運送業の自動車事故報告書の書き方と対応手順
公開 2026年9月3日
目次8項目
- 1運送業の自動車事故報告書とは何を出す書類か
- 対象になる事故は規則で決まっている
- 事業用自動車が関わった事故が対象になる
- 社内の記録は別に残す
- 2運送業の自動車事故報告書の提出先と期限
- 提出先は管轄の運輸支局を経由する
- 30日を待たずに着手する
- 控えを社内に残す
- 3運送業の自動車事故報告書に書く項目
- 事実と推測を分けて書く
- 運転日報と突き合わせる
- 対策に担当と期限を付ける
- 4運送業で速報が必要になる事故
- 速報は電話などで直ちに入れる
- 判断に迷ったら連絡して確認する
- 速報の記録も残す
- 5運送業の事故発生時の対応手順に書くこと
- 1枚に収めて車内に置く
- 連絡先を具体的に書く
- 写真の撮り方まで書く
- 6運送業の自動車事故報告書と労働者死傷病報告の違い
- 運転者が負傷したら両方を確認する
- 荷役中のけがも対象になる
- 休業の日数を早く確認する
- 7運送業の自動車事故報告書を再発の防止につなげる
- 事故惹起運転者への特別な指導につなげる
- 全乗務員への教育に広げる
- 配車の組み方まで戻って見る
- 8運送業の自動車事故報告書でつまずきやすいところ
- 規則の類型を1枚にまとめておく
- 原因の欄を不注意で終わらせない
- 提出した控えを事故記録とひもづける
事故が起きたあと、社内で記録を取って対策を決めれば済むと考えていると、後になって運輸支局から提出を求められることがあります。一定の類型にあたる事故は、法令にもとづいて届け出ることになっています。
一般には、現場での対応が終わってから、対象かどうかを確認して書類に着手します。対象になる事故は規則で並べられているため、照らせば判断がつきます。
とはいえ、判断のもとになる一覧が手元に無いと、その場では分かりません。
ポイントはここです。運送業の自動車事故報告書は、社内の記録とは別に法令にもとづいて出す届出になります。
ここでは、どういう書類なのか、提出先と期限、書く項目、そして再発の防止につなげるところまでを順に整理します。
運送業の自動車事故報告書とは何を出す書類か
運送業の自動車事故報告書は、自動車事故報告規則にもとづく届出です。社内で作る事故記録とは、目的も対象も別のものになります。
社内の事故記録
- 原因の分析に使う
- 対象はすべての事故
- 様式は自社で決める
- 3年間の保存
自動車事故報告書
- 法令にもとづく届出
- 対象は規則で決まる
- 様式は定められている
- 30日以内に提出
左は自社のために作るもので、右は行政へ知らせるものです。そのため、片方があれば足りるという関係にはなりません。
対象になる事故は規則で決まっている
報告書の対象になる事故は、自動車事故報告規則に並べられています。転覆、転落、火災、踏切での事故、死者や重傷者を生じたものなどが含まれます。
物損だけの軽微な接触は、原則として対象になりません。一方で、車両が横転した場合は、けが人がいなくても対象になります。
一覧を手元に置いておくと、その場で照らせます。
事業用自動車が関わった事故が対象になる
対象になるのは、事業用自動車が関わった事故です。自社の運転者に過失が無くても、類型にあたれば報告の対象になります。
過失の有無ではなく、事故の類型で対象が決まります。
社内の記録は別に残す
報告書の対象にならない事故も、社内の記録には残します。軽微な接触が繰り返されている場所は、いずれ重い事故につながります。
そのうえで、社内の記録は自社の様式で構いません。発生の状況、原因、対策を書ける形にしておきます。
3年間は残しておくと、傾向を見る材料になります。
運送業の自動車事故報告書の提出先と期限
運送業の自動車事故報告書は、発生から30日以内に提出します。提出先は国土交通大臣で、管轄の運輸支局を経由する形になります。
30日は長く見えますが、原因の検討と対策の決定に時間がかかります。そのため、事実の部分は早い段階で書き始めておくと、期限に追われません。
提出先は管轄の運輸支局を経由する
報告書は、営業所を管轄する運輸支局へ提出します。支局によって、必要な部数や添付の書類が違うことがあります。
初めて提出する場合は、事前に確認しておくと往復が減ります。そのうえで、確認した内容を対応手順に書き足しておきます。
次に事故が起きたときに、同じことを調べ直さずに済みます。
30日を待たずに着手する
事故の直後は、事実の部分だけが分かっている状態です。日時、場所、当事者、車両。この範囲は当日に書けます。
30日を期限として動くのではなく、分かった時点で書き足す形にすると間に合います。
控えを社内に残す
提出した報告書の控えは、社内に残します。後から同じ事故について問われたときの資料になります。
そのうえで、社内の事故記録と同じ場所にまとめておきます。1つの事故に関する書類が散らばっていると、対策を考えるときに集め直すことになります。
保管の場所を対応手順に書いておくと、担当が代わっても分かります。
運送業の自動車事故報告書に書く項目
運送業の自動車事故報告書には、事実から対策までを順に書きます。事実の部分は当日に埋まりますが、原因と対策は社内で検討する時間が要ります。
- 1 事実の確認 日時・場所・当事者
- 2 状況の整理 何が起きたか
- 3 原因の検討 なぜ起きたか
- 4 対策の決定 どう防ぐか
- 5 提出 運輸支局を経由
対策まで書く欄があるため、社内で決める時間を見込んでおきます。
| 項目 | 内容 | 書くときの目安 |
|---|---|---|
| 事故の発生日時 | 分まで書く | 運転日報と突き合わせる |
| 発生の場所 | 路線名と地点 | 地図の情報を添える |
| 当事者 | 運転者と相手方 | 氏名と年齢、経験年数 |
| 車両 | 車両番号と種類 | 積載物も書く |
| 事故の状況 | 何が起きたか | 事実だけを書く |
| 原因 | なぜ起きたか | 複数挙げてよい |
| 対策 | どう防ぐか | 担当と期限を添える |
右の列は、書くときの目安です。そのうえで、社内の事故記録と同じ項目にしておくと、転記で済みます。
事実と推測を分けて書く
事故の状況の欄には、確認できた事実を書きます。「たぶん脇見をしていた」といった推測は、この欄には入れません。
推測を事実として書くと、後から食い違いが出たときに信用を失います。一方で、原因の欄には推定される要因を書いて構いません。
事実と推定を欄で分けておくと、読む側も区別できます。
運転日報と突き合わせる
発生の日時は、運転日報やデジタコの記録と突き合わせます。記憶で書くと、実際の時刻と数分ずれることがあります。
書類の間で時刻が食い違うと、後から確認を求められます。そのうえで、出発の時刻や休憩の状況も、原因を検討する材料になります。
長時間の運行が続いていたなら、その事実も記載します。
対策に担当と期限を付ける
対策の欄に「注意を徹底する」とだけ書くと、実行されたかを確認できません。何を、誰が、いつまでに行うかまで書きます。
「同じ交差点を通る運行について、経路を見直す。運行管理者が今月中に」という形であれば、後から確認できます。
そのうえで、期限が来たら実施の状況を見ます。
運送業で速報が必要になる事故
運送業では、一定の重大な事故について、報告書とは別に速報が求められます。発生を知った後、直ちに連絡する形になります。
- 死者や重傷者が多数出たか はい速報の対象 いいえ次へ
- 危険物の漏洩などが起きたか はい速報の対象 いいえ次へ
- 酒気帯び運転などが関わるか はい速報の対象 いいえ次へ
- 報告書の対象の類型にあたるか はい30日以内に報告書 いいえ社内の記録に残す
速報の対象になった事故も、報告書は別に提出する
速報を入れたうえで、報告書も提出する形になります。
速報は電話などで直ちに入れる
速報は、電話やファクシミリで運輸支局へ連絡します。書類を作ってから連絡するのではなく、分かっている範囲で先に伝えます。
日時、場所、被害の状況、車両と運転者の情報。この程度で足ります。そのうえで、詳しい内容は後から報告書で提出します。
連絡先を対応手順に書いておくと、夜間や休日でも動けます。
判断に迷ったら連絡して確認する
速報の対象かどうか、その場で判断がつかないことがあります。被害の程度が分からない、危険物の状況が確認できない、といった場面です。
迷う場合は、連絡して確認するほうが安全です。そのうえで、対象でなければその旨を記録に残しておきます。
連絡しなかったことが後から問題になるより、確認するほうが早く済みます。
速報の記録も残す
速報を入れた事実も、記録に残します。いつ、誰が、どこへ、何を伝えたかを書いておきます。
後から報告書を作るときに、伝えた内容との食い違いを防げます。そのうえで、社内でどう動いたかの記録にもなります。
対応手順に記録の欄を設けておくと、その場で書けます。
運送業の事故発生時の対応手順に書くこと
運送業の事故発生時の対応手順は、現場の運転者が読むものです。慌てている場面で読めるよう、1枚に収めておきます。
- 1 負傷者の救護 最優先で行う
- 2 危険の防止 後続車への措置
- 3 警察へ通報 道路交通法の義務
- 4 会社へ連絡 運行管理者へ
- 5 記録 写真と状況を残す
- 6 報告書の判断 速報と報告書の対象か
上から順に行う形にしておくと、迷わずに動けます。そのうえで、最初の3つは法令上の義務にあたることも書いておきます。
1枚に収めて車内に置く
対応手順が数ページあると、現場では開かれません。1枚にまとめて、車内の見える場所に置いておきます。
裏面に連絡先の一覧を入れる形にすると、両面で足ります。そのうえで、ラミネートしておくと汚れや雨に強くなります。
新しく入った運転者には、この1枚を使って説明します。
連絡先を具体的に書く
「会社へ連絡」とだけ書いてあると、どこへかけるかが分かりません。運行管理者の携帯番号、営業所の電話、夜間の連絡先を並べて書きます。
連絡先が時間帯ごとに書いてあると、深夜の事故でも手が止まりません。
写真の撮り方まで書く
事故の直後に撮った写真は、後から状況を説明する材料になります。何を撮ればよいかを書いておくと、慌てていても抜けが減ります。
車両の全体、損傷の部分、道路の状況、標識や信号、路面の跡。そのうえで、遠景と近景の両方を撮っておくと位置関係が伝わります。
相手方や第三者を撮るときは、配慮が要ります。
運送業の自動車事故報告書と労働者死傷病報告の違い
運送業では、1つの事故から複数の届出が生じることがあります。宛先も根拠も違うため、それぞれ判断する形になります。
- 国土交通省自動車事故報告書
- 労働基準監督署労働者死傷病報告
- 社内事故記録と対応手順
3つのうち、どれが必要になるかは事故の内容で変わります。そのため、判断の表を対応手順に添えておくと、その場で分かります。
| 項目 | 自動車事故報告書 | 労働者死傷病報告 |
|---|---|---|
| 根拠 | 自動車事故報告規則 | 労働安全衛生規則 |
| 提出先 | 国土交通大臣(運輸支局経由) | 労働基準監督署長 |
| 対象 | 規則に並んだ事故の類型 | 労働者の負傷・疾病 |
| 期限 | 発生から30日以内 | 休業日数で分かれる |
| 見ているもの | 輸送の安全 | 労働者の安全 |
見ているものが違うため、片方だけが対象になる場面もあります。逆に、両方が対象になる事故もあります。
運転者が負傷したら両方を確認する
運転中の事故で自社の運転者がけがをした場合、両方の対象になることがあります。事故の類型が規則にあたり、かつ休業したという状況です。
そのため、けが人が出たときは両方を確認する流れにしておきます。一方だけ出して終わらせると、後から指摘を受けます。
対応手順に2つを並べて書いておくと、判断が抜けません。
荷役中のけがも対象になる
荷役の作業中に起きたけがは、自動車事故報告書の対象になりません。一方で、労働者死傷病報告の対象にはなります。
車両が関わらない場面でも、労働災害としての届出は必要です。そのうえで、社内の記録にも残しておきます。
運送業では、荷役中のけがのほうが件数としては多くなっています。
休業の日数を早く確認する
労働者死傷病報告は、休業の日数で提出の時期が変わります。4日以上であれば遅滞なく、1日から3日であれば四半期ごとです。
そのため、診断の内容を早い段階で確認します。見込みで判断していると、期限を過ぎることがあります。
日数が確定した時点で、扱いを決め直します。
運送業の自動車事故報告書を再発の防止につなげる
運送業の自動車事故報告書に書いた対策は、書いただけでは動きません。教育、点呼、配車の3か所に落として、はじめて現場が変わります。
- 1 報告書の対策 書いた内容を取り出す
- 2 指導監督 教育の題材にする
- 3 点呼 確認する項目を足す
- 4 配車 運行の組み方を見直す
- 5 実施の確認 期限が来たら見る
3か所のうち、いちばん効くのは配車です。運行の組み方そのものに無理があるなら、注意では変わりません。
事故惹起運転者への特別な指導につなげる
死傷者を生じた事故を起こした運転者には、特別な指導と適性診断を行います。再び乗務する前に行うことが基本です。
報告書に書いた原因を、この指導の材料として使います。そのうえで、適性診断の結果と合わせて本人の傾向を伝えます。
責めるためではなく、次を防ぐために行う場として扱います。
全乗務員への教育に広げる
同じ場面は、他の運転者にも起こり得ます。本人への指導だけで終わらせず、全員への教育にも広げます。
個人が特定されない形にして、状況と原因を共有します。そのうえで、どうすれば防げたかを一緒に考える形にすると、受け止め方が変わります。
自社で起きた事故は、他社の事例より伝わる題材になります。
配車の組み方まで戻って見る
事故の背景に、運行の無理があることがあります。到着の時刻が厳しい、休憩を取る場所がない、連続で長距離が続いている。
そのため、原因を検討するときは配車の記録まで遡って見ます。そのうえで、荷主との条件そのものに無理があるなら、そこを話す材料になります。
運転者の注意だけに帰すと、同じことが繰り返されます。
運送業の自動車事故報告書でつまずきやすいところ
運送業の自動車事故報告書で時間を取られるのは、書く作業そのものではありません。対象かどうかの判断と、原因の材料を集める部分に時間がかかります。
規則の類型を1枚にまとめて手元に置いておくと、その場で判断できます。
規則の類型を1枚にまとめておく
自動車事故報告規則に並んだ類型を、自社の言葉で1枚にまとめます。転覆、転落、火災、踏切、死者や重傷者、といった形で並べます。
対応手順の裏面に入れておくと、事故の直後に照らせます。そのうえで、迷ったときの相談先も書いておきます。
規則が改正されたときは、この1枚も更新します。
原因の欄を不注意で終わらせない
原因の欄に「運転者の不注意」とだけ書くと、対策につながりません。なぜ不注意になったのかまで遡ると、変えられる要素が見えてきます。
前日の睡眠が短かった、荷待ちで休憩が取れなかった、経路が初めてだった。そのうえで、会社として変えられる部分を対策に書きます。
原因を1つに絞らず、複数挙げても構いません。
提出した控えを事故記録とひもづける
提出した報告書と、社内の事故記録は別の書類です。別々に保管すると、後から同じ事故の資料を集め直すことになります。
事故ごとにフォルダを作り、そこへまとめる形が扱いやすくなります。そのうえで、対策の実施状況も同じ場所に残しておきます。
期限が来たときに、実施したかを確認できます。
様式は自動車事故報告書テンプレート、現場で使う事故発生時の対応手順からダウンロードできます。社内の記録は事故記録簿にまとめています。
よくある質問
自動車事故報告書はどこへ出しますか。
国土交通大臣へ提出する形で、実際には営業所の所在地を管轄する運輸支局などを経由します。提出の部数や経由先は地域によって案内が違うため、管轄の運輸支局で確認しておくと差し戻されません。
速報と報告書は両方必要ですか。
速報の対象になる事故では、速報を入れたうえで報告書も提出する形になります。速報は電話などで直ちに、報告書は30日以内という関係です。速報だけで終わりにすると報告書が未提出になります。
社内の事故記録とは別に作るのですか。
別のものとして扱う形が一般的です。社内の事故記録は原因の分析と再発の防止に使い、自動車事故報告書は法令にもとづく届出になります。同じ事故について両方を作る場面が多くあります。