運送業の誓約書|運転者・秘密保持と始末書
公開 2026年9月3日
目次8項目
- 1運送業の誓約書とは何を約束する書類か
- 雇い入れのときに取る形が多い
- 罰するための書類にしない
- 就業規則との関係を整えておく
- 2運送業の誓約書に書く内容
- 免許の状況を報告する項目を入れる
- 飲酒は時間の目安まで書く
- 私的な使用の範囲を決める
- 3運送業の秘密保持誓約書に書く内容
- 荷主の情報が対象になる
- 配送の経路も情報になる
- 写真と投稿の扱いを書く
- 4運送業の誓約書を取るときに気をつけること
- 説明の時間を入社の手続きに入れる
- 控えを本人に渡す
- 内容を年に1回見直す
- 5運送業の始末書は誓約書と性格が違う
- 事実の報告と反省を分ける
- 提出を強制する形にしない
- 指導した記録は残しておく
- 6運送業の誓約書でつまずきやすいところ
- まとめて渡して署名だけを受けない
- 在職者から取り直すかを決める
- 就業規則の改定と一緒に見る
- 7運送業の誓約書の保存のしかた
- 人ごとにまとめて保管する
- 個人情報として扱う
- 退職時の扱いを決めておく
- 8運送業の誓約書を運用に落とす
- 点呼の申告と結びつける
- 年1回の指導で振り返る
- 内容を変えたら取り直すかを決める
入社の日に何枚も書類を渡して、まとめて署名をもらう。この形だと、本人は中身を読まないまま名前を書くことになります。後から「そんな約束はしていない」と言われたときに、説明が難しくなります。
一般には、入社の手続きの中で内容を説明し、その場で署名を受けます。署名だけを集める形にすると、約束としては弱くなります。
とはいえ、書類の枚数が多いほど、1枚ずつ説明する時間は取りにくくなります。
ポイントはここです。運送業の誓約書は、罰するための書類ではなく、約束を本人と確認するための書類になります。
ここでは、誓約書に書く内容、秘密保持誓約書との違い、始末書との性格の違い、そして保存と運用までを順に整理します。
運送業の誓約書とは何を約束する書類か
運送業の誓約書は、これから守ることを本人が約束する書類です。運転の遵守事項、飲酒の扱い、健康の申告といった項目を並べます。
誓約書と始末書は名前が似ていますが、向いている時間が逆になります。
- 誓約書これから守ること
- 秘密保持誓約書情報の取り扱い
- 始末書起きたことへの反省
誓約書と秘密保持誓約書は、これからのことを扱います。一方で始末書は、起きたことについて本人が述べる書類になります。
そのため、同じ場面で使うものではありません。
雇い入れのときに取る形が多い
誓約書は、雇い入れのときに取ることが一般的です。就業規則を説明する場と合わせると、内容が伝わりやすくなります。
その場で読んでもらい、質問があれば答える時間を取ります。そのうえで、署名を受けて控えを渡します。
入社の手続きの流れに組み込んでおくと、抜けが起きません。
罰するための書類にしない
誓約書を、後で責任を問うための材料として扱うと、内容が形骸化します。署名させることが目的になり、中身が伝わらなくなるためです。
約束を本人と確認するための書類として使うと、内容が伝わります。
就業規則との関係を整えておく
誓約書の内容が就業規則と食い違っていると、どちらが優先するかで混乱します。そのため、文面を作るときに規則と突き合わせておきます。
規則に書いてあることを誓約書で確認する、という関係にしておくと整理がつきます。そのうえで、規則を改定したときは誓約書も見直します。
片方だけ直すと、内容が離れていきます。
運送業の誓約書に書く内容
運送業の誓約書には、運転に結びついた項目を並べます。一般的な服務規律だけを書いても、運送業の現場では判断の材料になりません。
- 1 運転の遵守事項 法令と社内のきまり
- 2 飲酒の扱い 乗務前後の行動
- 3 健康の申告 体調と服薬
- 4 車両の扱い 点検と私的な使用
- 5 報告の義務 事故と違反
この5つが並んでいると、日々の運行で判断が要る場面をおおむね覆えます。そのうえで、自社で問題になったことがある項目を足していきます。
| 項目 | 内容 | 書くときの目安 |
|---|---|---|
| 法令の遵守 | 道路交通法と社内のきまり | 具体的な行為で書く |
| 飲酒の禁止 | 乗務前後の飲酒 | 時間の目安まで書く |
| 健康の申告 | 体調と服薬の申告 | 点呼で申告する形に |
| 車両の扱い | 日常点検と私的使用 | 使用の範囲を書く |
| 事故の報告 | 発生時の連絡 | 連絡先を添える |
| 違反の報告 | 免許の停止など | 報告の期限を書く |
右の列は、書くときの目安です。抽象的な言葉より、具体的な行為で書くほうが本人に伝わります。
免許の状況を報告する項目を入れる
運転免許の停止や取消しは、会社が自動的に知る仕組みがありません。本人から報告してもらう形にしておく必要があります。
違反点数が付いたとき、行政処分の通知が来たとき、免許を更新したとき。そのうえで、いつまでに報告するかも書いておきます。
報告しないまま乗務を続けていると、無免許運転につながることがあります。
飲酒は時間の目安まで書く
「乗務前の飲酒を禁止する」とだけ書くと、何時間前までかが分かりません。体内からアルコールが抜ける時間には個人差があります。
時間の目安まで書いておくと、本人が自分で判断できます。
私的な使用の範囲を決める
車両を通勤に使えるのか、休日に使えるのかを書いておきます。書いていないと、判断が人によって変わります。
使用を認める場合は、その範囲と条件を具体的に書きます。そのうえで、事故が起きたときの扱いも決めておきます。
範囲があいまいなままだと、後から責任の所在で揉めます。
運送業の秘密保持誓約書に書く内容
運送業の秘密保持誓約書は、荷主や取引に関する情報の扱いを約束するものです。運転者の誓約書とは、対象になる期間が違います。
運転者の誓約書
- 運転の遵守事項
- 飲酒と健康の申告
- 車両の扱い
- 在職中が対象
秘密保持誓約書
- 荷主と取引の情報
- 配送の経路と量
- 個人情報の扱い
- 退職後も対象になる
秘密保持は、退職した後も続く約束になります。そのため、在職中のことだけを書いた誓約書とは分けて取る形が一般的です。
荷主の情報が対象になる
運送業では、荷主の取引の内容を日常的に見ることになります。何を、どこへ、どれだけ運んでいるか。これらは荷主にとって重要な情報です。
競合する会社に伝われば、荷主の不利益につながります。そのうえで、運送会社としての信用にも関わります。
具体例を挙げて書いておくと、何が対象なのかが伝わります。
配送の経路も情報になる
荷物の内容だけでなく、経路や時刻も守るべき情報にあたることがあります。現金や貴重品を運ぶ場合、経路が知られると危険につながります。
経路と時刻も守る情報に含めておくと、扱いが伝わります。
写真と投稿の扱いを書く
作業中の写真をそのまま投稿すると、荷主の名前や荷の内容が写り込みます。本人には情報を漏らす意図が無くても、結果として伝わることになります。
そのため、業務中の写真をどう扱うかを書いておきます。撮影そのものを禁じるのか、投稿を禁じるのかを分けて書くと分かりやすくなります。
車体に荷主の名前が入っている場合は、車両の写真も対象になります。
運送業の誓約書を取るときに気をつけること
運送業の誓約書は、取り方によって意味が変わります。説明と控えの2つがあると、書類が生きた約束になります。
- 内容を説明する時間を取ったか はい次へ いいえ説明の場を設ける
- 就業規則と食い違いがないか はい次へ いいえ規則と突き合わせる
- 控えを本人に渡したか はい次へ いいえ写しを渡す
- 保管の場所を決めたか はい取る形が整っている いいえ保管の担当を決める
説明と控えの2つがあると、書類が生きた約束になる
4つのうち、抜けやすいのは3つ目の控えです。署名した書類が会社にしか無いと、本人は何を約束したか確認できません。
説明の時間を入社の手続きに入れる
入社の手続きは、書類の枚数が多くなりがちです。まとめて渡して署名だけを受ける形だと、内容が伝わりません。
誓約書については、10分程度でも説明の時間を取ります。そのうえで、質問があれば答える形にすると、疑問が残りません。
説明した日と担当者を記録に残しておくと、後から確認できます。
控えを本人に渡す
署名した誓約書の写しを、本人に渡します。手元にあれば、迷ったときに読み返せます。
そのうえで、渡したことを記録に残しておきます。渡していないと、後から「見たことがない」という話になります。
秘密保持誓約書は、退職後も効力が続くため特に渡しておきます。
内容を年に1回見直す
誓約書の文面は、一度作ると何年もそのままになりがちです。法令の改正や、社内で起きた問題を反映していない状態になります。
そのため、年に1回は内容を見直す機会を作ります。就業規則の見直しと同じ時期にすると、まとめて確認できます。
変えた場合は、在職者から取り直すかも決めます。
運送業の始末書は誓約書と性格が違う
運送業の始末書は、起きたことについて本人が述べる書類です。これから守ることを約束する誓約書とは、性格が違います。
実務で重みがあるのは、事故報告書と指導の記録です。一方で始末書は、本人の反省を述べるもので、事実の記録にはなりません。
事実の報告と反省を分ける
事故が起きたとき、まず必要なのは事実の記録です。いつ、どこで、何が起きたか。これは事故報告書で残します。
始末書に事実と反省を混ぜて書かせると、事実の部分が曖昧になります。そのうえで、責められている場面では、本人が書きにくくなります。
2つを分けておくと、事実が正確に残ります。
提出を強制する形にしない
始末書の提出を強制すると、労働の場面では問題になることがあります。反省の意思を書かせる性質のものだからです。
会社として必要なのは事実の記録と指導の証跡で、そこは報告書と記録で残せます。
指導した記録は残しておく
始末書を取ったかどうかにかかわらず、指導した記録は残します。
いつ、誰が、何について指導したかを書いておきます。そのうえで、本人の署名をもらうと、伝えたことが示せます。
繰り返し起きている場合は、指導の経過が残っていることが判断の材料になります。
運送業の誓約書でつまずきやすいところ
運送業の誓約書は、署名を受けたところで止まることが多くあります。その後の運用まで組み込めているかどうかで、差が出ます。
- 1 文面を作る 就業規則と突き合わせ
- 2 説明する 入社の手続きの中で
- 3 署名を受ける 控えを本人へ
- 4 運用で使う 点呼と指導監督で
- 5 年1回見直す 内容と在職者の分
3つ目までは多くの事業者が行っています。一方で、4つ目と5つ目まで組み込めている事業者は多くありません。
まとめて渡して署名だけを受けない
入社の日に書類を積み上げて渡すと、本人は読まずに署名します。その状態で取った誓約書は、約束としては弱いものになります。
誓約書だけは別に扱い、説明の時間を取る形にします。そのうえで、他の書類は後日に回す方法もあります。
1日で全部を終わらせようとすると、どれも薄くなります。
在職者から取り直すかを決める
誓約書の内容を変えたとき、新しく入る人だけに新しい様式を使うと、在職者との間で内容が違う状態になります。
内容を変えたら在職者の分をどうするかまで決めておきます。
就業規則の改定と一緒に見る
就業規則を改定したとき、誓約書の内容が古いままになることがあります。規則で認めていることを、誓約書で禁じているといった食い違いが起きます。
そのため、規則の改定と誓約書の見直しを同じ機会に行います。そのうえで、変えた箇所を一覧にしておくと、説明のときに使えます。
食い違いがあると、どちらを守ればよいか分かりません。
運送業の誓約書の保存のしかた
運送業の誓約書には、法令が定めた保存期間がありません。そのため、社内で年数を決めて運用する形になります。
秘密保持誓約書は、退職後も効力が続くため長めに残します。一方で、期限を決めずに持ち続けるのは、個人情報の扱いとして望ましくありません。
人ごとにまとめて保管する
誓約書は、人ごとにまとめておくと探しやすくなります。乗務員台帳や健康診断個人票と同じフォルダに入れる形です。
そのうえで、在職者と退職者でファイルを分けます。混ざっていると、処分の判断がつきにくくなります。
退職した年月を記録しておくと、期限が計算できます。
個人情報として扱う
誓約書には、氏名と署名、場合によっては住所が入ります。個人情報にあたるため、保管の場所とアクセスできる人を決めておきます。
施錠できる場所に置き、担当者以外は開けない形が基本になります。そのうえで、電子で持つ場合はアクセスの権限を設定します。
誰でも見られる共有フォルダに置くのは避けます。
退職時の扱いを決めておく
退職するとき、秘密保持について改めて確認する事業者もあります。在職中に取った誓約書とは別に、退職時の誓約書を取る形です。
そのうえで、貸与していた物の返却も同じ場面で確認します。書類、カード、鍵、制服といったものが対象になります。
退職の手続きに組み込んでおくと、抜けが起きません。
運送業の誓約書を運用に落とす
運送業の誓約書は、署名を受けただけでは動きません。点呼と指導監督の場面で使うことで、約束が生きた状態になります。
- 入社時説明して署名を受ける
- 点呼健康の申告として動く
- 指導監督年1回内容を振り返る
3つのうち、いちばん動きやすいのが点呼です。毎日の場面なので、誓約した内容がそのまま行動になります。
点呼の申告と結びつける
誓約書に「体調不良や服薬を申告する」と書いてあるなら、点呼のときに実際に申告する場を作ります。
点呼記録の様式に申告の欄を設けておくと、確認が形になります。そのうえで、申告した内容にどう対応したかも残します。
書いた約束と日々の動きがつながると、誓約書が形骸化しません。
年1回の指導で振り返る
指導監督の年間計画に、誓約書の内容を振り返る回を入れておきます。入社時に説明しただけだと、時間が経つにつれて意識が薄れます。
そのうえで、その年に問題になった場面があれば、そこを厚く扱います。一般論として話すより、実際に起きたことに触れるほうが伝わります。
振り返った記録は、指導監督の記録として残します。
内容を変えたら取り直すかを決める
誓約書の内容を変えたとき、在職者から取り直すかを決めます。新しい項目を足した場合は、取り直すほうが整合します。
一方で、表現を直しただけであれば、次の見直しまで待つ判断もあります。そのうえで、判断した理由を記録に残しておきます。
決めていないと、人によって持っている内容が違う状態になります。
様式は誓約書(運転者)テンプレート、秘密保持誓約書、始末書からダウンロードできます。
よくある質問
誓約書は必ず取らなければいけませんか。
法令で提出が定められた書類ではありません。運転という業務の性質から、守ってほしいことを本人と確認する目的で取っている事業者が多くあります。取る場合は、内容を読んでもらったうえで署名を受ける形にすると意味を持ちます。
始末書の提出を命じることはできますか。
本人の反省を文章にしてもらうものなので、強制になじまない性格があります。事実の報告を求める報告書と、反省を述べる始末書を分けて考える形が扱いやすくなります。事実の確認は報告書で行い、始末書は本人の意思で書いてもらう運用が広く使われています。
秘密保持誓約書は退職のときにも取りますか。
入社時と退職時の両方で取る形が広く使われています。入社時は在職中の取り扱いについて、退職時は退職後の取り扱いについて確認する内容になります。荷主の情報を扱う運送業では、退職時の確認が特に意味を持ちます。