運送業の車両管理|台帳と日常点検表の回し方

公開 2026年8月21日/更新 2026年10月3日

商い屋 運送 編集部法令の原文と省庁の資料で確認:2026年10月3日
目次13項目

車両管理台帳、日常点検表、点検整備記録簿。名前が似ているので、同じようなものに見えます。実際には、3つとも役割が違います。

一般に、この違いは「今の状態を書くもの」と「やったことを書くもの」で分けると整理しやすくなります。

今の状態を書くもの

  • 車両管理台帳
  • 車検満了日・保険の満期
  • 誰が乗っているか

やったことを書くもの

  • 日常点検表
  • 点検整備記録簿
  • 実施日と内容
状態を持つ紙と、履歴を積む紙

ポイントはここです。台帳が無いまま点検の記録だけを取ると、期限の管理ができません。点検の記録は、やったことが積み上がっていく形です。次にいつ何をするかは、そこからは読み取れません。

台帳・日常点検表・整備記録簿の3つの役割

車両管理台帳・日常点検表・点検整備記録簿は、答える問いがそれぞれ違います。

車両管理台帳は、「いま何台あって、それぞれどういう状態か」に答えます。車両番号、車種、初度登録、車検満了日、保険の満期、担当する運転者。

ただし、日常点検表が答えるのは「今日、点検したか」だけです。運行の前に確認する項目と、その結果。

一方、点検整備記録簿は「いつ、何を点検・整備したか」に答えます。定期点検の実施日、内容、次回の予定。

つまり、台帳が起点で、他の2つがそこにぶら下がるという形になります。台帳に車両が載っていないと、その車の点検が漏れても気づけません。

車両管理台帳が先に要る理由

車両管理台帳が先に要る理由は、期限が車両ごとに違うためです。車検の満了日は、車両ごとにばらばらです。定期点検の時期も、車検や前回の点検をいつ受けたかで車両ごとにずれていきます。保険の満期も、契約ごとに違います。

3台までなら、覚えていられます。10台を超えると、記憶では追えません。

  • 3台 20記憶で回る
  • 5台 45カレンダーで足りる
  • 10台 100台帳が要る
台数が増えると、必要な仕組みが変わる

台数が増えたときに困るのは、期限そのものではありません。どの車がいつなのかを調べる手間が増えることです。車検証を1枚ずつ確認していくと、それだけで半日かかります。

車両管理台帳に日付を並べておくと、その作業が数分で終わります。

車検・点検の期限は月ではなく日で持つ

車検・点検の期限の管理でつまずきやすいのは、月単位で持ってしまう形です。「11月に車検」という持ち方だと、月末が満了日だった場合に間に合いません。整備工場の予約は、直前だと取れないことがあります。

そのため、期限は日付で持っておくのが安全です。そのうえで、何日前に動き出すかを決めておきます。車検なら1か月前、定期点検なら2週間前、という形です。

台帳に「満了日」と「着手日」の2つの列を作っておくと、見るべき日付がはっきりします。着手日で並べ替えれば、来月やることがそのまま一覧になります。

見る間隔も決めておくと安心です。月に一度、台帳を開いて翌月と翌々月の期限を確認する。この習慣があると、直前になって慌てることがなくなります。

給与計算や請求の締めと同じ日にしておくと、忘れにくくなります。すでにある作業に乗せる形です。

期限が近い車両が複数ある月は、整備工場の予約を早めに押さえておきます。年度末や連休前は、どこも混みます。

車検の時期は、車両を入れたときの登録月に引きずられます。同じ時期にまとめて買うと、期限も同じ時期に固まります。入れ替えのときに、あえて時期をずらすという考え方もあります。毎月1台ずつのほうが、運行への影響は小さくなります。

定期点検は「やった日」と「次回」を対で持つ

定期点検は、実施する周期が決まっています。事業用のトラックの場合、道路運送車両法第48条と自動車点検基準の別表第3で、3か月ごとの点検と12か月ごとの点検が定められています。3か月と12か月で、対象になる項目が変わります。

記録の面では、実施した日と次回の予定日を対で持っておくと管理しやすくなります。

持ち方分かること
実施日だけ過去にやったことは分かる
実施日+次回予定日次にいつやるかが分かる

点検整備記録簿は、法令上の保存が必要な記録です。事業用自動車の場合、記載の日から1年の保存が求められます(自動車点検基準第4条第2項)。記録簿には、点検の時の総走行距離と、点検・整備をした人の氏名も書く欄があります。保存期間の全体像は書類の保存期間にまとめています。

次回予定日は、台帳の側にも書いておくと見落としが減ります。記録簿は車両ごとのファイルに綴じられるため、一覧では見えないためです。

日常点検表を記録に残す理由

日常点検は、事業用自動車では1日1回、運行の前に行うと定められた点検です(道路運送車両法第47条の2第2項)。日常点検の結果そのものを点検表で保存する決まりはありませんが、点呼の記録には「日常点検の状況」を書くこととされ、点呼の記録は1年保存です(貨物自動車運送事業輸送安全規則第7条、同規則の解釈及び運用について)。そのうえで、点検表にも記録を残しておくと、いくつかの場面で役に立ちます。

ひとつめが、異常を早く拾えることです。「ブレーキの効きが少し甘い気がする」という感覚は、その場では見過ごされます。記録に残っていると、翌週に同じことが書かれたときに気づけます。

ふたつめが、事故や故障が起きたときの説明です。点検していたことを示す材料になります。記録が無いと、点検していたかどうかを確かめる手立てがありません。

みっつめが、点検そのものの質です。紙に書く形にすると、項目を順に見ることになります。目視だけの確認より、抜けが減ります。

日常点検表は、項目を絞っておくと続きます。細かすぎる様式は、形だけの記入になりやすい部分があります。

書き方も、そろえておくと読めるようになります。チェック欄に丸だけを付ける形だと、異常があったときに書く場所がありません。異常があったときだけ内容を書く欄を1つ設けておくと足ります。

「異常なし」を書く欄と、「気になること」を書く欄を分けておくやり方もあります。断定しにくい感覚を拾えるようになります。

運転者にとっては、毎日書くものです。1分で終わる形になっているかどうかが、続くかどうかを分けます。紙で運用する場合は、1か月分を1枚にまとめておくと、束ねる手間が減ります。1日1枚だと、月末に30枚を数えることになります。

日常点検で異常が出たときの流れ

日常点検で異常が出たときの流れは、あらかじめ決めておくと動きが早くなります。

  1. 1 発見 日常点検表に記入
  2. 2 報告 運行管理者へ
  3. 3 判断 運行するかどうか
  4. 4 整備 記録簿に残す
  5. 5 確認 直ったことを台帳に反映
異常は、見つけたあとの経路が要る

決めておかないと、見つけた人の判断で終わります。「たぶん大丈夫だろう」と出庫して、その日のうちに止まる。この形は避けたい部分です。

日常点検の結果をもとに運行してよいかを決めるのは、整備管理者の権限とされています(道路運送車両法施行規則第32条第1項第2号)。点呼で報告を受けた運行管理者が、整備管理者の判断につなぐという順番を決めておくと迷いません。

整備に出した場合は、点検整備記録簿に残します。修理の内容と日付が入っていると、あとから同じ箇所の再発が見えます。同じ箇所の整備が続いている車両は、入れ替えを考える材料にもなります。

点検整備記録簿に走行距離を添える

走行距離は、点検整備記録簿に添えておくと、あとから使える情報になります。日付だけだと、その車がどれだけ走った時点での整備なのかが分かりません。

距離が入っていると、次のようなことが見えてきます。

  • 部品の交換周期が、車両ごとにどれくらいか
  • 同じ距離帯で同じ故障が起きていないか
  • 走行距離あたりの整備費用がどれくらいか

燃費管理表やタイヤ管理台帳と合わせて見ると、車両1台あたりのコストが出てきます。

この数字は、運送原価の材料にもなります。原価の出し方は標準的な運賃の使い方に整理しています。

車両管理は何台から仕組みが要るか

車両管理の仕組みを整える時期は、台数で決めると分かりやすくなります。1台から3台のうちは、車検証と手帳で足ります。無理に台帳を作る必要はありません。ただし、2023年1月からの電子車検証は、券面に有効期間が載っていません。有効期間は、一緒に交付される「自動車検査証記録事項」か、車検証閲覧アプリで確かめる形です。

5台を超えたあたりから、期限の一覧があると楽になります。事業用のトラックが5両以上ある営業所では、整備管理者の選任も求められています(道路運送車両法第50条、同法施行規則第31条の3)。表計算で1シート作り、車検満了日を日付で並べる。それだけで見落としが減ります。

10台を超えると、日常点検と整備の記録も一覧で持ちたくなります。車両ごとのファイルだけだと、全体の状況が見えないためです。

台数が増えるタイミングは、管理の形を見直すタイミングでもあります。車両の増減で動く手続きは車を1台入れ替えるとき何が動くかにまとめています。

最初から完成形を目指す必要はありません。いま困っている部分から順に足していくやり方のほうが、続きます。

車両管理の担当を決めておく

車両管理は、担当が曖昧になりやすい領域になります。日常点検は運転者、整備の手配は事務所、車検の予約は経営者。こういう分かれ方をしている事業所があります。

分かれていること自体は問題ありません。困るのは、境目にあるものが誰のものでもなくなる場合です。

たとえば、日常点検表に書かれた「異音がする」というメモです。運転者は書いて出しました。事務所は見ていません。このとき、書いたものがどこに行くのかが決まっていないと、情報は止まります。

決めておくと楽になるのは、次の3つです。

ひとつめが、日常点検表を提出する先です。点呼のときに一緒に出す形にすると、動線が1つで済みます。

ふたつめが、異常が書かれていたときに見る人です。点呼を行う人がその場で見る形にしておくと、出庫前に止められます。

みっつめが、整備に出したあとに台帳を直す人です。ここが決まっていないと、台帳の情報が古いまま残ります。

3つとも、決めるだけで費用はかかりません。決まっていないことが原因で起きる止まりは、意外と多くなっています。

車両管理の記録が経営判断に効いてくる

車両管理の記録が回り始めると、車両にかかっている費用が見えてきます。1台あたりの年間の整備費、タイヤの交換頻度、燃費の推移。数字が並ぶと、車両ごとの差が分かります。

同じ車種でも、乗る人によって燃費が変わることがあります。同じ年式でも、整備費が倍近く違うことがあります。

こうした差が見えると、入れ替えの判断がしやすくなります。「そろそろ古いから」ではなく、「この車は年間の整備費が他の2倍になっている」という形で決められます。そのうえで、金融機関に設備投資の相談をするときにも、この数字が材料になります。

記録は、期限を守るためだけのものではありません。数年分たまると、経営の判断に使えるようになります。そこまで見えてくると、日々の記入にも意味が戻ってきます。

車両は、運送業でいちばん大きな資産です。管理の形が整っていると、故障で止まる回数が減り、入れ替えの判断も早くなります。台帳を1枚作るところから始めても、半年で違いが出てきます。

いま何台あって、それぞれの期限がいつなのか。この2つが即答できる状態になっていれば、あとから足していけます。即答できない項目が見つかったら、そこが最初に手を入れる部分になります。一度に全部を整えなくても、順番に埋めていけば形になります。

車両管理にかかわる最近の動き(2026年10月時点)

車両管理は、車検証と車検の中身が変わったことで、台帳に持っておきたい項目が増えています。

時期内容根拠
2023年1月車検証が電子化され、有効期間・使用者の住所・所有者の情報は券面ではなくICタグに記録される形になった国土交通省 報道発表資料
2024年10月1日車検に電子装置の検査(OBD検査)が加わった。2021年10月以降のフルモデルチェンジ車(輸入車は2022年10月以降)が対象で、自動ブレーキなどの故障が見つかると修理するまで合格しない国土交通省 報道発表(2024年9月4日)
2025年10月1日輸入車のOBD検査が始まった国土交通省「OBD検査とは?」

台帳の側で効いてくるのは、車検証を見ても満了日が分からなくなったことです。車検を受けたら、記録事項の満了日を台帳に書き写すところまでを、車検の手続きの一部にしておくと安心です。

出典:

確認日は2026年10月3日です。点検や整備管理者の扱いは、所管の運輸支局(整備部門)で確かめられます。

車両管理に出てくる用語

車両管理の書類には、道路運送車両法の言葉がそのまま出てきます。

用語意味出典
日常点検運行の前に、灯火やタイヤ、ブレーキなどを目で見たり操作したりして確かめる点検道路運送車両法第47条の2、自動車点検基準第1条
定期点検決められた期間ごとに行う点検。事業用トラックは3か月ごとと12か月ごと同法第48条、自動車点検基準 別表第3
点検整備記録簿点検・整備の結果、総走行距離、実施者などを書く記録簿同法第49条、自動車点検基準第4条
整備管理者日常点検の方法を決め、運行の可否を決定し、点検整備記録簿を管理する人同法第50条、同法施行規則第32条
自動車検査証記録事項電子車検証のICタグに記録された有効期間などを紙に出したもの国土交通省 報道発表資料
車両管理台帳車両ごとの車検満了日・点検予定・保険などをまとめた一覧法令上の定義はない

車両管理の用語で混ざりやすいのは運行管理者と整備管理者です。運行管理者は人と運行を、整備管理者は車両の点検と整備を受け持つ、と分けて覚えておくと、日常点検で異常が出たときの経路がはっきりします。

車両管理と一緒に押さえておきたいこと

車両管理の台帳に整備管理者の権限を書いておく

車両管理では、整備管理者に与える権限が道路運送車両法施行規則第32条に列挙されています。日常点検の実施方法を決めること、運行の可否を決めること、定期点検と整備の計画を立てること、点検整備記録簿を管理することなどです。さらに、整備管理者はこれらを行う基準を規程として定め、それに沿って業務を行うとされています(同条第2項)。台帳の冒頭に、整備管理者の氏名と規程の保管場所を書いておくと、担当が替わったときの引き継ぎが早くなります。

車両管理の記録は、故障による事故報告の材料になる

車両管理の記録は、事故のときにも使われます。装置の故障で運行できなくなった事故や、故障による車輪の脱落は、自動車事故報告規則で報告対象になり、報告書には車検の有効期間、総走行距離、故障した部品を付けてからの走行距離、整備の状況などを書いた書面を添えます(同規則第3条第2項)。点検整備記録簿に走行距離まで残っていると、この書面をそのまま作れます。事故報告の流れは事故報告が必要な事故とはにまとめています。

車両管理の台帳には、OBD検査の対象かどうかも入れる

車両管理の台帳に、OBD検査の対象車かどうかの列を1つ足しておくと、車検の準備が読みやすくなります。対象車は、車検証に「OBD検査対象」と記載されています(国土交通省「OBD検査とは?」)。対象車は、自動ブレーキなどの警告が出たまま車検に持ち込むと、修理するまで合格しません。日常点検で警告灯が点いていた日を点検表に書いておくと、車検の前に整備へ回す判断がしやすくなります。

商い屋 運送 編集部がまとめました運送業の様式を無料で配り、使い方と法令の決まりを記事にまとめています。法令の数字は e-Gov の原文で確かめてから載せています。

よくある質問

車両管理台帳は法令で作成が義務づけられていますか。

台帳そのものを求める規定はありません。ただし記載する車検満了日や定期点検の実施状況は、道路運送車両法に基づく検査・点検の管理に直結します。

リース車両も同じ台帳に入れますか。

入れておくと管理がそろいます。リース車両も点検と車検の義務は使用者側にかかるため、期限の一覧に並べておくと抜けません。備考にリース会社名と契約満了日を書いておくと、返却時期の管理にも使えます。

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