運送業の健康診断個人票|項目と保存期間
公開 2026年9月3日
目次8項目
- 1運送業の健康診断個人票とは何を残す様式か
- 結果は本人にも通知する
- 医師の意見を聴く欄を空けない
- 事業者が保存する様式になる
- 2運送業の健康診断個人票が求められる理由
- 健康起因の事故が対策の対象になっている
- 監査で受診の状況が見られる
- 点呼と健診はつながっている
- 3運送業の健康診断の周期
- 深夜業に該当するかを実際の運行で見る
- 健診と適性診断は別のもの
- 高齢の運転者は診断の周期がある
- 4運送業の健康診断個人票に書く項目
- 業務歴の欄を運行の内容で埋める
- 数値は前回と並べて見る
- 医師の意見は具体的に書いてもらう
- 5運送業で追加される検査
- 睡眠時無呼吸症候群のスクリーニングを入れる
- 脳の検査は費用と頻度を決める
- 補助の仕組みを確認する
- 6運送業の健康診断の結果と乗務の判断
- 配車の担当と情報を共有する
- 本人と話す場を持つ
- 復帰の条件を決めておく
- 7運送業の健康診断個人票の保存期間
- 種類ごとに分けて保管する
- 退職した人の分も残す
- 電子で持つときは取り出せる形にする
- 8運送業の健康診断個人票を管理表で追う
- 未受診の人を色で分ける
- 運行の予定と突き合わせる
- 適性診断の欄も同じ表に置く
健康診断を受けさせたあと、結果の紙をそのままファイルに綴じている事業者は少なくありません。ところが監査で問われるのは、受けたかどうかだけではなく、所見のある人についてどう対応したかまで含まれます。
一般には、結果を個人票に書き写し、医師の意見と会社がとった措置まで1枚に残します。この1枚があると、乗務の判断をした経緯が後から説明できます。
とはいえ、意見と措置の欄が空いたまま何年も積み上がっている例も多くあります。
ポイントはここです。運送業の健康診断個人票は、乗務させてよいかを判断するための資料という位置づけになります。
ここでは、何を残す様式なのか、受診の周期、書く項目、そして結果を乗務の判断につなげるところまでを順に整理します。
運送業の健康診断個人票とは何を残す様式か
運送業の健康診断個人票は、健康診断の結果を人ごとにまとめた様式です。労働安全衛生規則が、作成と5年間の保存を求めています。
- 結果検査の項目と数値
- 意見医師が述べたこと
- 措置就業上とった対応
3つのうち、結果だけを書いて止まっている例が多くあります。とはいえ、判断の資料として使えるかどうかは、後ろの2つが埋まっているかで決まります。
意見と措置が空いていると、所見があったのに何もしなかったように見えます。
結果は本人にも通知する
健康診断の結果は、事業者が本人に通知します。会社が保管するだけで本人に渡していないと、本人が自分の状態を知る機会がありません。
通知の方法は、結果の写しを渡す形が一般的です。そのうえで、所見のある人には内容を口頭でも伝えると、受診につながりやすくなります。
再検査の案内も、このときに一緒に渡します。
医師の意見を聴く欄を空けない
異常の所見があると診断された人については、医師の意見を聴くことが求められています。就業上の措置が必要かどうかについての意見です。
健診機関に依頼すれば、意見を書いてもらえることが一般的です。ただし、こちらから依頼しないと記載されないこともあります。
結果を受け取るときに、意見の欄まで含めて依頼しておくと、後から追う手間が省けます。
事業者が保存する様式になる
個人票は事業者が作成し、事業者が保存します。本人に渡すのは結果の通知であって、個人票そのものではありません。
個人票は事業者が保存する様式なので、原本を渡してしまわないようにします。
運送業の健康診断個人票が求められる理由
運送業の健康診断個人票は、2つの制度から必要とされています。労働者の健康を管理する側面と、輸送の安全を確保する側面です。
労働安全衛生法の側
- 労働者の健康管理
- 雇入時と定期
- 結果は個人票へ
- 記録は5年保存
輸送安全規則の側
- 乗務させてよいかの判断
- 日々の点呼でも確認
- 疾病による事故の防止
- 監査で状況が問われる
左は、働く人の健康を守るための枠組みです。一方で右は、疾病によって運転できない人を乗務させないための枠組みになります。
健康起因の事故が対策の対象になっている
運転中に意識を失って起きる事故は、件数としては多くありませんが、被害が大きくなりやすいという特徴があります。
脳血管疾患、心疾患、睡眠時無呼吸症候群。このあたりが、健康に起因する事故の背景として挙げられています。
そのため、定期の健診に加えて、追加の検査を行う事業者が増えています。
監査で受診の状況が見られる
運輸支局の監査では、健康診断の実施状況が確認されます。受診していない人がいないか、所見のある人にどう対応したかが見られます。
未受診の人がいる場合、その理由と次の予定を説明することになります。そのうえで、個人票が整っていると、対応の経緯を示せます。
記録が無いと、行っていたとしても示せません。
点呼と健診はつながっている
点呼では、その日の体調を確認します。健診は、年に1回か2回の時点での状態を確認します。
日々の点呼と定期の健診は時間の幅が違う確認で、両方そろって判断ができます。
運送業の健康診断の周期
運送業の健康診断は、対象になる人によって周期が変わります。深夜業に従事する運転者は、一般の定期健診より短い間隔で受診します。
年1回で予算と日程を組んでいると、途中で足りなくなります。
深夜業に該当するかを実際の運行で見る
深夜業に該当するかどうかは、実際の運行の時間帯で決まります。午後10時から午前5時までの間に、どれだけ従事しているかが基準になります。
配車の内容が変われば、該当する人も変わります。そのため、年に1回は運行の実績を見て、対象を洗い直す作業が要ります。
対象を固定したままにしていると、該当するのに年1回で済ませている人が出ます。
健診と適性診断は別のもの
健康診断は、体の状態を見るものです。一方で適性診断は、運転の癖や判断の傾向を見るものになります。
初任、適齢、特定の3つがあり、それぞれ受ける対象が決まっています。そのうえで、両方の受診状況を同じ表で管理すると、抜けが減ります。
混同すると、片方だけ受けて済ませてしまうことがあります。
高齢の運転者は診断の周期がある
65歳以上の運転者には、適齢診断の受診が求められています。65歳になってから1年以内に1回、その後は3年以内ごとに1回という周期です。
誕生日を起点にするため、年度でまとめて手配すると期限を過ぎることがあります。そのため、人ごとに期限を持つ形で管理します。
管理表に生年月日を入れておくと、対象になる時期が計算できます。
運送業の健康診断個人票に書く項目
運送業の健康診断個人票には、検査の項目と結果を書きます。そのうえで、医師の意見と会社がとった措置まで書いて1枚になります。
- 1 受診 健診機関で受ける
- 2 結果の受領 数値と所見を受け取る
- 3 個人票に記載 項目ごとに書く
- 4 医師の意見 所見のある人について
- 5 就業上の措置 必要なら配車を調整
措置まで書く欄を置いておくと、後から経緯を説明できます。
| 項目 | 雇入時 | 定期 |
|---|---|---|
| 既往歴・業務歴 | 行う | 行う |
| 自覚症状・他覚症状 | 行う | 行う |
| 身長・体重・腹囲・視力・聴力 | 行う | 医師の判断で省略可 |
| 胸部エックス線 | 行う | 医師の判断で省略可 |
| 血圧・貧血・肝機能・血中脂質・血糖 | 行う | 医師の判断で省略可 |
| 尿検査 | 行う | 行う |
| 心電図 | 行う | 医師の判断で省略可 |
省略できる項目があるのは、定期の健診だけです。ただし、省略の判断をするのは医師であって、費用を抑えるために会社が決めるものではありません。
業務歴の欄を運行の内容で埋める
業務歴の欄は、これまでどういう仕事をしてきたかを書く欄です。運送業では、車種、運行の距離、時間帯といった内容が判断の材料になります。
長距離の夜間運行が続いていた人と、近距離の日中運行だけの人では、同じ数値でも医師の見方が変わることがあります。
そのため、乗務員台帳の内容から転記できる形にしておくと、記入が早く済みます。
数値は前回と並べて見る
健診の数値は、1回だけを見ても判断が難しいものです。基準の範囲に入っていても、前回から大きく動いていれば注意が要ります。
個人票は人ごとに年を追って並ぶ様式なので、この比較がしやすくなっています。そのうえで、動きの大きい項目に印を付けておくと、次の年に見返せます。
紙の様式でも、電子の表でも、並べて見られる形にしておきます。
医師の意見は具体的に書いてもらう
医師の意見が「経過観察」だけだと、会社としてどうすればよいか分かりません。就業上の措置が必要かどうか、必要ならどういう措置かまで書いてもらいます。
長距離の運行を避ける、夜間の乗務を制限する、といった具体的な内容であれば、配車の調整に落とせます。
依頼するときに、運送業であることと運行の内容を伝えておくと、書いてもらいやすくなります。
運送業で追加される検査
運送業では、法定の項目に加えて検査を行う事業者が増えています。健康に起因する事故の背景になりやすい疾患を、早めに見つけるためです。
上の3つは、いずれも運転中の意識に関わる疾患です。一方で、費用も日数もかかるため、全員に毎年行うのは現実的ではありません。
睡眠時無呼吸症候群のスクリーニングを入れる
睡眠時無呼吸症候群は、本人が自覚していないことが多い疾患です。いびきや日中の眠気といった症状はありますが、病気だと気づかない人もいます。
簡易な検査であれば、自宅で行える機器を使う方法があります。そのうえで、結果に応じて精密検査へ進む形にすると、費用を抑えられます。
治療によって改善する例が多いため、見つけることに意味があります。
脳の検査は費用と頻度を決める
脳のMRIやMRAは、費用が高く、毎年全員に行うのは負担になります。年齢や既往歴で対象を絞り、数年に1回という頻度にしている事業者が多くあります。
対象と頻度を先に決めておくと、毎年の予算に組み込めます。
補助の仕組みを確認する
追加の検査については、補助の仕組みが用意されていることがあります。国土交通省や事業者団体が、費用の一部を助成する制度を設けている場合です。
内容や条件は年度によって変わるため、その年の案内を確認します。そのうえで、申請の時期に合わせて健診の日程を組むと、使える幅が広がります。
健康保険組合の補助が使える場合もあります。
運送業の健康診断の結果と乗務の判断
運送業の健康診断は、受けさせて終わりではありません。所見があった人について、乗務させてよいかを判断するところまでが一連の流れです。
判断を担当者の感覚に任せないために、医師の意見を挟みます。
- 所見があるか はい次へ いいえ通常どおり乗務
- 医師の意見を聴いたか はい次へ いいえ意見を聴いてから判断
- 乗務を制限する意見があるか はい配車を調整する いいえ経過を見ながら乗務
- 措置を個人票に書いたか はい判断の記録が残る いいえ措置の欄に記入する
医師の意見を挟むことで、判断が担当者の感覚から離れる
最後の「措置を書く」が抜けやすい部分です。配車を調整していても、記録に残っていなければ、対応していないのと同じ扱いになります。
配車の担当と情報を共有する
乗務を制限する措置をとるとき、配車の担当が知らなければ実行されません。一方で、健診の結果そのものは個人情報として扱う必要があります。
制限の内容だけを伝える形にすると、両方が成り立ちます。「長距離を避ける」「夜間の乗務を外す」という配車上の条件として伝えます。
病名まで共有する必要はありません。
本人と話す場を持つ
乗務の内容を変えるときは、本人に理由を伝えます。説明がないまま配車が変わると、不信につながります。
医師の意見に基づく措置であることを伝えると、会社の判断ではないと分かります。そのうえで、いつまで続くのか、どうなれば戻せるのかも一緒に伝えます。
収入に関わる場面なので、丁寧に扱う部分です。
復帰の条件を決めておく
乗務を制限した後、どうなれば元に戻すのかを決めておきます。再検査の結果、治療の状況、医師の意見。この3つが目安になります。
条件を決めていないと、制限したまま何年も続くことがあります。逆に、本人の申し出だけで戻すと、判断の根拠が残りません。
復帰の判断も、個人票の措置の欄に書いておきます。
運送業の健康診断個人票の保存期間
運送業の健康診断個人票は、5年間の保存が求められています。他の記録とは年数が違うため、まとめて処分すると早く消えることになります。
- 5年一般健康診断の個人票
- 3年指導監督の記録
- 1年点呼記録・運転日報
点呼記録や運転日報と同じ棚に入れると、処分の判断がつかなくなります。
種類ごとに分けて保管する
保存の年数ごとに置き場所を分けると、処分の判断がその場でつきます。1年のもの、3年のもの、5年のものという分け方です。
そのうえで、年度ごとにまとめておくと、期限の切れたものを取り出せます。年に1回、処分する日を決めておくと溜まり続けません。
個人情報を含むため、処分の方法も決めておきます。
退職した人の分も残す
退職した人の個人票も、保存期間が終わるまでは残します。在職していた期間の健康状態について、後から問われることがあるためです。
在職者と分けて保管すると、現在の管理表と混ざりません。そのうえで、退職した年月を記録しておくと、処分の時期が計算できます。
在職者のファイルに残したままだと、未受診として数えてしまうことがあります。
電子で持つときは取り出せる形にする
個人票を電子で保存する場合、必要なときに取り出せる形にしておきます。監査や本人からの求めがあったときに、すぐ出せることが前提になります。
人ごとのフォルダにまとめ、年で分ける形が扱いやすくなります。そのうえで、アクセスできる人を限る設定をしておきます。
健康に関する情報は、特に配慮が必要な個人情報にあたります。
運送業の健康診断個人票を管理表で追う
運送業の健康診断個人票は、個人票そのものだけでは期限を管理できません。誰がいつ受けて、次はいつなのかを一覧で持つ表が要ります。
- 1 対象の洗い出し 深夜業の該当を見る
- 2 予約 期限の1か月前に手配
- 3 受診 結果を受け取る
- 4 個人票へ 意見と措置まで書く
- 5 次回の期限 管理表に書き入れる
最後の「次回の期限を書く」までを1巡にすると、切れ目がなくなります。逆に、受診したところで止めると、次の年に一から洗い直すことになります。
未受診の人を色で分ける
管理表で未受診の人が埋もれると、期限を過ぎてから気づくことになります。期限までの残りで色を変えておくと、一目で分かります。
表計算のソフトであれば、条件付き書式で自動的に色が変わります。そのうえで、月に1回は表を開いて確認する日を決めておきます。
開かないと、色を付けても意味がありません。
運行の予定と突き合わせる
健診の予約を入れても、その日に長距離の運行が入っていれば受けられません。予約の段階で配車と突き合わせておくと、当日の変更が減ります。
受診の予定を配車表に入れておくと、当日の欠員が起きません。
適性診断の欄も同じ表に置く
健診と適性診断は別の制度ですが、管理する側から見れば同じ「期限のあるもの」です。1つの表に並べておくと、人ごとの状況が一度に見えます。
初任、適齢、特定の欄を設け、受診日と次回の期限を書きます。そのうえで、資格や免許の有効期限も同じ表に入れると、確認が1回で済みます。
表が1つにまとまっていると、担当が代わっても引き継げます。
様式は健康診断個人票テンプレートからダウンロードできます。業務歴のもとになる記録は乗務員台帳にまとめています。
よくある質問
運転者の健康診断は年1回では足りないのですか。
深夜業を含む業務に常時従事する人は、6か月以内ごとに1回という周期になります。長距離や夜間の運行がある運転者は該当することが多いため、年2回で組んでいる事業者が一般的です。該当するかどうかは実際の運行の時間帯で判断します。
健康診断個人票は何年保存しますか。
一般健康診断の個人票は5年間の保存が定められています。特殊健康診断は物質ごとに年数が違うため、混ぜずに分けて保管しておくと処分の判断で迷いません。
睡眠時無呼吸症候群の検査は義務ですか。
法令で全事業者に義務づけられた検査ではありません。健康起因事故の防止という考え方から、国のガイドラインでスクリーニングの実施が勧められており、多くの事業者が定期健診に合わせて行っています。