標準的な運賃の使い方|自社原価と並べて交渉する

公開 2026年8月21日

目次7項目

「標準的な運賃が告示された」と聞いて資料を開き、そのまま閉じた人は多いはずです。表は見られるが、どう使えばいいのか分からない。

理由は、この数字の性格が誤解されやすいからです。まずそこから整理します。

これは価格表ではない

標準的な運賃は、そのまま請求できる価格表ではありません。運賃を強制する制度でもありません。

位置づけは「適正な原価と適正な利潤を賄うために参考となる運賃」です。つまり、交渉のときに使う物差しです。

だから「告示されているのだから払ってください」という言い方は通りません。相手に「うちには当てはまらない」と返されて終わります。

効く使い方は1つ

自社の原価と並べて出す。 これだけです。

  • 標準的な運賃 … 世の中の物差し
  • 自社の原価 … この仕事にかかっている実額
  • 現行運賃 … いま受け取っている金額

3つを並べると、話が「値上げしてほしい」から「この運行は原価を下回っている」に変わります。主張ではなく事実の提示になるので、相手も社内で説明できます。

原価を先に出す

順序が逆になっている事業者が多くあります。標準的な運賃を見てから「うちは安すぎる」と思う。しかし自社の原価を出していないと、いくら足りないのかが言えません。

原価の出し方は運送原価計算表に整理しています。要点は1つ、人件費を拘束時間で計算することです。荷待ちの2時間も原価です。労働時間だけで計算すると、原価が実際より小さく出て、交渉の根拠が弱くなります。

運賃と料金を分けて考える

標準的な運賃の考え方では、運送そのものの対価(運賃)と、附帯業務の対価(料金)が区別されています。

区分中身
運賃運送そのもの
附帯業務の料金荷役・仕分け・検品・横持ち
待機時間料荷主都合の待機
実費高速道路料金など

この区別を先に書面にしておくのが要点です。 運送引受書で分けて書いておけば、後から「荷役は運賃に含まれているはず」という話にならずに済みます。

待機時間料は記録がすべて

待機に対価を求めるなら、待たされた事実の記録が要ります。

荷待ち時間記録簿を3か月ためると、荷主別の平均待機時間が出ます。「御社は8月に12回、平均1時間47分」と言えるかどうかで、交渉の重さが変わります。

記録がないまま「いつも待たされる」と言っても、相手には検証できません。数字がないと、感情の話になります。

交渉に持っていくもの

  1. 自社の原価(1運行あたり・1kmあたり)
  2. 現行運賃との差額
  3. 標準的な運賃との比較
  4. 待機・附帯業務の実績(回数と時間)

この4点セットにすると、相手が持ち帰って検討できる形になります。口頭だけで終わらせず、1枚の紙にして渡してください。

断る判断も原価から出る

原価が分かると、受けない判断もできます。

「この運賃では1運行あたり3,000円の赤字。量があっても続けるほど損をする」と数字で言えれば、社内の合意も取りやすくなります。感覚で「安い気がする」と言っている間は、断る決断ができません。

よくある質問

標準的な運賃はどこで見られますか。

国土交通省が告示・公表しています。距離制・時間制の区分や地方運輸局ごとの表があります。最新版は国土交通省の公表資料でご確認ください。

荷主が応じない場合はどうなりますか。

運賃は当事者間の契約で決まるため、告示があっても強制はできません。ただし法令違反の原因が荷主にある場合の仕組み(荷主への働きかけ等)は別に用意されています。

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