反映する形にすると、抜けにくくなります。
小さい事業所では、1人が全部を見ていることも多くなっています。この場合は担当の問題は起きませんが、その人が休んだときに止まります。どこに何があるかを1枚にまとめておくと、代わりの人でも探せる状態になります。
ファイルの置き場所と、更新する時点。この2つが書いてあれば足ります。引き継ぎのときにも、その1枚がそのまま使えます。
なお、労働基準法にもとづく記録の扱いは、改正で変わることがあります。自社の運用が現行の要件に合っているかは、所管の労働基準監督署に確認しておくのが確実です。
3つの帳簿は、監督署の調査で提出を求められることのある書類でもあります。日々の運行の記録と違って、作るのは月に一度です。手順に組み込んでしまえば、負担はそれほど大きくなりません。
三帳簿がそろっていると、助成金の申請や、金融機関とのやり取りでも材料になります。求められてから作るものではなく、あることで動きが早くなる書類だと考えておくと良いです。
日々の運行の記録に比べると地味な部類ですが、抜けたときの影響は小さくありません。まずは、いま手元にある3つを開いてみるところからで足ります。最新の状態になっているかを見るだけでも、直す場所が見つかります。
法定三帳簿にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
法定三帳簿そのものの記載事項は、ここ数年変わっていません。動いているのは、保存期間と、運送業の労働時間の規制です。帳簿に残す時間の数字が、そのまま規制の確認に使われるようになっています。
| 時期 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 2020年4月1日 | 労働者名簿・賃金台帳などの保存期間が3年から5年に延びた。ただし当分の間は3年 | 労働基準法第109条・附則第143条 |
| 2024年4月1日 | 自動車運転の業務にも時間外労働の上限(年960時間)が適用された | 労働基準法第140条 |
| 2024年4月1日 | 改正後の改善基準告示(拘束時間・休息期間など)が適用された | 改善基準告示(令和4年厚生労働省告示第367号) |
| 2025年8月8日 | 令和6年の監督指導の結果を公表。トラックの3,424事業場のうち2,786事業場(81.4%)で労働基準関係法令の違反があった | 厚生労働省 報道発表 |
同じ公表では、トラックの違反の内訳として、労働時間が1,506事業場(44.0%)、割増賃金の支払が730事業場(21.3%)、労働時間の状況の把握が228事業場(6.7%)とされています。3つとも、出勤簿と賃金台帳の数字で確かめられる項目です。法定三帳簿を正しくつけておくことが、そのまま自社の点検になります。
出典:
確認日は2026年10月3日です。自社の帳簿の作り方や保存の扱いは、所轄の労働基準監督署で確かめられます。
法定三帳簿に出てくる用語
法定三帳簿の条文には、ふだんの言い方と少し違う言葉が出てきます。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 労働者名簿 | 氏名、生年月日、履歴、性別、住所、従事する業務の種類、雇入れ・退職の年月日などを記入する名簿 | 労働基準法第107条、施行規則第53条 |
| 賃金台帳 | 賃金計算期間、労働日数、労働時間数、時間外・休日・深夜の時間数、賃金の種類ごとの額、控除額を記入する台帳 | 労働基準法第108条、施行規則第54条 |
| 出勤簿 | 法令上の定義はない。出勤簿やタイムカードなど労働時間の記録は、第109条の保存の対象とされている | 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」 |
| 調製 | 帳簿を作ること。条文ではこの言葉が使われている | 労働基準法第107条・第108条 |
| 起算日 | 保存期間を数え始める日。名簿は退職・死亡・解雇の日、賃金台帳は最後の記入の日。賃金の支払期日のほうが遅ければ支払期日 | 施行規則第56条 |
| 年次有給休暇管理簿 | 年休を与えた時季、日数、基準日を労働者ごとに明らかにした書類 | 施行規則第24条の7 |
| 運転者等台帳 | 運送事業者が運転者ごとに作る台帳。実務では乗務員台帳とも呼ばれる | 輸送安全規則第9条の5 |
用語で取り違えやすいのは、労働時間と、改善基準告示の拘束時間です。出勤簿と賃金台帳が持つのは労働時間で、拘束時間は別に管理します。
法定三帳簿と一緒に押さえておきたいこと
法定三帳簿の保存期間は、数え始めの日で変わる
法定三帳簿の保存期間は5年(当分の間は3年)ですが、数え始めの日は帳簿ごとに違います(労働基準法施行規則第56条)。労働者名簿は退職した日から、賃金台帳は最後に記入した日から数えます。在籍している人の名簿は、いつまでも捨てられない書類ということです。一方で、運転者等台帳は、運転者でなくなった日から3年間の保存とされています(輸送安全規則第9条の5第2項)。同じ人の書類でも、捨ててよい日が別々になります。退職者の箱に、帳簿ごとの期限を書いておくと迷いません。
法定三帳簿が無いときの罰則
労働者名簿・賃金台帳の作成や、第109条の保存に違反した場合は、30万円以下の罰金の対象とされています(労働基準法第120条第1号)。労働基準監督官に虚偽の記載をした帳簿書類を出すことも、同じ条の第4号で罰金の対象です。実際には、まず是正勧告で直すよう求められる流れが一般的です。帳簿が無いと分かった時点で作り始めれば、そこからの記録は残せます。
出勤簿の時刻は、業務の記録とそろえる
運送事業者は、運転者ごとに業務の開始と終了の地点・日時を記録し、1年間保存することが定められています(輸送安全規則第8条)。出勤簿の始業・終業と、業務の記録の時刻が大きく食い違っていると、どちらが正しいのかを説明する必要が出てきます。運転日報の時刻から出勤簿を起こす形にしておくと、元になる数字が1つになり、食い違いが起きにくくなります。

よくある質問
3つを1つのファイルにまとめてもいいですか。
それぞれに求められる記載事項を満たしていれば、様式の作り方は自由です。労働者名簿・賃金台帳・年次有給休暇管理簿は、あわせて作成できると定められています(労働基準法施行規則第55条の2)。ただし労働基準監督署の調査で個別に提示を求められることがあるため、シートを分けておくと説明しやすくなります。
法定三帳簿の保存期間は何年ですか。
労働基準法第109条で5年と定められ、当分の間は3年とされています(附則第143条)。労働者名簿は退職・死亡・解雇の日から、賃金台帳は最後に記入した日から数えます(労働基準法施行規則第56条)。
役員も対象ですか。
労働者に該当しない役員は対象外です。使用人兼務役員など判断が分かれる場合は労働基準監督署にご確認ください。