改善基準告示の例外|分割休息・2人乗務・フェリー
公開 2026年8月21日/更新 2026年10月3日
目次10項目
改善基準告示には、原則のほかに例外が用意されています。実務では、この例外を知っているかどうかで、受けられる仕事の幅が変わってきます。
一般に、改善基準告示は「1日の拘束時間」「休息期間」「運転時間」という3つの原則で語られることが多くなっています。とはいえ、実際の運行はその原則にきれいに収まらないことがあります。
休息を続けて取れない運行があります。2人で乗る運行があります。フェリーを使う運行があります。事故渋滞に巻き込まれることもあります。こうした場面のために、告示には別の扱いが定められています。
- 分割休息休息を続けて取れないとき
- 2人乗務車内に休息設備があるとき
- フェリー乗船時間がある運行
- 予期し得ない事象事故渋滞・災害・故障
例外を知らないままだと、2つの取りこぼしが起こります。ひとつは、本当は組める運行を断ってしまうことです。もうひとつは、認められないやり方で走ってしまうことです。どちらも避けられます。
この記事の時間数は、2024年4月1日から適用されている改正後の告示(トラック運転者)にもとづいています。自社の運行が当てはまるかどうかは、所管の労働基準監督署に確認しておくと安全です。
分割休息とは|休息を分けて与える特例
分割休息は、休息期間を続けて確保できないときに、分けて与えられる特例です。実務では、長距離の運行や、荷待ちが読めない運行で検討されることが多くなっています。
厚生労働省の資料では、業務の必要上、勤務終了後に継続9時間以上(宿泊を伴う長距離運送は8時間以上)の休息期間を与えることが難しい場合に、当分の間の特例として認めるとされています。決まりは次のとおりです。
- 1か月程度を限度とする一定期間の、全勤務回数の2分の1まで
- 分割した休息は、1回あたり継続3時間以上
- 2分割なら合計10時間以上、3分割なら合計12時間以上(3分割の日が続かないよう努める)
ポイントはここです。「細切れにすれば短くて済む」という仕組みではありません。分けるほど、合計は増える方向に設計されています。
続けて取る場合
- 1回で確保する
- 合計は原則どおり
- 記録は開始と終了の2点
分割して取る場合
- 1回あたりの下限がある
- 合計は原則より長く必要
- 記録は分割ごとに必要
ここを逆に理解している事業所があります。短くできる仕組みだと考えて運行を組むと、あとで拘束時間の計算が合わなくなります。
もうひとつ、分割休息を使える頻度にも、全勤務回数の2分の1までという上限が置かれています。日常的に使い続ける前提の仕組みではない、と理解しておくのが良いです。常態化している場合は、例外の使い方ではなく、運行の組み方そのものを見直す場面だという判断になります。
なぜこういう設計になっているのかを押さえておくと、迷いにくくなります。休息は、続けて取ることで回復につながるものだと考えられています。途中で起こされる休息は、同じ長さでも回復の度合いが下がります。だから、分けたときは合計を長めに求める形になっています。
記録の面では、分割ごとに開始と終了の時刻が要ります。「休息 6時間」とだけ書いた記録では、続けて取ったのか分けて取ったのかが読み取れません。分けた場合は、1回目が何時から何時まで、2回目が何時から何時までという形で残しておくのが良いです。
2人乗務で拘束時間を延長できる条件
2人乗務は、車内に身体を伸ばして休息できる設備がある場合に、最大拘束時間を延長できる扱いになります。設備の要件を満たすと、さらに延長できる枠も用意されています。
| 条件 | 最大拘束時間 |
|---|---|
| 身体を伸ばして休息できる設備がある | 20時間まで |
| 設備が車両内ベッドの基準を満たし、運行終了後に継続11時間以上の休息を与える | 24時間まで |
| 上の条件に加え、車両内ベッドで8時間以上の仮眠を与える | 28時間まで |
車両内ベッドの基準は、長さ198cm以上・幅80cm以上の連続した平面であることと、クッション材などで走行中の路面からの衝撃がやわらぐものであることとされています(厚生労働省「トラック運転者の改善基準告示」Q8)。
ここでよくある誤解が、「2人で乗れば延ばせる」という理解です。条件になっているのは人数ではなく、設備が要件を満たしているかどうかという部分です。座席を倒しただけでは足りない場合があります。
一般的には、寝台の寸法と、走行中の衝撃をやわらげる構造かどうかが確認されます。そのため、導入を検討する場合は、運行を組む前に車両の仕様を確認しておくと手戻りがなくなります。運行を先に組んでしまうと、車両が要件を満たしていないと分かった時点で、組み直しになります。
記録の面では、その運行に乗務員2名と使用車両が対応づけられていることが必要になります。日報が1人分しか残っていないと、あとから2人乗務だったことを説明できません。
車両を選ぶ段階で見ておく項目は、そう多くありません。
- 横になれる寝台があるか(座席を倒す構造だけでは足りない場合がある)
- 寝台が長さ198cm以上・幅80cm以上の連続した平面か
- クッション材などで走行中の衝撃がやわらぐ構造か
- 車検証や仕様書で、その設備を書面で示せるか
最後の1つが抜けやすい部分です。設備が実際にあっても、書面で示せないと説明に手間がかかります。そのため、新車を入れるときに仕様書の該当ページをコピーして車両ごとのファイルに綴じておく、というやり方が広く使われています。
フェリー乗船時間は休息期間になるのか
フェリー乗船時間は、原則として休息期間として扱われる時間になります。長距離の海上輸送を挟む運行では、この扱いを前提に行程が組まれるのが一般的です。
ただし、乗船時間のすべてがそのまま休息になるわけではありません。乗船時間の扱いと、下船後に必要となる休息の関係に決まりが置かれています。
厚生労働省の資料では、与えるべき休息期間から乗船中の休息期間を差し引けるとされています。ただし、差し引いたあとの休息期間は、下船時刻から勤務終了時刻までの時間の2分の1を下回れません(2人乗務を除く)。また、乗船時間が8時間(2人乗務は4時間、隔日勤務は20時間)を超える場合は、原則として下船時刻から次の勤務が始まる扱いです。
- 1 乗船 時刻を日報に記録
- 2 乗船中 原則は休息期間
- 3 下船 時刻を日報に記録
- 4 下船後 必要な休息を確保
ポイントはここです。乗船時間をどう数えるかで、その運行の拘束時間はまったく変わります。
記録の面では、運転日報に乗船と下船の時刻を書いておくことが前提になります。書いていないと、あとから「あの時間は休息だった」と説明する材料がありません。そのため、フェリーを使う運行が定期的にあるなら、日報の様式に乗船・下船の欄をあらかじめ設けておくと書き漏れが減ります。
もうひとつ見ておきたいのが、下船したあとの扱いです。乗船時間が長い運行では、下船後にどれだけの休息が必要になるかで、その日の行程が変わります。乗船時間だけを見て「休めたはず」と判断すると、下船後の運行が窮屈になります。行程を組むときは、乗船時間と下船後の休息をセットで見ておくのが良いです。
港での待機時間も、乗船前と下船後で扱いが分かれます。待機している時間は休息ではありませんので、その分は拘束時間に入ります。ここも日報に時刻で残しておくと、あとから追えるようになります。
予期し得ない事象とは|拘束時間から除ける時間
予期し得ない事象とは、運転中に起きた事故渋滞や災害など、事前に見込めなかった出来事のことです。2024年4月の改正で新しく設けられた扱いで、対応に要した時間を、1日の拘束時間、運転時間(2日平均)、連続運転時間の3つの計算から除くことができます。勤務終了後は、通常どおりの休息期間(継続11時間以上を基本とし、9時間を下回らない)を与えるものとされています。
対象になるのは、事故渋滞、災害、車両の故障など、事前に見込めなかった事象です。ただし、条件が2つ置かれています。
- 客観的な記録が残っていること(渋滞情報、修理の記録、警察や道路管理者の情報など)
- 運転日報に、事象の発生時刻・内容・対応した時間を記載していること
厚生労働省の資料では「客観的な記録が認められる場合に限り」とされています。日報への記載と客観的な資料は、片方ではなく両方そろえておくと説明しやすくなります。
記録が無いと、この扱いは使えません。「あの日は渋滞がひどかった」という記憶では、対応時間として認められません。
- 事前に見込めなかった事象か はい次へ いいえ対象外
- 客観的な資料があるか はい次へ いいえ対象外
- 日報に時刻と内容を書いたか はい除くことができる いいえ対象外
3つそろってはじめて使える
実務としては、日報の特記事項欄にその場で書く習慣があるかどうかで決まります。事務所に戻ってから思い出して書くと、時刻が曖昧になります。曖昧な記録は、客観的な資料と突き合わせたときに合わなくなります。スマートフォンで渋滞情報の画面を撮っておく、というやり方も広く使われています。
対象になるかどうかで迷いやすいのは、繰り返し起きる事象です。毎週のように混む区間の渋滞は、事前に見込めるものだと判断されやすくなります。同じ荷主で毎回発生する荷待ちも同じで、予期し得ない事象として扱うのは難しくなります。こうした「見込める遅れ」は、例外で処理するのではなく、行程の側に織り込んでおくのが本来の形です。
逆に、通行止め、玉突き事故、突発の車両故障、大雪や豪雨による通行規制は、対象として説明しやすい事象になります。判断に迷ったときは、その事象を配車の段階で見込めたかどうかで考えると整理しやすくなります。
改善基準告示の例外に必要な記録
改善基準告示の例外に必要な記録は、4つとも共通した形をしています。いずれも、記録が無ければ例外を主張できないという構造になっています。
| 例外 | 記録に必要なもの |
|---|---|
| 分割休息 | 休息の開始・終了時刻(分割ごとに) |
| 2人乗務 | 乗務員2名と、使用した車両 |
| フェリー | 乗船・下船の時刻 |
| 予期し得ない事象 | 事象の発生時刻・内容・客観的資料 |
書く場所は、そう多くありません。拘束時間管理表の備考欄と、運転日報の特記事項欄。この2か所です。この2か所を埋める習慣があるかどうかで、使える例外の幅が変わってきます。
監査や調査の場面では、原則からの外れ方を説明することになります。そのとき手元にあるのは記録だけです。
日報の様式を作るときは、この4つが書ける形にしておくと運用が楽になります。自由記述の欄がひとつあるだけだと、何を書けばよいかが人によって変わります。「乗船」「下船」「事象の発生」といった項目名を先に印字しておくと、書く内容がそろってきます。
紙で運用している場合も同じです。書く場所が決まっていれば、あとで束から探し出す手間が減ります。
改善基準告示の例外でよくある取り違え
改善基準告示の例外でよくある取り違えは、3つに整理できます。
ひとつめは、例外の適用を運転者の判断にまかせてしまうことです。分割休息にするか、2人乗務にするかは、運行を組む段階で決まっている必要があります。走り出してから現場で決めた形にすると、記録と行程が食い違います。
ふたつめは、記録を「あとでまとめて書く」運用にしてしまうことです。時刻の記録は、その場で書いたものだけが客観的な資料と一致します。まとめ書きは、突き合わせたときにどこかがずれやすくなります。
みっつめは、例外を一度使うと、そのやり方が既定になってしまうことです。分割休息が続いているなら、その運行は原則で組めない形になっているという合図です。例外は、続けて使うことを前提にした仕組みではありません。
使い方がうまくいく形
- 配車の段階で決める
- 記録はその場で書く
- 使った回数を見ている
つまずきやすい形
- 現場で判断させる
- あとでまとめて書く
- 常態化に気づかない
自社がどちらに近いかは、拘束時間管理表を1か月分ながめると見えてきます。備考欄が空のまま原則を超えている日があるなら、そこが最初に手を入れる部分になります。
改善基準告示の原則と例外の使い分け
改善基準告示の原則と例外の使い分けは、順序で考えると整理しやすくなります。まず原則で運行を組みます。原則に収まらない部分が出たときに、例外が当てはまるかを見ます。当てはまるなら、必要な記録を先に決めます。
この順序を逆にすると、例外を前提にした運行になります。そのうえ、例外を前提にすると、記録が足りなかったときに逃げ場がなくなります。
- 原則だけで組む断る仕事が増えやすい
- 原則+例外+記録受けられる幅が広がる
- 例外を前提に組む記録が欠けると成立しない
例外は、無理をするための抜け道ではありません。現場で実際に起きることを、制度の側で受け止めるための仕組みです。
知っていれば、断らなくてよい仕事を断らずに済みます。記録があれば、あとから説明できます。原則を押さえ、例外を知り、記録で裏づける。この3つがそろうと、運行の組み方に余裕が出てきます。
改善基準告示にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
改善基準告示は、2024年4月に約27年ぶりの大きな見直しが適用されました。例外の扱いもこのときに変わっているため、以前の資料で運行を組んでいる場合は、次の表と見比べておくと安心です。
| 時期 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 2022年12月 | トラック運転者の改善基準告示が改正された | 令和4年厚生労働省告示第367号 |
| 2024年4月1日 | 改正後の告示の適用開始。1年3,300時間・1か月284時間、1日13時間(最大15時間)、休息期間は継続11時間を基本に9時間を下回らない形に。予期し得ない事象の扱いが新設され、フェリー乗船時間は原則として休息期間に | 改善基準告示(厚生労働省のページ) |
| 2024年4月1日 | 自動車運転の業務にも時間外労働の上限(臨時的な場合でも年960時間)が適用 | 労働基準法第140条 |
| 2025年4月1日 | すべての荷主と物流事業者に、荷待ち時間・荷役等時間の短縮などの努力義務 | 物資の流通の効率化に関する法律 |
| 2026年4月1日 | 一定規模以上の特定荷主などに、中長期計画の作成・定期報告・物流統括管理者の選任が求められる形に | 同上 |
厚生労働省のページで確認できる範囲では、例外の中身は2024年4月の形のままです。変わってきているのは荷主の側の決まりです。荷待ちで分割休息に頼っている運行は、荷主との話し合いで原則の側に戻せる余地が広がっています。
出典:
確認日は2026年10月3日です。自社の運行に例外が使えるかどうかは、所管の労働基準監督署で確かめられます。
改善基準告示に出てくる用語
改善基準告示の例外は、用語の意味を取り違えると計算がずれます。厚生労働省の資料に出てくる言葉を整理しておきます。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 拘束時間 | 始業から終業までの時間。労働時間と休憩時間の合計 | 厚生労働省「トラック運転者の改善基準告示」 |
| 休息期間 | 勤務終了から次の始業までの、使用者の拘束を受けない期間 | 同上 |
| 最大拘束時間 | 1日の拘束時間を延長するときの限度。原則15時間 | 同上 Q3 |
| 長距離貨物運送 | 一の運行の走行距離が450km以上の貨物運送 | 同上 |
| 一の運行 | 勤務先を出発してから帰着するまで | 同上 Q3 |
| 隔日勤務 | 2暦日にまたがる勤務。2暦日の拘束時間は21時間まで、勤務終了後は継続20時間以上の休息 | 同上 Q9 |
| 予期し得ない事象 | 事故・故障・災害など通常予期しないことに遭遇し、一定の遅延が生じた場合 | 同上 Q11 |
改善基準告示の用語で迷いやすいのは「1日」です。暦の1日ではなく、始業時刻から数えた24時間を指します(同上 Q3)。日付で区切って集計していると、分割休息やフェリーの計算が合わなくなります。
改善基準告示と一緒に押さえておきたいこと
改善基準告示は運送会社以外のトラック運転者にもかかる
改善基準告示のトラック運転者には、運送事業の会社の運転者だけでなく、主として人以外を運ぶ自動車の運転に従事する人が含まれるとされています(厚生労働省 同上 Q1)。製造業の配達部門の運転者も、運転が主な業務なら対象です。協力会社や荷主の自家用トラックと行程をそろえるときの前提になります。
改善基準告示の月310時間は労使協定が条件
改善基準告示の1か月の拘束時間は284時間が原則で、310時間まで延ばすには労使協定が要ります。延ばせるのは年6か月まで、年3,400時間の範囲内で、284時間を超える月が3か月を超えて続かないこととされています(同上 Q2)。分割休息やフェリーの扱いとは別の枠なので、協定の有無を管理表の欄外に書いておくと取り違えが減ります。
改善基準告示の例外と荷待ちの記録は別に残す
改善基準告示の例外を使った日でも、荷主の都合で待った時間は業務の記録に残す決まりがあります。貨物自動車運送事業輸送安全規則第8条第1項第7号では、待機した地点、到着の日時、荷役作業の開始と終了、出発の日時を書くこととされています。例外の記録と荷待ちの記録が両方そろっていると、荷主との交渉の材料にもなります。

よくある質問
具体的な時間数はどこで確認できますか。
厚生労働省の「トラック運転者の改善基準告示」のページに、分割休息(1回3時間以上、2分割で合計10時間以上、3分割で合計12時間以上)、2人乗務(最大20時間、条件を満たせば24時間・28時間)、フェリーの扱いがQ&Aの形でまとまっています。自社の運行への当てはめは、所管の労働基準監督署で確かめられます。
予期し得ない事象は自己申告でよいですか。
客観的な記録が求められます。渋滞情報の画面、修理の記録、警察への届出など、第三者が確認できる資料を残しておくと安全です。