運送業の指導監督の年間計画|12項目の組み方
公開 2026年9月3日
目次8項目
- 1運送業の指導監督の年間計画とは何を組む計画か
- 全員向けと個別を分けて書く
- 実施の月を先に決める
- 記録の様式と対にする
- 2運送業の一般的な指導監督の12項目
- 自社の記録から題材を選ぶ
- 季節に合わせて配る
- 該当しない項目も記録に残す
- 3運送業の特定の運転者への特別な指導
- 初任運転者は座学と実車の両方を行う
- 事故を起こした運転者には診断とあわせて行う
- 高齢の運転者は診断の結果をもとに行う
- 4運送業の指導監督の年間計画の組み方
- 実施の時間帯を決める
- 集まれない人の分を決めておく
- 年度の途中で見直す
- 5運送業の適性診断の対象と周期
- 受診の予約を早めに入れる
- 診断の結果を指導に使う
- 健康診断と管理表を分ける
- 6運送業の指導監督の記録に残す項目
- 12項目の番号を書く
- 受けた人の署名をもらう
- 題材の要点を1行残す
- 7運送業の指導監督の年間計画でつまずきやすいところ
- 記録はその場で書く
- 未実施を四半期ごとに見る
- 巡回指導で見られる部分を押さえる
- 8運送業の指導監督の年間計画を翌年度につなげる
- 実施できなかった項目を前に置く
- 傾向が出ている項目を厚くする
- 来年度の対象者を先に洗い出す
乗務員教育は毎月行うことになっていますが、その月に何を話すかを当日に考えている事業者は少なくありません。題材が思いつかないまま、前回と似た話を繰り返すことになります。
一般には、年度の初めに12か月分の題材を割り当てておきます。月が来たら、その月の題材を開くだけで済む形になります。
とはいえ、計画を作っても実施の記録が残っていなければ、行っていない扱いになります。
ポイントはここです。運送業の指導監督の年間計画は、題材を選ぶ手間をなくすための計画になります。
ここでは、何を組む計画なのか、12項目の配り方、特別な指導と適性診断、そして記録の残し方までを順に整理します。
運送業の指導監督の年間計画とは何を組む計画か
運送業の指導監督の年間計画は、乗務員に対する教育の予定をまとめたものです。全員に行う一般的な指導と、特定の運転者に行う特別な指導の両方を含みます。
- 12項目全員への一般的な指導
- 特別な指導3つの区分の運転者へ
- 適性診断受診の予定
3つのうち、計画に組み込みやすいのは1つ目の12項目です。一方で、特別な指導と適性診断は対象者が年度の途中で出てくるため、枠を空けておく形になります。
そのため、両方を1つの表に並べておくと、抜けが見つけやすくなります。
全員向けと個別を分けて書く
12項目は全員が対象で、1年から3年の間に一巡させる形が基本になります。一方の特別な指導は、初任、事故を起こした人、高齢の運転者という区分ごとに対象が決まります。
同じ表に混ぜて書くと、誰が受けるべきかが読み取りにくくなります。そのうえで、上段に全員向け、下段に個別という形にしておくと分かりやすくなります。
実施の記録も、同じ分け方で残しておくと集計が早く済みます。
実施の月を先に決める
計画を作るとき、項目だけを並べて月を決めないでいると、実施が後ろに寄ります。年度の終わりに何項目も残っている状態になりがちです。
実施の月まで決めておくと、題材を毎回考える手間がなくなります。
記録の様式と対にする
計画と記録の様式を別々に作ると、対応が追えなくなります。計画に書いた項目の番号を、記録にも書く形にしておくと突き合わせられます。
そのうえで、記録の様式は同じものを全営業所で使います。様式が違うと、年度末に集計するときに手間がかかります。
計画と記録を同じファイルにまとめておく方法もあります。
運送業の一般的な指導監督の12項目
運送業の一般的な指導監督は、国土交通省の告示で12の項目が示されています。それぞれを1年から3年で一巡させる形になります。
12を1つずつ扱うと、月ごとの題材が細切れになります。そのため、内容の近いものを塊にして配ると、話が組み立てやすくなります。
| 塊 | 含まれる内容 | 組み込む時期の目安 |
|---|---|---|
| 心構えと基本 | 運転する心構え、遵守すべき基本的事項 | 年度の初め |
| 車両と積載 | 構造上の特性、正しい積載方法、過積載の危険性 | 荷が増える時期の前 |
| 経路と危険 | 運行の経路と道路状況、危険の予測と回避 | 冬季や繁忙期の前 |
| 適性と装置 | 運転適性に応じた安全運転、安全装置の運転方法 | 適性診断の結果が出たとき |
| 法令と健康 | 交通事故に関わる法令、健康管理の重要性 | 健診の時期に合わせる |
| 危険物 | 危険物を運搬する場合の留意事項 | 該当する運行がある場合 |
右の列は、実施する時期の目安です。運行の実態に合わせて置くと、その月の話として受け取ってもらえます。
自社の記録から題材を選ぶ
一般論だけを話すと、聞く側の受け止め方が薄くなります。自社で起きたヒヤリハットや事故を題材にすると、身近な話になります。
運転日報やデジタコの記録から、急ブレーキの多い区間を拾う方法もあります。そのうえで、その区間で何が起きやすいかを話すと、翌日の運行につながります。
事故の事例を扱うときは、個人が特定されない形にします。
季節に合わせて配る
冬の凍結、夏の熱中症、年末の繁忙期。運行の危険は季節によって変わります。
季節に合わせて配ると、その月の運行に直結する話になります。
該当しない項目も記録に残す
危険物を運搬しない事業者では、その項目の指導が要らない場面があります。とはいえ、記録に何も書かないと、実施を忘れたのか対象外なのかが分かりません。
「該当する運行なし」と1行書いておくと、判断が残ります。そのうえで、運行の内容が変わったときに実施する形にしておきます。
新しい荷主との取引が始まったときが、見直しの機会になります。
運送業の特定の運転者への特別な指導
運送業では、12項目とは別に、特定の運転者へ行う特別な指導があります。初任運転者、事故を起こした運転者、高齢運転者の3つの区分です。
一般的な指導監督
- 全員が対象
- 12項目を1年で一巡
- 集団で行える
- 記録は3年保存
特別な指導
- 3つの区分の運転者
- 時間が定められている
- 個別に行う
- 適性診断とセット
左は集団で行えますが、右は個別に行うことが基本になります。一方で、実施の時間が定められている点も違います。
初任運転者は座学と実車の両方を行う
初任運転者への特別な指導では、座学と実車の両方が求められています。座学は一定の時間以上、実車による指導も一定の時間以上という定めがあります。
乗務を始める前に行うことが原則です。そのうえで、やむを得ない事情があるときの扱いも決めておくと、判断に迷いません。
入社の時期が重なると、指導する側の負担が大きくなります。
事故を起こした運転者には診断とあわせて行う
死傷者を生じた事故を起こした運転者には、特別な指導と適性診断を行います。事故の後、再び乗務する前に行うことが基本になります。
指導の内容は、その事故の状況を振り返るところから始めます。そのうえで、適性診断の結果を見ながら、本人の傾向を伝えます。
責めるためではなく、次を防ぐために行うという姿勢が伝わると、受け止め方が変わります。
高齢の運転者は診断の結果をもとに行う
65歳以上の運転者には、適齢診断の結果をもとに特別な指導を行います。診断で示された傾向について、本人と話す形になります。
年齢で自動的に対象になるので、生年月日から予定を作れます。
運送業の指導監督の年間計画の組み方
運送業の指導監督の年間計画は、月の枠を先に作ると組みやすくなります。12か月分の表を用意して、そこへ項目を配っていく形です。
- 1 月の枠を作る 12か月分の表
- 2 12項目を配る 塊ごとに割り当て
- 3 季節を合わせる 運行の実態に寄せる
- 4 特別な指導を足す 対象者が出たとき
- 5 診断の予定 年齢と事故から
特別な指導は予定が立てにくいため、枠を空けておく形が扱いやすくなります。
実施の時間帯を決める
運転者が集まる時間帯は、事業者によって違います。朝の点呼の後、月末の集金の日、休日の前日。運行の形に合わせて決めます。
全員が同じ時間に集まれないなら、複数回に分けて同じ内容を行う形にします。そのうえで、それぞれの回で記録を残します。
集まる時間を固定しておくと、予定として組み込めます。
集まれない人の分を決めておく
長距離の運行が続く運転者は、集合の場に出られないことがあります。その人の分をどうするかを決めておかないと、未実施のまま残ります。
資料を渡して読んでもらい、確認の署名をもらう方法があります。そのうえで、次に会ったときに要点を口頭で補うと、伝わり方が変わります。
映像で残して、都合のよいときに見てもらう方法もあります。
年度の途中で見直す
計画は、年度の途中で実態と合わなくなることがあります。荷主が変わって運行の内容が変わった、新しい車両が入った、といった場面です。
そのため、半年に1回は計画を見直す機会を作ります。実施できていない項目があれば、残りの月へ振り分け直します。
見直した内容は、計画の表に書き込んでおきます。
運送業の適性診断の対象と周期
運送業の適性診断は、対象になる人ごとに受ける時期が決まっています。初任、事故を起こした運転者、高齢運転者の3つです。
高齢の運転者は、以後も繰り返し受ける形になります。
受診の予約を早めに入れる
適性診断は、受診できる機関と日程が限られていることがあります。乗務の予定と合わせようとすると、希望の日が取れないことも起こります。
対象になる時期が分かった段階で、早めに予約を入れます。そのうえで、配車の担当にもその日を伝えておくと、当日の変更が減ります。
初任の場合は、入社の日程が決まった時点で動きます。
診断の結果を指導に使う
適性診断の結果は、受けさせて終わりにすると効果が出ません。本人と一緒に結果を見ながら、傾向について話す場を持ちます。
結果には、注意力や判断の傾向が示されています。そのうえで、日々の運行のどの場面で気をつけるかを一緒に決めると、行動につながります。
この面談そのものが、特別な指導の一部になります。
健康診断と管理表を分ける
適性診断と健康診断は、別の制度です。対象も周期も違うため、同じ欄で管理すると混同します。
1つの表に並べる場合も、列を分けておきます。そのうえで、それぞれの次回の期限を書く欄を設けます。
混同すると、片方だけ受けて済ませてしまうことがあります。
運送業の指導監督の記録に残す項目
運送業の指導監督の記録は、3年間の保存が求められています。巡回指導や監査で示す資料になるため、内容が読み取れる形にしておきます。
- 実施した日が書いてあるか はい次へ いいえ日付欄を足す
- 実施した項目が分かるか はい次へ いいえ12項目の番号を書く
- 受けた人が分かるか はい次へ いいえ氏名か署名を残す
- 内容が分かるか はい記録として使える いいえ題材と要点を書く
4つがそろうと、巡回指導でそのまま示せる記録になる
内容の欄が空だと、何を話したのかが後から分かりません。
12項目の番号を書く
記録に項目の番号を書いておくと、年度末の集計が早く済みます。どの項目が実施済みで、どれが残っているかが数えられるためです。
番号だけでなく、項目名も併記しておくと読む側が分かります。そのうえで、複数の項目を1回で扱った場合は、番号を並べて書きます。
番号が無いと、記録を1枚ずつ読んで判断することになります。
受けた人の署名をもらう
出席した人の氏名は、本人の署名でもらう形が確実です。担当者が名簿に印を付けるだけだと、実際に出ていたかが示せません。
署名の欄を記録の様式に設けておくと、その場でもらえます。そのうえで、欠席した人の分をどうするかも決めておきます。
後日に個別で行った分は、別の記録として残します。
題材の要点を1行残す
内容の欄には、何を題材にして何を伝えたかを書きます。1行でも構いませんが、後から読んで思い出せる程度の具体性が要ります。
「安全運転について」だけだと、何を話したのか分かりません。「凍結路面での制動距離と、冬タイヤの点検について」と書けば、内容が伝わります。
そのうえで、配った資料があれば、その名前も書いておきます。
運送業の指導監督の年間計画でつまずきやすいところ
運送業の指導監督の年間計画は、作った後に実施と記録でつまずきます。実施はしていても、記録が残っていない状態が最も多く見られます。
- 1 計画を作る 年度の初めに
- 2 実施する 月ごとに
- 3 記録を残す その場で書く
- 4 未実施を確認 四半期ごとに
- 5 翌年度へ 実績をもとに組む
この流れのうち、3つ目で止まることが多くあります。そのため、記録の様式を実施の場に持って行く運用にしておくと、切れ目がなくなります。
記録はその場で書く
指導を行った直後は、話した内容を覚えています。時間が経つと、何を題材にしたかが曖昧になります。
記録の用紙を手元に置いて、終わったらその場で書く形にします。そのうえで、署名も同じ場でもらいます。
後から集めようとすると、揃わないまま時間が過ぎます。
未実施を四半期ごとに見る
年度の終わりに残りを確認すると、詰め込む形になります。3か月に1回、実施済みの項目を数えておくと、余裕を持って調整できます。
四半期ごとに見ておくと、年末に詰め込む形になりません。
巡回指導で見られる部分を押さえる
適正化事業実施機関の巡回指導では、指導監督の実施状況が確認されます。計画があるか、記録があるか、対象者全員に行き渡っているかが見られます。
未実施の人がいる場合、その理由と次の予定を説明することになります。そのうえで、記録の内容が読み取れる形になっているかも確認されます。
計画と記録を対で示せると、説明が短く済みます。
運送業の指導監督の年間計画を翌年度につなげる
運送業の指導監督の年間計画は、毎年ゼロから作る必要はありません。その年の実績と傾向を見て、組み替える形が実務的です。
- 実績実施できた項目
- 傾向事故とヒヤリハット
- 対象者来年度に該当する人
この3つを年度末に並べると、次の年に何を厚くするかが決まります。逆に、前年の計画をそのまま写すと、実態から離れていきます。
実施できなかった項目を前に置く
その年に実施できなかった項目は、翌年度の前半へ置きます。後ろに置くと、また同じ理由で流れる可能性があります。
そのうえで、なぜ実施できなかったのかも確認します。時期が繁忙期と重なっていたなら、月を変えれば実施できます。
原因を見ずに月だけ動かすと、同じことが繰り返されます。
傾向が出ている項目を厚くする
事故やヒヤリハットの記録を見ると、起きやすい場面に傾向が出ます。バック時の接触が多い、交差点での右折が多い、といった形です。
傾向が出ている場面に関わる項目は、回数を増やすか時間を厚くします。そのうえで、自社の事例を題材に使うと、話が具体的になります。
数字で示すと、なぜその話をするのかが伝わります。
来年度の対象者を先に洗い出す
翌年度に65歳になる人、初任で入る予定の人。分かっている範囲で先に洗い出すと、予定が立てられます。
生年月日の一覧があれば、適齢診断の対象になる月まで計算できます。そのうえで、採用の計画とも突き合わせておきます。
対象者が集中する月があれば、前後に分散させる調整もできます。
様式は指導監督の年間計画テンプレートからダウンロードできます。実施の記録は乗務員教育記録簿にまとめています。
よくある質問
12項目は1年で全部やる必要がありますか。
指針では、一般的な指導監督として12の項目が示されています。1年で一巡させる形をとる事業者が多く、月ごとに1つか2つを割り当てる組み方が広く使われています。年をまたいで回す場合は、計画にその旨を書いておくと説明できます。
初任運転者の指導はどのくらいの時間が必要ですか。
指針で座学と実車の時間が示されており、座学が15時間以上、安全運転の実技が20時間以上という形になっています。時間は改正されることがあるため、実施の前に最新の指針で確認しておくと安心です。
指導監督の記録は何年保存しますか。
3年間、営業所に備え置く形が定められています。点呼記録が1年であるのに対して長いため、同じ棚に入れると処分の判断がつかなくなります。年数ごとに分けて保管しておくと迷いません。