運送業の点呼の実施要領|社内で決めておくこと
公開 2026年9月3日
目次8項目
- 1運送業の点呼の実施要領とは何を決める文書か
- 法令の定めと社内の決めごとを分けて書く
- 巡回指導で説明の資料になる
- 担当が代わっても続く形にする
- 2運送業の点呼の実施要領に書く項目
- 確認の項目の順序を固定する
- 実施の場所を分けて書く
- 二段構えにして現場に置く
- 3運送業の点呼を誰が行うかを決めておく
- 時間帯ごとの担当を表にする
- 補助者に任せる上限を書く
- 判断が必要な場面を挙げておく
- 4運送業の点呼の方法を決めておく
- 使える条件を並べて書く
- 導入している方法だけを書く
- 制度の見直しを年に1回見る
- 5運送業の点呼記録の取り方と保存を決めておく
- 記録の様式を1つに決める
- 書き漏れの確認を日課にする
- 保存の場所を書いておく
- 6運送業の点呼で異常があったときの扱いを決めておく
- 代替の運行を決めておく
- 記録に残すことを決めておく
- 本人への伝え方を決めておく
- 7運送業の点呼の実施要領でつまずきやすいところ
- 補助者の割合が上限を超えていないか数える
- 早朝と深夜の点呼を見る
- 要領を直すか運用を直すかを決める
- 8運送業の点呼の実施要領を現場に置いて回す
- 補助者への教育に使う
- 見直した版を分かるようにする
- 実績と突き合わせる
点呼は毎日行う作業ですが、担当する人によってやり方が少しずつ違ってきます。ある人は健康状態を細かく聞き、別の人は形だけで済ませる。この差が積み重なると、記録は残っているのに実態が伴わない状態になります。
一般には、確認の順序と記録の取り方を文書にして、点呼の場所に置いておきます。そうしておくと、誰が担当しても同じ点呼になります。
とはいえ、法令の条文をそのまま写しただけの文書だと、現場では使われません。
ポイントはここです。運送業の点呼の実施要領は、担当が代わっても同じ点呼になるようにするための文書です。
ここでは、何を決める文書なのか、書く項目、担当と方法の決め方、そして現場に置いて回すところまでを順に整理します。
運送業の点呼の実施要領とは何を決める文書か
運送業の点呼の実施要領は、点呼のやり方を社内で決めた文書です。法令が求めている確認の項目に加えて、自社でどう回すかを書きます。
- 誰が運行管理者と補助者
- どう対面か例外の方法か
- 何を確認する項目と記録
3つのうち、社内で決める余地がいちばん大きいのは1つ目の「誰が」です。法令は運行管理者が行うことを原則としていますが、時間帯ごとに誰が担当するかは事業者が決めることになります。
そのため、早朝と深夜の担当を決めていないと、その時間帯だけ点呼が薄くなります。
法令の定めと社内の決めごとを分けて書く
実施要領を書くとき、法令の定めと社内の決めごとを混ぜると読みにくくなります。どこまでが守らなければならないもので、どこからが自社の方針なのかが分からなくなるためです。
条文の写しを並べるより、確認する項目を自社の言葉で書くほうが現場では使われます。そのうえで、根拠になる条文を欄外に添えておくと、後から確かめられます。
法令が改正されたときも、書き分けてあれば直す範囲がすぐに分かります。
巡回指導で説明の資料になる
適正化事業実施機関の巡回指導では、点呼の実施状況が確認されます。記録簿だけを見せるより、実施要領とあわせて示すほうが説明が通りやすくなります。
要領と記録を対で出せると、確認のやり取りが短く済みます。
担当が代わっても続く形にする
点呼のやり方が担当者の頭の中にあるだけだと、その人が辞めた時点で失われます。新しく入った人は、前任者を見て覚えるところから始めることになります。
文書があれば、教える側の負担も減ります。そのうえで、実際にやってみせながら渡すと、早く独り立ちできます。
引き継ぎのたびに少しずつ変わっていく状態を防げます。
運送業の点呼の実施要領に書く項目
運送業の点呼の実施要領には、体制・方法・確認の項目・記録・異常時の扱いを書きます。どの順で書くかは自由ですが、体制と方法を先に置くと読みやすくなります。
- 1 実施の体制 誰が行うか
- 2 実施の方法 対面と例外
- 3 乗務前 確認する項目
- 4 乗務後 報告を受ける項目
- 5 記録 様式と保存
- 6 異常時 判断と連絡
体制と方法が決まっていないと、確認の項目だけを並べても運用できません。逆に、この2つが決まっていれば、あとは項目を書き出す作業になります。
| 項目 | 決めること | 書くときの目安 |
|---|---|---|
| 実施の体制 | 運行管理者と補助者の分担 | 時間帯ごとに書く |
| 実施の場所 | 点呼を行う場所 | 営業所と車庫を分けて |
| 実施の方法 | 対面と例外の使い分け | 使える条件を並べる |
| 確認の項目 | 乗務前後に見ること | 順序を固定する |
| 記録の様式 | 何に書くか | 保存の年数も |
| 異常時の扱い | 乗務させない判断 | 誰が決めるか |
| 教育 | 補助者への指導 | 年に1回の頻度 |
右の列は、書くときの分量の目安です。細かく書くほど良いわけではなく、現場で読める長さに収めるほうが使われます。
確認の項目の順序を固定する
乗務前に確認する項目には、酒気帯びの有無、疾病や疲労の状況、日常点検の実施、免許証の携行などがあります。
順序を固定しておくと、慣れてきても抜けが出にくくなります。そのうえで、記録簿の欄も同じ順に並べておくと、書きながら確認できます。
順序がばらばらだと、記録を後から見返すときにも読みにくくなります。
実施の場所を分けて書く
点呼を行う場所は、営業所と車庫で条件が変わることがあります。車庫から直接出発する運行では、そこでどう点呼を行うかを決めておきます。
場所ごとに書いておくと、現場で判断に迷う場面が減ります。
二段構えにして現場に置く
実施要領そのものは、条文や例外の扱いを含めると分量が増えます。全部を点呼の場所に置くと、忙しい時間帯には開かれません。
確認の項目だけを1枚にまとめて掲示し、詳しい定めは別冊にする形が実務的です。そのうえで、別冊は同じ場所の棚に置いておきます。
日々使うものと、迷ったときに開くものを分けると、両方が生きます。
運送業の点呼を誰が行うかを決めておく
運送業の点呼は、運行管理者が行うことが原則です。とはいえ、24時間の運行がある事業者では、運行管理者だけでは回りません。
そのため、点呼補助者を選任して分担する形が一般的です。
運行管理者
- 点呼の原則の担い手
- 乗務の可否を判断する
- 資格が必要
- 営業所ごとに選任
点呼補助者
- 運行管理者を補助する
- 判断は運行管理者へつなぐ
- 講習の受講が要る
- 任せられる割合に上限
補助者に任せられるのは、確認の作業と記録までです。乗務させるかどうかの判断は、運行管理者が行う形になります。
時間帯ごとの担当を表にする
誰がいつ点呼を行うかは、表にすると分かりやすくなります。早朝、日中、夕方、深夜。それぞれの時間帯に担当を割り当てます。
割り当てのないまま運用していると、その時間帯だけ形式的な点呼になりがちです。そのため、休日と繁忙期の扱いも書いておくと、抜けが起きません。
表は要領の別紙にしておくと、人の交代のたびに本体を直さずに済みます。
補助者に任せる上限を書く
点呼を補助者に行わせる割合には、上限が定められています。運行管理者が行う点呼が一定の割合を下回らないようにする趣旨です。
上限を要領に書いておくと、担当を組むときの目安になります。そのうえで、記録から実際の割合を数える手順まで決めておくと確実です。
割合の確認をしていないと、気づかないうちに超えていることがあります。
判断が必要な場面を挙げておく
補助者が迷いやすいのは、乗務させるかどうかの判断が要る場面です。少し体調が悪そうだ、いつもより顔色が悪い、といった状況が該当します。
判断が必要な場面をあらかじめ挙げておくと、その場で迷いません。
運送業の点呼の方法を決めておく
運送業の点呼は、対面で行うことが原則になっています。一方で、遠隔地からの出発や、機器を使った方法など、例外的な形も認められています。
自社でどの方法を使うのかを決めて、要領に書いておきます。
下の3つは機器や設備の要件があるため、導入していない事業者では選べません。
使える条件を並べて書く
対面でない方法を使うときは、どういう場合に使えるかを並べて書きます。運行の途中で営業所に戻れない、車庫が離れている、といった条件です。
条件を書かずに「対面によらない方法も可」とだけ書くと、判断が人によって変わります。そのうえで、使ったときは記録に方法を残す形にしておきます。
後から実施の状況を確認するとき、方法の内訳が分かります。
導入している方法だけを書く
要領に方法をすべて並べると、実際には使えないものまで書かれた文書になります。現場が読んだときに、どれを使えばよいか分かりません。
自社で導入している方法だけを書き、他は書かない形が実務的です。逆に、新しく導入したときは、その時点で追記します。
書いてある方法と使える方法が一致していると、迷いません。
制度の見直しを年に1回見る
点呼の方法は、制度の見直しで広がってきました。遠隔点呼や業務後自動点呼のように、新しく認められた形もあります。
年に1回、国の案内を見て変化があったかを確認する流れにしておくと取り残されません。そのうえで、自社に取り入れるかどうかを判断します。
導入すれば必ず楽になるとは限らないため、費用と効果を見比べます。
運送業の点呼記録の取り方と保存を決めておく
運送業の点呼記録は、行った内容を残す書類です。確認した項目と結果、実施者、方法、日時を書きます。
記録の保存期間は、書類によって違います。
年数が違うため、まとめて処分すると残すべきものまで消えます。そのため、書類ごとに保管の場所を分けておくと扱いやすくなります。
記録の様式を1つに決める
点呼記録の様式は、営業所ごとに違うものを使っていると集計ができません。1つに決めて、全営業所で同じものを使う形にします。
様式には、確認の項目を要領と同じ順で並べておきます。そのうえで、実施者と方法を書く欄を設けると、後から内訳が数えられます。
紙で運用する場合も、電子で運用する場合も、項目は同じにしておきます。
書き漏れの確認を日課にする
点呼記録の書き漏れは、その日のうちなら覚えていることが多いものです。時間が経つと、何を確認したか分からなくなります。
書き漏れは翌日なら埋められるので、確認を日課にしておきます。
保存の場所を書いておく
保存する場所を要領に書いておくと、担当が代わっても探せます。営業所の書庫なのか、事務所のキャビネットなのかを具体的に書きます。
電子で保存する場合は、フォルダの構成と名前の付け方まで決めておきます。そのうえで、誰がアクセスできるかも書いておくと、扱いが揺れません。
処分する時期も同じ場所に書いておくと、溜まり続ける状態を避けられます。
運送業の点呼で異常があったときの扱いを決めておく
運送業の点呼で異常が見つかったとき、どうするかを決めておきます。その場で判断できないと、点呼が形だけになるためです。
判断の順序を要領に書いておくと、補助者でも対応できます。
- 酒気を帯びているか はい乗務させない いいえ次へ
- 疾病や疲労で運転できない状態か はい乗務させない いいえ次へ
- 車両に不具合があるか はい整備を確認してから いいえ次へ
- 判断に迷うか はい運行管理者へつなぐ いいえ乗務させる
迷ったときにつなぐ先を決めておくと、その場で止まらない
迷う場面のつなぎ先を決めておくと、補助者でも動けます。
代替の運行を決めておく
乗務させないと判断したとき、その運行をどうするかが問題になります。代わりの運転者を立てるのか、荷主に連絡して時間をずらすのか。
決めておかないと、判断する人が乗務させる方向に流れやすくなります。そのため、代替の手順まで書いておくことが、判断を支えます。
荷主への連絡の文面も用意しておくと、その場で動けます。
記録に残すことを決めておく
乗務させなかった場合も、点呼記録には残します。確認した内容と、乗務させなかった理由、代替の措置を書きます。
記録が無いと、後から見たときに点呼を行っていないように見えます。そのうえで、同じ運転者に繰り返し起きている場合は、健康の管理につなげます。
記録は、責めるためではなく次に活かすために残します。
本人への伝え方を決めておく
乗務させないと伝えるのは、伝える側にも負担があります。その日の収入に関わる場面もあるためです。
会社の決めごととして伝える形にしておくと、個人の判断に見えません。そのうえで、次にどうすればよいかを一緒に伝えます。
行き止まりにせず、代替や休養の案内まで示すと受け入れられやすくなります。
運送業の点呼の実施要領でつまずきやすいところ
運送業の点呼の実施要領は、作った後に実態とずれていきます。人の交代や運行の変化があっても、文書は自動では変わらないためです。
ずれに気づくには、記録を集計して要領と突き合わせる作業が要ります。
- 1 要領を作る 体制と方法を決める
- 2 現場に配る 点呼の場所に置く
- 3 記録を集計 実施者と方法を数える
- 4 差を見る 要領との違いを拾う
- 5 直す 要領か運用のどちらかを
集計といっても、月に1回ざっと数えるだけで足ります。実施者ごとの件数と、方法ごとの件数を出すと、要領との差が見えます。
補助者の割合が上限を超えていないか数える
補助者が行った点呼の割合は、集計しないと分かりません。繁忙期に運行管理者が現場に出ていると、知らないうちに割合が上がります。
月ごとに数えて、上限に近づいていないかを見ます。そのうえで、超えそうであれば担当の割り当てを組み替えます。
数えていないと、指摘を受けてはじめて気づくことになります。
早朝と深夜の点呼を見る
点呼が薄くなりやすいのは、早朝と深夜の時間帯です。担当が1人しかいない、他の業務と重なっている、といった事情があります。
時間帯を絞って見ると、体制の穴が見つかります。
要領を直すか運用を直すかを決める
要領と実態にずれがあったとき、どちらを直すかを決めます。実態のほうが合理的であれば、要領を直します。
一方で、法令の求める水準を下回っているなら、運用を直すことになります。そのうえで、直した内容を現場へ戻します。
ずれたまま放置すると、文書が信用されなくなります。
運送業の点呼の実施要領を現場に置いて回す
運送業の点呼の実施要領は、置き場所で使われ方が変わります。事務所のファイルに綴じられていると、点呼の場面では開かれません。
1枚と別冊に分けて、点呼の場所に置く形が実務的です。
- 1枚点呼の場所に置く
- 別冊詳しい定めを置く
- 年1回見直して版を上げる
1枚のほうには、確認の項目と、迷ったときのつなぎ先だけを書きます。別冊には、方法の条件、記録の扱い、異常時の対応を入れます。
年に1回見直すときは、両方を一緒に確認します。片方だけ直すと、記載が食い違います。
補助者への教育に使う
補助者を新しく置くときは、この要領を使って教えます。実際の点呼を見せながら、1枚の項目を順に説明する形が分かりやすくなります。
教育を行った記録も残しておきます。そのうえで、年に1回は既存の補助者にも同じ内容を確認します。
慣れてくると、自己流になりやすい部分です。
見直した版を分かるようにする
要領に版数と改訂日を入れておくと、どれが最新かが分かります。古い版が現場に残っていると、担当によって違う運用になります。
改訂したときは、古い版を回収します。そのうえで、変えた箇所を伝えると、読み直す負担が減ります。
改訂の履歴を1枚にまとめておくと、経緯も追えます。
実績と突き合わせる
年に1回の見直しでは、記録の集計と要領を並べて見ます。実施者の内訳、方法の内訳、乗務させなかった件数。
数字が並ぶと、どこを直すかが判断できます。そのうえで、直した内容を次の年の目標につなげます。
見直しの結果を残しておくと、次の年の材料になります。
様式は点呼の実施要領テンプレートからダウンロードできます。記録は点呼記録簿にまとめています。
よくある質問
点呼の実施要領は法令で作成が決まっていますか。
実施要領という名前の文書を直接定めた規定はありません。点呼そのものは輸送安全規則で義務づけられており、誰がどの方法で行うかを社内で決めておくと運用がそろいます。巡回指導で運用の状況を説明する資料としても使えます。
運行管理者が不在のときはどうしますか。
点呼補助者に任せられる範囲を、あらかじめ決めておく形になります。任せられる割合には上限があるため、要領に上限と交代の方法を書いておくと運用が崩れません。判断が必要な場面は運行管理者へつなぐ経路も決めておきます。
要領は何ページくらいにするとよいですか。
現場で読まれる分量に収める形が扱いやすくなります。点呼の場所に置く分は1枚に、詳しい定めは別冊にする二段構えにしている事業者があります。分厚い1冊にすると、結局読まれません。