事故報告が必要な事故とは|報告書と速報の切り分け
公開 2026年8月21日/更新 2026年10月3日
目次11項目
事故が起きたときに作る記録は、名前が似ていて役割が違います。「事故報告書を出した」と言うとき、それが国への報告なのか、社内の記録なのかで、意味がまったく変わってきます。
一般に、運送事業者が事故のあとに扱う記録は3つに分かれます。
- 速報電話などで24時間以内
- 報告書国土交通大臣あて30日以内
- 事故の記録社内に3年保存
このうち速報と報告書は、自動車事故報告規則で対象になる事故が決まっています。一方で、社内の事故の記録(貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条の2)は、報告対象の事故に加えて、道路交通法上の交通事故(人の死傷または物の損壊)も対象とされています。
社内の記録は、報告の対象にならない事故についても残すものです。ここが混ざると、「報告対象ではないから何も書かなくてよい」という運用になります。
事故報告の3つの役割とは
事故報告の3つの役割は、それぞれ見ている相手が違います。速報と報告書は、国に対して事実を伝えるためのものです。社内の記録は、自社が同じことを繰り返さないためのものです。
| 記録 | 出す先 | 期限 | 対象 |
|---|---|---|---|
| 速報 | 運輸監理部長または運輸支局長(電話など) | 24時間以内にできる限り速やかに | 報告対象のうち重いもの |
| 事故報告書 | 国土交通大臣(運輸支局などを経由、3通) | 事故の日から30日以内 | 報告対象事故 |
| 事故の記録 | 営業所(社内) | 事故の発生後30日以内に作成 | 交通事故と報告対象事故 |
社内の記録は、貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条の2で、営業所での3年の保存が求められています。作成の時期は、国土交通省の通達(輸送安全規則の解釈及び運用について)で事故の発生後30日以内とされています。日報や点呼記録が1年であるのに対して、事故の記録は3年です。保存期間の整理は書類の保存期間にまとめています。
3年という長さには理由があります。事故は、繰り返しの傾向を見ないと原因が見えないためです。1年で処分してしまうと、「同じ交差点で3年に2回」という形が見えなくなります。
実務では、この3つを別々のファイルで持っている事業所と、ひとつにまとめている事業所があります。まとめておくやり方には利点があります。ひとつの事故について、国に出した内容と社内に残した内容が並んで見えるためです。あとから照会があったときに、探す場所が1か所で済みます。
分けて持つ場合は、社内の記録の側に「報告書を出したかどうか」を書いておくと、対応の抜けに気づけるようになります。
どちらのやり方でも構いません。決めておくことが大事な部分になります。決まっていないと、担当者が替わったときに、前任者がどちらで運用していたかを探すところから始まります。
事故報告が必要な事故とは|報告対象の類型
事故報告が必要な事故とは、自動車事故報告規則で類型が定められた事故のことです。よくある誤解が、「けががなければ報告は要らない」という理解です。
実際には、人身の有無だけで決まる仕組みではありません。車両の状態や、事故が起きた状況によって対象になるものがあります。
トラックにかかわる主な類型は、同規則第2条で次のように定められています。
- 転覆・転落・火災(積載物品の火災を含む)、鉄道車両との衝突・接触
- 10台以上の自動車の衝突・接触
- 死者または重傷者が出た事故
- 10人以上の負傷者が出た事故
- 危険物・火薬類・高圧ガスなどの積載物が飛散・漏えいした事故、積んだコンテナの落下
- 酒気帯び運転・無免許運転・無資格運転・麻薬等運転を伴う事故
- 運転者の疾病により、事業用自動車の運行を続けられなくなったもの
- 救護義務違反(いわゆるひき逃げ)があったもの
- 装置の故障で運行できなくなったもの、故障による車輪の脱落・被牽引車の分離
- 鉄道を3時間以上止めたもの、高速道路や自動車専用道路を3時間以上通行止めにしたもの
酒気帯び運転などを伴う事故と、運転者の疾病の類型は、けがの有無より状態が問題になる類型です。酒気帯び運転を伴う事故は、物損だけであっても対象になります。疾病の類型は、衝突が無くても対象になります。そのため、物損だから報告不要という判断は成り立ちません。
車輪の脱落も同じです。故障によって走行中に脱落した場合、けが人がいなくても対象になります。
- 転覆・転落・火災・踏切のいずれかか はい報告対象 いいえ次へ
- 死者・重傷者が出たか はい報告対象 いいえ次へ
- 車輪の脱落や装置の故障があったか はい報告対象 いいえ次へ
- 酒気帯び・無免許・疾病の運転が判明したか はい報告対象 いいえ運輸支局に確認
迷ったら「対象外と決めない」
類型は細かく、改正もあります。自社の事故が当てはまるかどうかは、所管の運輸支局に確認しておくのが確実です。
事故の速報が必要なのはどんなときか
事故の速報が必要なのは、報告対象事故のうち、とくに重いものに限られます(自動車事故報告規則第4条)。トラックでは、2人以上の死者、5人以上の重傷者、10人以上の負傷者が出た事故と、転覆や衝突などにともなって危険物などが飛散・漏えいした事故が該当します。酒気帯び運転を伴う事故も含まれます。期限は24時間以内で、できる限り速やかに知らせる形です。
ポイントはここです。速報を出したからといって、報告書が不要になるわけではありません。速報は「まず知らせる」もので、報告書は「詳細を出す」ものです。速報を出した事故は、後日あらためて報告書を提出します。
24時間という期限は、事故対応の真っ最中に来ます。事故の連絡を受けた時点で、速報の要否を判断できる人が社内にいるかどうかが、実務では効いてきます。運行管理者が不在の夜間に事故が起きた場合、誰が判断するのかを決めておくと、当日に慌てずに済みます。
決めておくと楽になるのは、次の3つです。
ひとつめは、第一報を受ける電話番号です。運転者が誰にかけるのかが決まっていないと、連絡先を探す時間がそのまま遅れになります。
ふたつめは、判断する人の順番です。運行管理者、補助者、経営者という順で、つながった人が判断する形にしておくと止まりません。
みっつめは、連絡先の控えです。所管の運輸支局の電話番号を、事務所の壁と携帯の両方に置いておくと、夜間でも動けます。
速報は、書式が決まった書類を出す手続きではありません。電話などの方法で、事実を伝えるものです。そのため、伝える内容をあらかじめメモの形にしておくと、慌てずに済みます。発生日時、場所、車両番号、運転者名、被害の状況。この5つがそろっていれば、最初の連絡としては足ります。
事故報告書の提出期限は30日以内
事故報告書は、事故があった日から30日以内に提出する書類になります。自動車事故報告規則第3条では、事故ごとに3通を、使用の本拠を管轄する運輸監理部長または運輸支局長を経由して、国土交通大臣に出すと定められています。救護義務違反の事故は、事業者が知った日から数えます。30日という期間は、事故処理と並行して進めることになります。修理の見積り、保険会社とのやり取り、相手方との対応が同時に動きます。そのため、事故の直後に事実を書き留めておく作業が効いてきます。
- 1 事故発生 その場で時刻・場所を記録
- 2 当日 速報の要否を判断
- 3 数日以内 事実関係を書き出す
- 4 30日以内 報告書を提出
- 5 以後3年 社内の記録として保存
書き留めておく事項は多くありません。発生日時、発生場所、車両、運転者、荷物、天候、道路の状況、相手方、被害の程度。この程度を事故報告書の様式に沿って埋めておくと、30日以内に提出する内容がそろいます。
記憶に頼ると、日時や場所が曖昧になります。曖昧な報告書は、保険や相手方とのやり取りでも足を引っ張ります。
事故報告が必要か迷ったときの判断順序
事故報告が必要か迷ったときの判断順序は、あらかじめ決めておくと動きやすくなります。実務では、次の順で見ていくやり方が広く使われています。
- けが人がいるか、いないかを確認する
- 車両の状態を確認する(転覆・火災・車輪の脱落など)
- 運転者の状態を確認する(酒気帯び・疾病など)
- どれかに当てはまるなら、運輸支局に電話で確認する
4つ目を入れておくのがコツです。社内だけで「対象外」と判断してしまうと、あとで対象だったと分かったときに、期限を過ぎています。
迷った時点で運輸支局に聞いてしまうほうが、結果として手戻りが少なくなります。聞くこと自体が不利になる仕組みではありません。
社内の事故記録に残す項目
社内の事故記録に残す項目は、報告対象かどうかにかかわらず必要になります。構内の接触、バックでの当て、荷崩れ。報告の対象にならない小さな事故ほど、件数が多くなります。
こうした事故は、ヒヤリハット報告と合わせて見ると傾向が出てきます。同じ場所、同じ時間帯、同じ作業で繰り返していることが、集めてはじめて分かります。
社内の記録に残しておく項目は、次のような形が扱いやすくなります。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 日時・場所 | 何時何分、どこで |
| 状況 | 何をしていたときか |
| 原因 | 直接の原因と、背景にあること |
| 対応 | その場で何をしたか |
| 再発防止 | 何を変えるか、いつまでに |
最後の欄が空のまま溜まっていく記録は、集めるだけの記録になります。再発防止の欄に日付が入っているかどうかで、その記録が回っているかどうかが分かります。
原因の欄は、2段で書いておくと使える記録になります。直接の原因は「前方不注視」のような形で書かれることが多くなっています。これだけだと、対策が「気をつける」に落ちてしまいます。
背景にあることを1行足すと、変えられる部分が見えてきます。到着時刻が詰まっていた、その区間を走るのが初めてだった、前日の休息が短かった。こうした背景は、配車や教育の側で手を入れられます。
書くのに時間はかかりません。事故のあとの聞き取りで、「そのとき何が気になっていましたか」と1つ聞いておくだけで足ります。小さな事故ほど、この1行が効いてきます。件数が多いぶん、傾向が出やすいためです。
事故報告書の様式をそろえておく
事故報告書の様式は、事故が起きる前にそろえておくのが良いです。事故のあとに様式を探すと、書く内容が人によって変わります。同じ事故でも、書いた人によって残る情報が違うという状態になります。
一般的には、次の3つを事務所に置いておく形が使われています。
- 国への報告書の様式(提出用)
- 社内の事故記録の様式(保存用)
- 速報で伝える内容のメモ
このうち提出用の様式は、運輸支局や国土交通省が示すものが最新版になります。当サイトが配布しているものは、社内で下書き・控えを作るための様式です。提出そのものは、最新の公式様式で行ってください。
下書きを作る意味は、事故の直後に書ける形を用意しておくところにあります。提出用の様式は、埋める前に確認したい項目が多く、その場では書きにくいものになっています。そのため、先に事実だけを書き留めておき、あとで提出用に転記する。この2段構えにしておくと、30日の期限に追われずに済みます。
事故報告のあとに動く記録
事故報告のあとには、報告以外にもいくつかの記録が動きます。事故を起こした運転者には、特別な指導と適性診断が必要になる場合があります。指導を行ったら乗務員教育記録に残します。
適性診断の受診状況は適性診断受診管理表で管理しておくと、期限の取りこぼしが減ります。車両に損傷があった場合は、修理の記録が整備記録簿に入ります。
報告で終わる運用
- 報告書を出して完了
- 記録は書庫に入る
- 同じ事故が繰り返される
次につながる運用
- 報告書+社内の記録
- 指導と適性診断につなぐ
- 傾向を四半期で見返す
事故の記録を3年残すのは、書庫のためではありません。3年分をならべて見たときに、自社の弱いところが見えてきます。そこに手を入れられる形になっていると、記録が仕事の役に立ちます。
見返す間隔は、四半期に一度くらいが扱いやすい形になります。毎月だと件数が少なく、傾向として読めません。逆に、年に一度だと、思い出すところから始まって時間がかかります。
3か月分を並べて、場所・時間帯・作業の3つで数えてみる。それだけで、次に何を教育で扱うかが決まってきます。
安全会議の議題が毎回同じになっている事業所は、この見返しが入っていない場合が多くなっています。記録を材料にすると、議題は自然に変わっていきます。事故の記録は、集めることより、見返すところに手間をかけると生きてきます。
事故報告にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
事故報告の決まりは、ここ数年で対象となる事業者や類型が少しずつ広がっています。前の担当者が作った手順書を使っている場合は、次の表と見比べておくと安心です。
| 時期 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 2023年4月1日 | 運転者のいない特定自動運行(いわゆるレベル4)の制度開始にあわせ、特定自動運行保安員の酒気帯びや疾病も報告対象の類型に加わった | 令和5年国土交通省令第31号、自動車事故報告規則第2条 |
| 2024年4月1日 | トラック運転者の改善基準告示が改正施行。1日の拘束時間は原則13時間・最大15時間、休息期間は継続9時間を下回らない形に。時間外労働の上限(年960時間)も同日から | 令和4年厚生労働省告示第367号、労働基準法第140条 |
| 2025年4月1日 | 貨物軽自動車運送事業者にも、事故の記録(3年保存)や国土交通大臣への事故報告などの安全対策が求められる形になった | 令和6年国土交通省令第90号 |
事故報告そのものの期限(速報24時間・報告書30日)は変わっていません。変わったのは、報告する側の範囲です。軽貨物の協力会社に運送を任せている場合は、協力会社の側にも報告の手順があるかを確かめておくと、事故のあとの連絡が早くなります。
出典:
確認日は2026年10月3日です。自社の事故が報告対象になるか、提出の方法はどうするかは、所管の運輸支局(輸送部門)で確かめられます。
事故報告に出てくる用語
事故報告の書類には、条文の言葉がそのまま出てきます。意味を押さえておくと、類型の当てはめで迷いにくくなります。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 事故(報告対象) | 転覆・死傷・故障など、規則に列挙された類型に当たる自動車の事故 | 自動車事故報告規則第2条 |
| 重傷者 | 大腿・下腿の骨折、14日以上の入院かつ30日以上の治療を要する傷害などを受けた人 | 同規則第2条第3号、自動車損害賠償保障法施行令第5条第2号・第3号 |
| 速報 | 報告書とは別に、電話などで事故の概要を知らせること | 同規則第4条 |
| 交通事故 | 車両等の交通による人の死傷または物の損壊 | 道路交通法第72条第1項 |
| 事故の記録 | 事故の概要・原因・再発防止対策などを営業所に3年残す記録 | 貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条の2 |
| 第1当事者 | 事故の発生に最も大きな責任がある当事者 | 法令上の定義はない(輸送安全規則の解釈及び運用についての通達で運転者等台帳の扱いに使われる) |
事故報告の用語で迷いやすいのは「重傷者」です。けがの重さの感覚ではなく、入院日数と治療期間、骨折の部位で決まっています。診断書を受け取ったら、この基準と照らし合わせます。
事故報告と一緒に押さえておきたいこと
事故報告の様式は、社内の事故の記録にも使える
事故報告の様式(自動車事故報告規則の別記様式)は、社内の事故の記録に使ってもよいとされています。その場合は、相手方など事故の当事者の氏名を付け足します。発生場所は、地図に場所を示したものを添えれば足ります(輸送安全規則の解釈及び運用について、第9条の2関係)。報告対象の事故は1回の記入で報告と記録の両方がそろうため、二度書きの手間が減ります。
事故報告のあとに運転者等台帳も直す
事故報告や事故の記録を作ったら、運転者等台帳(輸送安全規則第9条の5)にも事故の日時・場所・概要を書き足す形が求められます。通達では、その運転者が第1当事者である場合が対象とされ、すぐに判断できないときは保留と書いておき、示談や保険の結果が出たら書き直す扱いです。台帳が古いままだと、特別な指導や適性診断の対象者を見落としやすくなります。
故障による事故報告は、整備の記録が添付書類になる
事故報告の類型のうち、装置の故障で運行できなくなったものと、故障による車輪の脱落は、報告書に書面と略図または写真を添えます(自動車事故報告規則第3条第2項)。書面には、車検の有効期間、使い始めてからの総走行距離、故障した部品を付けてからの走行距離、整備や改造の状況などを書きます。点検整備記録簿に走行距離まで残っていると、30日以内にそろえる作業がかなり楽になります。

よくある質問
重傷の定義は何ですか。
自動車事故報告規則第2条第3号で、自動車損害賠償保障法施行令第5条第2号・第3号の傷害を受けた人とされています。大腿・下腿の骨折、上腕・前腕の骨折、14日以上の入院が要るけが、入院が要り医師の治療が30日以上かかるけがなどです。診断書の内容で判断が分かれる場合は、所管の運輸支局で確かめられます。
報告書は何通提出しますか。
自動車事故報告規則第3条で、事故ごとに3通を、使用の本拠を管轄する運輸監理部長または運輸支局長を経由して国土交通大臣に提出すると定められています。提出の方法は所管の運輸支局で確かめられます。