運送業の労働者死傷病報告|提出の時期と書き方
公開 2026年9月3日
目次8項目
- 1運送業の労働者死傷病報告とは何を出す書類か
- 労災保険の請求とは別の手続きになる
- 提出しないと違反になる
- 派遣や請負の場合は扱いが変わる
- 2運送業の労働者死傷病報告の対象になるけが
- 業務によるものかを作業の内容で見る
- 休業の日数は診断で確認する
- 休業が伸びたら扱いを切り替える
- 3運送業の労働者死傷病報告の提出の時期
- 四半期の区切りを表にして置く
- 遅滞なくの目安を社内で決める
- 提出の担当を1人決める
- 4運送業の労働者死傷病報告に書く項目
- 発生の状況は動作まで書く
- 略図で高さと位置を示す
- 職種は実際の作業で書く
- 5運送業で多い労働災害の型
- 荷台からの墜落が最も多い
- 腰の負傷は繰り返し起きる
- 交通事故は重くなりやすい
- 6運送業の労働者死傷病報告の電子申請
- 登録は事故が起きる前に済ませる
- 略図の作り方を決めておく
- 控えを社内に残す
- 7運送業の労働者死傷病報告でつまずきやすいところ
- 休業なしで済んだけがも記録に残す
- 荷主の敷地での災害を隠さない
- 対応手順に2つの報告を並べて書く
- 8運送業の労働者死傷病報告を再発の防止につなげる
- 荷役の手順を書き直す
- 設備で防げるものを洗い出す
- 荷主と作業の環境を話す
運送業で人がけがをしたとき、出す書類が1つではないことが混乱のもとになります。運輸支局へ出すものと、労働基準監督署へ出すものが別にあり、それぞれ対象も期限も違います。
一般には、労災保険の手続きを進めながら、並行して届出を出す形になります。労災の請求と届出は別の手続きなので、片方だけでは終わりません。
とはいえ、けがの直後は現場も社内も慌ただしく、書類の判断まで手が回りにくい場面です。
ポイントはここです。運送業の労働者死傷病報告は、労働者のけがを労働基準監督署へ出す届出になります。
ここでは、何を出す書類なのか、対象になるけが、提出の時期と書き方、そして再発の防止につなげるところまでを順に整理します。
運送業の労働者死傷病報告とは何を出す書類か
運送業の労働者死傷病報告は、労働災害によって労働者が死亡または休業したときに、労働基準監督署へ提出する届出です。労働安全衛生規則が提出を求めています。
- 労働基準監督署労働者死傷病報告
- 運輸支局自動車事故報告書
- 社内事故記録と対策
運転中の事故で運転者がけがをした場合、3つすべてが必要になることがあります。一方で、荷役の作業でけがをした場合は、労働者死傷病報告だけになります。
そのため、どの書類が要るかを事故の内容から判断する流れを決めておきます。
労災保険の請求とは別の手続きになる
労災保険の給付を請求する書類と、労働者死傷病報告は別のものです。請求は本人や遺族のための手続きで、報告は事業者が行政へ知らせる手続きになります。
労災の請求をしたから報告も済んだ、という扱いにはなりません。そのうえで、どちらも期限があるため、並行して進める形になります。
社内の担当が違う場合は、両方が動いているかを確認する仕組みが要ります。
提出しないと違反になる
労働者死傷病報告を提出しない、または事実と違う内容で提出することは、労働安全衛生法に違反する行為にあたります。
休業が短いから出さない、という判断は取れません。
派遣や請負の場合は扱いが変わる
派遣労働者が被災した場合、派遣元と派遣先の両方が報告を提出します。それぞれの立場で作成し、それぞれの管轄の労働基準監督署へ出す形です。
請負で入っている場合は、雇用している事業者が提出します。ただし、災害の発生した場所が他社の事業場であれば、その旨を記載します。
荷主の敷地で起きた災害では、発生の場所を明記します。
運送業の労働者死傷病報告の対象になるけが
運送業の労働者死傷病報告は、すべてのけがが対象になるわけではありません。死亡したとき、または休業したときが対象になります。
- 自社が雇用している人か はい次へ いいえ雇用している事業者が提出
- 業務によるけがか はい次へ いいえ通勤災害は対象外の扱い
- 死亡または休業したか はい報告の対象 いいえ社内の記録に残す
- 休業は4日以上か はい遅滞なく提出 いいえ四半期ごとにまとめて提出
休業の日数で、提出の時期が2つに分かれる
最後の分岐で、提出の時期が変わります。そのため、休業の日数を早い段階で確認しておくことが判断の起点になります。
業務によるものかを作業の内容で見る
業務によるけがかどうかは、そのとき何をしていたかで判断します。運転中、荷役の作業中、点検の作業中であれば、業務によるものになります。
一方で、通勤の途中で起きたものは通勤災害として扱われ、この報告の対象になりません。ただし、業務の途中で立ち寄った先での移動は、業務にあたる場合があります。
判断に迷うときは、労働基準監督署に確認しておくと確実です。
休業の日数は診断で確認する
休業の日数は、本人の申告ではなく医師の診断で確認します。「明日から出られそう」と本人が言っても、実際には長引くことがあります。
診断書を確認してから日数を確定させると、提出の時期を間違えません。
休業が伸びたら扱いを切り替える
当初は2日の見込みだった休業が、結果として1週間になることがあります。この場合、四半期でまとめる扱いから、遅滞なく提出する扱いへ切り替わります。
そのため、休業の期間が確定するまでは経過を追う必要があります。確定した時点で、どちらの扱いになるかを判断し直します。
見込みのまま四半期まで待っていると、期限を過ぎることになります。
運送業の労働者死傷病報告の提出の時期
運送業の労働者死傷病報告は、休業の日数によって提出の時期が変わります。4日以上と、1日から3日で分かれます。
四半期ごとの分は、期間が終わった翌月の末日までに出す形になっています。
四半期の区切りを表にして置く
四半期の区切りは、1月から3月、4月から6月、7月から9月、10月から12月です。それぞれの期間に起きた分を、翌月の末日までにまとめて提出します。
区切りと提出の期限を表にして、担当者の目に入る場所に置いておきます。そのうえで、該当する災害が無い期間は提出が要らないことも書いておきます。
期限の日を予定表に入れておくと、忘れずに済みます。
遅滞なくの目安を社内で決める
休業4日以上の場合は「遅滞なく」提出することになっています。明確な日数が示されていないため、社内で目安を決めておくと動きやすくなります。
休業が4日以上と分かった日から1週間以内、といった形です。そのうえで、担当者が不在のときの代わりも決めておきます。
目安が無いと、他の業務に押されて後回しになります。
提出の担当を1人決める
労働者死傷病報告の提出は、頻度の高い作業ではありません。そのため、誰が出すのかを決めていないと、互いに任せ合う状態になります。
安全担当か総務の担当を1人決めて、代わりも1人決めておきます。そのうえで、対応手順にその名前を書いておくと、事故の直後に迷いません。
担当が代わったときは、手順の名前も更新します。
運送業の労働者死傷病報告に書く項目
運送業の労働者死傷病報告には、被災した人の情報と発生の状況を書きます。中でも、発生の状況と略図が中心になります。
- 1 本人の情報 氏名・年齢・職種
- 2 発生の状況 いつ・どこで・何を
- 3 傷病の状況 部位と程度
- 4 休業の日数 診断にもとづく
- 5 略図 状況を図で示す
略図の欄があるため、簡単な図で示せるようにしておきます。
| 項目 | 内容 | 書くときの目安 |
|---|---|---|
| 事業の種類 | 貨物自動車運送事業など | 事業の実態で書く |
| 被災者 | 氏名・年齢・経験年数 | 乗務員台帳から転記 |
| 職種 | 運転者・荷役作業者など | 実際の作業で書く |
| 発生の日時 | 分まで書く | 運転日報と突き合わせる |
| 発生の場所 | 事業場の内か外か | 荷主の敷地なら明記 |
| 発生の状況 | 何をしていてどうなったか | 原因が分かる形で |
| 休業の日数 | 見込みではなく実際 | 診断で確認 |
被災者の情報は、乗務員台帳から転記できます。そのうえで、発生の日時は運転日報と突き合わせておくと、記載の食い違いが防げます。
発生の状況は動作まで書く
発生の状況は、結果だけを書くと原因が読み取れません。「荷台から転落し負傷」では、なぜ転落したのかが分かりません。
何をしようとして、どういう動きをしたときに、何が起きたか。この順で書くと、対策につながる記載になります。
「荷台の後部であおりを開けようとして体をひねり、足を滑らせて約1.4m下のアスファルトへ転落した」と書けば、高さも動作も伝わります。
略図で高さと位置を示す
略図には、被災した人の位置、車両の位置、高さの関係を描きます。上手な絵である必要はなく、位置関係が分かれば足ります。
車両を横から見た図に、人の位置と落ちた先を書き込む形が分かりやすくなります。そのうえで、高さの数値を入れておくと状況が伝わります。
写真を撮っておくと、図を描くときの材料になります。
職種は実際の作業で書く
職種の欄には、そのときに行っていた作業を書きます。運転者として雇用していても、荷役の作業中であれば、その作業を書きます。
会社での役職名ではなく、災害と関わりのある作業の内容が求められています。そのため、「運転者(荷役作業中)」といった形で書く例もあります。
実態と違う職種を書くと、災害の傾向を集計する材料になりません。
運送業で多い労働災害の型
運送業の労働災害は、交通事故だけではありません。むしろ、荷役の作業で起きるけがのほうが件数としては多くなっています。
上の3つは、いずれも荷役の場面で起きるものです。一方で、いちばん下の交通事故は件数こそ少ないものの、重い結果になりやすい特徴があります。
荷台からの墜落が最も多い
荷台の高さは、地上から1メートル前後になることが一般的です。低いように見えますが、頭から落ちれば重い傷害につながります。
荷役の作業は運転よりけがの件数が多いという前提で対策を組みます。
腰の負傷は繰り返し起きる
重い荷を持ち上げる動作は、腰に負担がかかります。一度痛めると、復帰した後も再発しやすくなります。
台車やリフトを使える場面では、持ち上げない方法に変えます。そのうえで、2人で持つ基準の重さを決めておくと、判断が揺れません。
腰痛は休業に至らないことも多く、記録に残らないまま繰り返される傾向があります。
交通事故は重くなりやすい
運転中の事故は、件数としては荷役より少なくなります。とはいえ、速度が出ている分、けがの程度が重くなりやすい特徴があります。
この場合、労働者死傷病報告に加えて、自動車事故報告書も必要になることがあります。そのうえで、警察への届出と保険の手続きも並行して進みます。
宛先の違う書類が同時に動くため、手順書にまとめておくと迷いません。
運送業の労働者死傷病報告の電子申請
運送業の労働者死傷病報告は、2025年1月から電子申請が原則になりました。紙での提出は、例外的な扱いになります。
電子で提出する
- 原則としてこちら
- 事前に利用の登録が要る
- 控えが画面に残る
- 略図は画像で添える
紙で提出する
- 例外的な扱いになる
- 窓口か郵送
- 控えは自分で取る
- 略図は手書きできる
電子で出す場合、事前に利用の登録が必要になります。一方で、登録には日数がかかるため、事故が起きてから始めると期限に間に合いません。
登録は事故が起きる前に済ませる
電子申請の登録は、災害が起きていなくても行えます。必要になってから登録すると、その分だけ提出が遅れます。
登録は事故が起きる前に済ませておくと、期限で慌てません。
略図の作り方を決めておく
電子で提出する場合、略図は画像として添える形になります。紙に手で描いたものを撮影して添える方法が、いちばん簡単です。
そのうえで、描き方を社内で決めておくと、担当が代わっても同じ形になります。車両を横から見た図に、人の位置と高さを書き込む形が扱いやすくなります。
作図のソフトを使う必要はありません。
控えを社内に残す
電子で提出すると、控えは画面上に残ります。とはいえ、社内のファイルにも保存しておくほうが、後から探しやすくなります。
提出した内容を印刷するか、画面を保存する形で残します。そのうえで、社内の事故記録と同じ場所にまとめておきます。
同じ事故に関する書類が1か所に集まっていると、対策を考えるときに使えます。
運送業の労働者死傷病報告でつまずきやすいところ
運送業の労働者死傷病報告は、その日の記録が無いと後の判断がすべて止まります。状況を覚えているうちに残しておくことが、いちばん効きます。
- 1 その日 状況と写真を残す
- 2 診断 休業の日数を確認
- 3 対象の判断 4日以上かで分ける
- 4 提出 電子で出す
- 5 控えの保管 事故記録とひもづけ
最初の段階でつまずくと、後から思い出しながら書くことになります。そのため、対応手順の1番目に「状況と写真を残す」を置いておくと切れ目がなくなります。
休業なしで済んだけがも記録に残す
休業に至らなかったけがは、報告の対象になりません。とはいえ、社内の記録には残しておく意味があります。
同じ場所、同じ作業で繰り返し起きているなら、いずれ重い災害につながります。そのうえで、記録が積み上がっていると、対策の必要性を示せます。
軽いけがを記録に残す文化があると、報告そのものが上がりやすくなります。
荷主の敷地での災害を隠さない
荷主の構内で起きた災害は、報告しにくい空気が生まれることがあります。取引に影響するのではないかという心配からです。
一方で、報告しないことは法令に違反する行為にあたります。そのため、発生の場所を正しく書いたうえで提出します。
荷主との関係は、作業の環境を改善する話し合いとして扱う形になります。
対応手順に2つの報告を並べて書く
事故が起きたとき、どの書類が要るかをその場で判断するのは難しいものです。対応手順に、労働者死傷病報告と自動車事故報告書を並べて書いておきます。
それぞれの対象と期限を1行ずつ添えておくと、判断がその場でつきます。そのうえで、警察や保険への連絡も同じ手順に入れておきます。
1枚にまとまっていると、慌てている場面でも読めます。
運送業の労働者死傷病報告を再発の防止につなげる
運送業の労働者死傷病報告は、出して終わりにすると次に活きません。書いた発生の状況を、対策の材料として使います。
- 手順荷役の方法を直す
- 設備昇降台や補助具
- 教育同じ作業をする人へ
3つのうち、効果が続くのは設備です。
手順と教育は、人が守ることを前提にしています。
荷役の手順を書き直す
同じ作業で繰り返しけがが起きているなら、手順そのものに無理があります。どこで体をひねるのか、どこで高いところに上がるのかを見直します。
台車を使う、置く高さを変える、2人で行う。そのうえで、変えた手順を実際に試してもらい、やりにくくないかを確かめます。
現場が守れない手順は、書いてもすぐに元へ戻ります。
設備で防げるものを洗い出す
荷台からの昇降であれば、昇降台やステップを設ける方法があります。持ち上げる動作であれば、リフトや台車で置き換えられます。
費用はかかりますが、人の注意に頼らない分だけ効果が続きます。そのうえで、災害の記録が積み上がっていると、導入の判断材料になります。
助成の制度が使える場合もあるため、あわせて確認します。
荷主と作業の環境を話す
荷主の構内での作業条件は、自社だけでは変えられません。床の段差、照明の暗さ、待機の場所といった要素が災害につながることがあります。
記録を示しながら、改善を相談する形になります。そのうえで、自社でできる対策も一緒に提案すると、話が進みやすくなります。
荷主にとっても、構内で災害が起きることは避けたい事態です。
様式は労働者死傷病報告 記入控えテンプレートからダウンロードできます。事故のあとの動き方は事故発生時の対応手順にまとめています。
よくある質問
休業が1日でも報告が必要ですか。
休業が発生していれば報告の対象になります。休業4日以上と、1日から3日で提出の時期が分かれる形になっています。4日未満は四半期ごとにまとめて出すため、その場で提出しなくても記録は残しておきます。
荷主の倉庫で起きたけがも自社が報告しますか。
負傷した人を雇用している事業者が報告する形になります。場所が荷主の敷地であっても、自社の従業員であれば自社が提出します。発生場所と作業の内容は正確に書いておくと、後の確認で困りません。
通勤中のけがは対象になりますか。
通勤災害は労働者死傷病報告の対象から外れる扱いが一般的です。労災保険の給付とは対象の範囲が違うため、混同しないようにします。判断に迷う場合は労働基準監督署に確認する形が確実です。