運送業の安全管理規程|届出が必要になる事業者

公開 2026年9月3日

目次8項目

車両が増えてくると、安全の管理を社長ひとりの目で回すのが難しくなります。誰が何を見て、どこへ報告するのかが決まっていないと、気づいた人が黙っているうちに同じ事故が繰り返されます。

一般には、方針と体制を文書にして、年に1回見直す形をとります。一定の規模を超えると、この文書を作って届け出ることが求められます

とはいえ、届出が要らない規模でも、作っておくと巡回指導で示せる資料になります。

ポイントはここです。運送業の安全管理規程は、安全を個人の心がけから組織の仕組みへ移すための文書になります

ここでは、何を定めるのか、届出が必要になる事業者、項目ごとの書き方、そして運用に落とすところまでを順に整理します。

運送業の安全管理規程とは何を定めるものか

運送業の安全管理規程は、輸送の安全を確保するために事業者が定める文書です。日々の運行のやり方ではなく、会社としてどう安全を守るかという枠組みを書きます。

  • 方針安全に対する考え方
  • 体制誰が何を担うか
  • 方法どう回すか
安全管理規程は、方針・体制・方法の3つで組む

この3つのうち、抜けやすいのは3つ目の「方法」です。方針と体制図まで作って安心してしまい、どう回すかが書かれていないと、1年後に何もしていない状態になります。

そのため、見直しの頻度と担当まで書いておくと、文書が動き始めます。

経営の側が関わる文書になる

安全管理規程は、現場の担当が1人で作る文書ではありません。安全に費用と人を割く判断が入るため、経営の側が関わることになります。

事故を減らすには、車両の更新や休息の確保といった、費用のかかる判断が必要になる場面があります。現場の判断だけでは決められない部分です。

そのうえで、経営が決めたことを文書にしておくと、担当が代わっても方針が続きます。

運行管理の規程とは別のもの

社内には、運行管理規程という別の文書があります。点呼の方法、乗務時間の管理、日常点検の手順といった、日々の運行のやり方を定めたものです。

2つを1つの文書にまとめると、改正のたびに全体を直すことになります

変更したときも届出が要る

届出をした後で内容を変えたときは、変更の届出が必要になります。体制図の名前が変わった、目標の数値を見直した、といった場面が該当します。

改訂したまま届出を忘れていると、届け出た内容と実際の運用がずれます。この場合、巡回指導や監査で指摘の対象になります。

改訂と届出を1セットにして扱うと、抜けが起きにくくなります。

運送業の安全管理規程の届出が必要になる事業者

運送業の安全管理規程の届出は、すべての事業者に求められているわけではありません。事業の種類と、保有する事業用自動車の数によって決まります。

台数の基準は改正されることがあるため、判断の前に国の案内を見ます。

  1. 一般貨物自動車運送事業者か はい次へ いいえ対象の事業に該当するか確認
  2. 事業用自動車の数が基準以上か はい安全管理規程の届出が必要 いいえ届出の義務はない
  3. 安全統括管理者を選任したか はい次へ いいえ選任して届出する
  4. 変更があったか はい変更の届出をする いいえ現状のまま運用

台数の基準は改正されることがあるため、国の案内で確認する

安全管理規程の届出が必要かの見分け方

安全管理規程と安全統括管理者は、対になっています。片方だけを整えても、届出としては完結しません。

基準の台数は改正されることがあるため、最新の案内で確認します

台数はグループ全体で数えるかを確認する

台数を数えるとき、迷いやすいのが関連する会社を含めるかどうかです。別法人であれば、それぞれの事業者ごとに数えるのが原則になります。

一方で、実態として一体で運営している場合の扱いは、個別の判断になることがあります。判断に迷う規模であれば、運輸支局に確認しておくと確実です。

数え方を誤ると、届出が必要な事業者が届け出ていない状態になります。

基準に近づいたら早めに準備する

増車の計画があるときは、基準に届く前から準備を始めると余裕ができます。文書を作る作業そのものより、社内で方針と体制を決める話し合いに時間がかかるためです。

方針の文言、責任の分担、目標の水準。この3つは、経営の側で決める事項になります。そのうえで、決めたことを文書に落とす作業は、それほど時間を取りません。

基準に届いてから慌てて作ると、実態と合わない文書になりがちです。

届出の窓口は運輸支局になる

届出は、営業所を管轄する運輸支局へ提出します。様式や添付書類は、支局によって案内の形が違うことがあります。

提出の前に、必要な部数と添付書類を確認しておくと、往復が減ります。体制図や安全統括管理者の選任に関する書類が求められることが一般的です。

届出をした控えは、規程の原本と一緒に保管しておきます。

運送業の安全管理規程に定める項目

運送業の安全管理規程に定める項目は、法令で大枠が示されています。どこまで細かく書くかは事業者ごとに違いますが、抜かせない柱は共通しています。

  1. 1 方針 安全に対する考え方
  2. 2 目標 達成する水準
  3. 3 体制 責任と権限
  4. 4 情報の伝達 報告と共有
  5. 5 見直し 内部監査と改善
方針から見直しまでが1周する形で定める

この流れが1周するように書けていると、規程が動く文書になります。逆に、方針と体制だけを書いて見直しの項目が無いと、作った時点で止まります。

項目内容書くときの目安
輸送の安全の方針経営の姿勢短く、社内に掲示できる形で
安全の目標達成する水準事故件数など数えられる形で
事業の管理の体制責任と権限体制図を添える
情報の伝達報告の経路現場から経営へ届く形
事故への対応発生時の措置対応手順とつなげる
教育と訓練指導監督の計画年間計画とつなげる
記録の管理保存の方法年数と保管場所
見直し内部監査と改善年に1回の頻度

表の右の列は、書くときの分量の目安です。どの項目も、社内で実際に回せる範囲にとどめておくと、運用が続きます。

方針は掲示できる長さにする

輸送の安全の方針は、長く書くほど読まれなくなります。点呼の場所に貼って、毎日目に入る長さにしておくのが実務的です。

3行から5行程度で、何を大事にするのかが伝わる形にします。そのうえで、経営者の名前を入れておくと、会社としての姿勢が伝わります。

抽象的な言葉だけを並べると、現場では判断の材料になりません。

目標は数えられる形にする

安全の目標は、達成できたかどうかが判断できる形にします。「事故ゼロを目指す」だけだと、達成していない年に何を見直すのかが決まりません。

人身事故の件数、車両事故の件数、点呼の実施率、教育の受講率。このあたりを数字で置くと、年に1回の見直しで比べられます。

目標を数えられる形にしておくと、見直しの材料になります

体制図に名前を入れる

事業の管理の体制は、図にすると分かりやすくなります。経営者、安全統括管理者、運行管理者、整備管理者。それぞれの位置と、報告の経路を線で示します。

役職名だけでなく、名前まで入れておくと誰に言えばよいかが伝わります。ただし、人が代わったときに更新する手間が生じます。

更新のタイミングを決めておくと、古い名前が残り続ける状態を避けられます。

運送業の安全統括管理者の選任

安全管理規程の届出が必要な事業者は、安全統括管理者も選任します。輸送の安全に関する業務を統括する立場で、事業者ごとに1人を置きます。

安全統括管理者

  • 事業の運営を統括する
  • 経営の側に近い
  • 事業者ごとに選任
  • 選任と解任を届出

運行管理者

  • 日々の運行を管理する
  • 現場の側
  • 営業所ごとに選任
  • 資格が必要
見ている層が違うため、役割も選任の単位も別になる

安全統括管理者は事業者ごとに、運行管理者は営業所ごとに置きます

小規模な事業者では、社長や役員が安全統括管理者を兼ねている例が多くあります。

選任と解任は届出の対象になる

安全統括管理者を選任したときと、解任したときは届出が必要です。人が代わったのに届け出ていないと、届出の内容と実態が食い違います。

役員の交代や組織の変更に合わせて、届出が要るかを確認する流れにしておくと抜けません。そのため、人事の手続きと一緒に扱う形にしている事業者もあります。

届出の控えは、規程と同じ場所に保管しておきます。

権限を規程に書いておく

安全統括管理者には、輸送の安全に関する事項について意見を述べる立場があります。その権限を規程に書いておかないと、名前だけの役職になりがちです。

安全のために運行を止める判断ができるか、費用の支出を求められるか。このあたりを具体的に書いておくと、実際に動ける役職になります。

逆に、権限のない立場に責任だけを置くと、何も変わりません。

経営会議とつなげる

安全統括管理者が経営の会議に出る形にしておくと、現場の状況が経営へ届きます。事故の発生状況、教育の実施状況、目標に対する実績。この3つを定期的に報告する場を作ると、規程が動きます。

会議の記録を残しておくと、見直しを行った証跡にもなります。そのうえで、決めたことを現場へ戻す経路も作っておきます。

上がるだけで戻らないと、報告する意味が薄れます。

運送業の安全管理規程と運輸安全マネジメント

運送業の安全管理規程は、運輸安全マネジメントという枠組みの一部です。経営の側が安全に関与し、計画から見直しまでを回す仕組みを指します。

  1. 1 方針と目標 経営が決める
  2. 2 計画 教育と点検の予定
  3. 3 実施 現場で回す
  4. 4 内部監査 実施の状況を見る
  5. 5 見直し 経営が次を決める
計画から見直しまでを、年単位で1周させる

この1周が回っているかどうかが、評価の対象になります。文書があるかどうかより、動いているかどうかが見られる点が特徴です。

内部監査の担当を決める

内部監査は、決めたとおりに実施されているかを社内で確かめる作業です。実施した本人が監査すると、確認になりません。

小規模な事業者では、別の営業所の管理者が見る、役員が見るといった形をとります。そのうえで、確認した内容と日付を記録に残します。

指摘した事項について、いつまでに直すのかを決めるところまでが監査になります。

年に1回の見直しを予定に入れる

見直しは、日を決めておかないと流れます。年度の初めや決算の時期に合わせて、予定表に入れておく形が実務的です。

見直しで扱うのは、目標に対する実績、事故の発生状況、教育の実施状況の3つです。この3つを並べると、次の年の目標が決まります。

見直した結果を規程に反映したときは、変更の届出も忘れずに行います。

国のガイドラインを見る

国土交通省は、運輸安全マネジメントの取組みについてガイドラインを示しています。何をどこまで行えばよいかの目安が書かれており、自社の文書と突き合わせる材料になります。

ガイドラインは規模別に書かれているので、自社の段に合わせて読みます

運送業で台数が基準に届かない事業者はどうするか

台数が基準に届かない事業者には、安全管理規程の届出義務がありません。とはいえ、安全を仕組みで守る必要が無くなるわけではありません。

規模が小さいほど、社長ひとりに判断が集中しやすくなります。

  • 安全の方針 5掲示するだけで効く
  • 体制図 4誰が何を担うか
  • 目標と実績 4数えられる形で
  • 年1回の見直し 3会議の場で足りる
  • 内部監査 2規模によっては重い
規模が届かない事業者が取り入れる優先度の目安

上の3つは、紙1枚から始められます

内部監査まで含めた形は、人手のある規模から取り入れると無理がありません。

方針と体制図だけでも作っておく

安全の方針を1枚にして点呼の場所に貼り、体制図で誰が何を担うかを示す。この2つだけでも、社内の共通の理解ができます。

新しく入った運転者に説明するときにも、この2枚があると早く伝わります。そのうえで、目標を書き足していくと、規程の形に近づきます。

最初から完成品を目指すより、増やしていく形のほうが続きます。

巡回指導で示せる資料になる

適正化事業実施機関の巡回指導では、安全に対する取組みが確認されます。届出義務が無い事業者でも、方針や体制の資料があると説明しやすくなります。

口頭で「安全は大事にしています」と伝えるのと、文書を示すのとでは伝わり方が違います。そのため、準備の手間に対して得られるものは小さくありません。

指導の記録は、次の受注の場面で示せることもあります。

増車の計画と合わせて考える

車両を増やす計画があるなら、その時点で規程の準備を始めておくと余裕ができます。基準に届いてから作ると、届出までの期間が短くなります。

増車の申請と規程の届出を同じ時期に進める形にすると、手続きがまとまります。一方で、社内の話し合いには時間がかかるため、早めに始めておきます。

運送業の安全管理規程でつまずきやすいところ

運送業の安全管理規程は、作った後に止まりやすい文書です。ひな形をそのまま使って届け出ると、社内の実態と合わないまま棚に入ります。

止まっていないかどうかは、4つの点で確かめられます。

  1. 方針を社内に掲示しているか はい次へ いいえ点呼の場所に貼る
  2. 目標が数えられる形か はい次へ いいえ件数や実施率に直す
  3. 体制図の名前が最新か はい次へ いいえ人の交代を反映する
  4. 年に1回の見直しをしたか はい運用できている状態 いいえ予定表に日を入れる

4つが動いていれば、規程が文書のまま止まらない

安全管理規程が運用されているかの確認

4つのうち、いちばん抜けやすいのは3つ目の体制図です。人の交代は毎年のように起きるのに、文書を開く機会がないためです。

体制図の名前を更新する

体制図に書いた名前は、人事の異動があるたびに古くなります。年に1回の見直しのときに、あわせて確認する流れにしておくと保てます。

役職名だけにして名前を別紙に分ける方法もあります。この場合、本体の改訂は減りますが、別紙の更新は必要になります。

どちらの形でも、更新する担当を決めておくことが前提になります。

変更の届出を忘れない

規程の内容を変えたときは、変更の届出が必要です。社内で改訂して満足してしまい、届出が抜けることがあります。

改訂したら届出まで1セットとして扱うと、抜けません

現場の声が上がる経路を作る

規程には情報の伝達を定めますが、書いただけでは経路になりません。運転者が気づいたことを、どこへ言えばよいかが分かる状態にしておきます。

点呼のときに一言添えられる、記入用紙が置いてある、といった形で十分です。そのうえで、上がった内容にどう対応したかを返すと、次も上がるようになります。

返らないと分かると、報告そのものが止まります。

運送業の安全管理規程を運用に落とす

運送業の安全管理規程は、文書のままでは動きません。予定表と記録と会議の3つに落として、はじめて回る形になります。

  • 年間の予定教育と点検の日
  • 記録実施したことの証跡
  • 会議見直しの場
規程は、予定・記録・会議の3つに落として回る

このうち、いちばん先に作るとよいのが年間の予定です。日が決まっていないものは、忙しい時期に流れます。

指導監督の年間計画とつなげる

規程に書いた教育と訓練は、指導監督の年間計画と同じものを指します。2つを別々に持つと、片方だけが更新される状態になります。

年間計画を規程の別紙として扱う形にすると、両方が一度に更新できます。そのうえで、実施した記録も同じ場所にまとめておきます。

計画と記録が並んでいると、実施率がその場で分かります。

記録の年数を規程に書く

記録の管理では、何を何年残すかを書いておきます。点呼の記録、運転日報、教育の記録、事故の記録。それぞれ保存の年数が決まっています。

規程に年数と保管場所を書いておくと、担当が代わっても運用が続きます。逆に、書いていないと、判断する人によって扱いが変わります。

処分する日を年に1回決めておくと、溜まり続ける状態も避けられます。

見直しの結果を残す

年に1回の見直しでは、何を見て何を決めたかを記録に残します。議事録の形でも、1枚の報告書でも構いません。

残しておくと、次の年に前回からの変化が追えます。そのうえで、監査や巡回指導の場面で、取組みを示す資料にもなります。

見直しをしたのに記録が無いと、していないのと同じ扱いになります。

様式は安全管理規程テンプレートからダウンロードできます。教育の予定は指導監督の年間計画にまとめています。

よくある質問

安全管理規程はどの事業者に必要ですか。

事業用自動車の数が国土交通省令で定める数以上の一般貨物自動車運送事業者が対象になります。台数の基準は改正されることがあるため、手元の資料ではなく国土交通省の案内で確認しておくと安心です。基準に届かない事業者には届出の義務がありません。

運行管理者と安全統括管理者は兼任できますか。

役割が違うため、兼任の可否は体制の実態で判断されます。安全統括管理者は事業の運営を統括する立場が想定されており、現場の運行管理とは層が違います。届出の前に管轄の運輸支局へ相談しておくと確実です。

台数が基準に届かない事業者は何もしなくてよいのですか。

届出の義務はありませんが、輸送の安全を確保する義務そのものは規模を問いません。安全管理規程の項目を社内の方針や体制図として整えておくと、巡回指導や監査で示せる資料になります。

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