点呼は誰がどこまでできるか|対面の原則と例外
公開 2026年8月21日/更新 2026年10月3日
目次10項目
点呼は、運行管理者が対面で行うことが原則になっています。ただし、運送の現場は対面がむずかしい場面の連続です。早朝の出庫、深夜の帰庫、直行直帰、宿泊をともなう長距離運行。そのため、制度の側にもいくつかの例外が用意されています。
一般に、点呼の話は「誰が」「どの方法で」「何を確認して」「どう記録するか」という4つに分けて考えると整理しやすくなります。
- 原則運行管理者が対面で行う
- 例外1補助者が行う(回数に上限)
- 例外2電話その他の方法
- 例外3IT点呼・遠隔点呼・自動点呼
ポイントはここです。例外はいくつもありますが、確認する内容そのものは、どの方法でも変わりません。方法が変わっても、確認事項が減ることはない。この形で覚えておくと、迷いにくくなります。
点呼が対面を原則にしている理由とは
点呼が対面を原則にしている理由は、運転者の状態を目で見て確かめる必要があるためです。酒気を帯びていないか、疲労の様子はどうか、体調に変化はないか。こうしたことは、声だけでは分かりにくい部分になります。
顔色、目、足取り、返事の速さ。対面には、意識していなくても入ってくる情報があります。だから制度は、対面を原則に置いています。
とはいえ、対面でありさえすればよい、という仕組みでもありません。対面で行っていても、確認事項を飛ばしていれば点呼として成立しません。逆に、認められた方法で遠隔から行っていても、確認事項が押さえられていれば点呼になります。
大事なのは方法ではなく、確認事項が押さえられているかという部分です。対面かどうかだけを気にして、確認事項が形だけになっている事業所があります。そこは順序が逆になっています。
もうひとつ、対面の点呼には副次的な効き目があります。運転者と管理者が毎日顔を合わせる場になる、という部分です。
体調の変化や、家庭の事情、荷主とのやり取りで気になっていること。こうした話は、あらためて面談の時間を取っても出てきにくいものです。むしろ、出庫前の数分のほうが出てきます。
事故の背景をたどると、「その日、本人は何かを気にしていた」という形にたどり着くことがあります。点呼は、それに気づける数少ない接点になります。
制度上の義務としてだけ見ると、点呼は手間の多い作業に見えます。接点として見ると、位置づけが変わってきます。
点呼補助者に任せられる範囲
点呼補助者は、運行管理者の補助として点呼を行える人になります。一定の要件を満たした人を選任することで、運行管理者が不在の時間帯にも点呼を回せるようになります。
補助者に選べるのは、運行管理者資格者証を持っている人か、国土交通大臣の認定を受けた運行管理の講習(基礎講習)を修了した人とされています(貨物自動車運送事業輸送安全規則第18条第3項)。
ここでよくある誤解が、「補助者を置けば運行管理者は要らない」という理解です。制度は、そういう組み立てになっていません。補助者が行える点呼には割合の上限があり、一定以上は運行管理者自身が行う必要があります。国土交通省の通達では、運行管理者が行う点呼は、その営業所で行うべき点呼の総回数の少なくとも3分の1以上でなければならないとされています(輸送安全規則の解釈及び運用について、第7条関係)。補助者は、運行管理者の代わりではなく、手が回らない時間帯を埋めるための仕組みです。
成り立つ運用
- 運行管理者が主として行う
- 補助者は時間帯を限って行う
- 誰が行ったかを記録している
つまずく運用
- ほぼ全部を補助者が行う
- 運行管理者が点呼に出ていない
- 実施者の欄が空のまま
もうひとつ押さえておきたいのが、補助者が判断できる範囲です。補助者が点呼を行っていて、異常が見つかった場合。たとえばアルコールが検知された、体調に問題がありそうだ、というときです。
このときの判断は、運行管理者が行います。通達では、補助者は直ちに運行管理者に報告し、運行の可否について指示を仰ぐこととされています。補助者が「大丈夫だろう」と判断して出庫させる形は、想定されていません。そのため、補助者を置くときは、異常が出たときの連絡先をあらかじめ決めておく必要があります。
夜間や早朝に補助者しかいない時間帯があるなら、その時間に電話がつながる人を決めておくところまでが準備になります。
記録の面では、点呼を行った人の氏名を残しておく形になります。ここが空欄だと、割合の確認ができません。
電話点呼が認められるのはどんなときか
電話点呼が認められるのは、規則でいう「運行上やむを得ない場合」になります。通達では、遠隔地で業務を始める、または終えるために、所属する営業所で業務前点呼や業務後点呼を対面で行えない場合などを指すとされています。
一般に、次のような場面で使われています。
- 遠隔地で夜を明かし、翌朝そのまま出発する運行
- 遠隔地で荷を降ろして業務を終え、その日は営業所に戻らない運行
- 業務前・業務後のどちらも対面でできない運行の途中で行う中間点呼
注意しておきたいのは、この方法が「便利だから使う」ものではないという部分です。同じ通達で、車庫と営業所が離れている場合や、早朝・深夜に点呼を行う人が出勤していない場合は「やむを得ない場合」に当たらないとされています。車庫が離れているときは、運行管理者か補助者を車庫に出向かせて対面で行う形が求められます。
もうひとつ、「その他の方法」は携帯電話や業務無線など、運転者と直接話せるものに限られます。電子メールやFAXのような一方向の連絡は当たりません。電話その他の方法による点呼を運行中に行うこともできないとされています。
ポイントはここです。電話その他の方法を使うときは、なぜ対面でできないのかが説明できる形になっている必要があります。
運行指示書に、その運行が宿泊をともなうことや、遠隔地で業務を終えることが書かれていれば、説明の材料になります。逆に、方法だけを変えて理由が記録に残っていない状態は避けたい部分です。
なお、電話で行う場合も、アルコールの確認は必要になります。検知器を携行させ、測定した結果を伝えてもらう形が広く使われています。
このとき問題になりやすいのが、測定したことをどう確かめるかという部分です。数値を口頭で聞くだけだと、本人が測ったかどうかを確かめる材料がありません。実務では、次のような方法が使われています。
- 携帯型の検知器で測り、表示された数値を読み上げてもらう
- 測定結果の画面を写真で送ってもらう
- 通信機能つきの検知器を使い、結果が事務所側に届く形にする
どれを選ぶかは、車両の台数や運行の形で変わります。台数が少ないうちは、写真を送ってもらう形が始めやすい方法になります。
検知器そのものの管理も要ります。有効期限、校正の時期、故障していないかの確認。携行させている検知器は、事務所に据え置いた機器より確認が抜けやすくなります。
アルコールチェックの詳細は運送業のアルコールチェックにまとめています。
IT点呼・遠隔点呼・業務後自動点呼の違い
IT点呼、遠隔点呼、業務後自動点呼、業務前自動点呼は、いずれも機器を使って行う点呼になります。名前が似ていますが、それぞれ位置づけが違います。
| 種類 | 概要 | 押さえどころ |
|---|---|---|
| IT点呼 | Gマーク営業所などが、同じ事業者の営業所間や営業所と車庫の間で、点呼機器を通じて行う | 営業所の要件がある。営業所間は1営業日のうち連続16時間以内 |
| 遠隔点呼 | 点呼告示の要件を満たす機器・施設・運用のもとで、離れた場所から行う | 営業所の優良性は問われないが、機器と運用の要件がある |
| 業務後自動点呼 | 業務後の点呼を、国土交通省の認定を受けた機器で行う | 業務前の点呼には使えない |
| 業務前自動点呼 | 業務前の点呼を、認定を受けた機器で行う(2025年4月の告示改正で加わった) | 業務前用の機器の要件が別に定められている |
いずれも、機器を買えばすぐに始められるものではありません。営業所としての要件、機器の要件、運輸支局への届出(原則として実施予定日の10日前まで)など、事前に整えるものがあります。そのため、導入を検討する場合は、所管の運輸支局に確認しておくのが確実です。
業務後自動点呼で押さえておきたいのは、使えるのが業務後の点呼に限られる部分です。業務前の点呼は、体調やアルコールの確認が中心になります。業務前を機器で行う場合は、業務前自動点呼の要件を満たした別の認定機器が要ります。
業務前と業務後では、点呼の重さが違うという理解をしておくと、制度の作りが読めてきます。
導入によって楽になるのは、深夜や早朝の帰庫が多い事業所です。帰庫のたびに人を起こしていた部分が、機器で回せるようになります。一方、機器で点呼をしても、異常が出たときに判断する運行管理者等の体制そのものが不要になるわけではありません。
点呼記録簿に残す項目
点呼記録簿に残す項目は、点呼の方法が変わっても同じです。輸送安全規則第7条第5項では、点呼を行った旨と報告・確認・指示の内容に加えて、点呼を行った人と受けた人の氏名、車両の登録番号、点呼の日時、点呼の方法などを記録し、1年間保存すると定められています。点呼記録簿に残しておく項目は、次のような形になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施日時 | 年月日と時刻 |
| 点呼の種別 | 業務前(乗務前)・業務後(乗務後)・中間 |
| 実施者 | 運行管理者か補助者か、氏名 |
| 対象者 | 運転者の氏名 |
| 車両 | 自動車登録番号など、車両を識別できる表示 |
| 方法 | 対面・電話・IT点呼・遠隔点呼など |
| 確認事項 | 酒気帯び(アルコール検知器の使用)、疾病・疲労・睡眠不足、日常点検、指示事項 |
| 結果 | 異常の有無と、あった場合の措置 |
このうち、方法の欄が抜けている記録が多く見られます。対面が原則である以上、対面以外で行ったときは、その旨が記録されている必要があります。書いていないと、あとから見た人には「対面で行った」と読めます。実際は電話だった場合、記録と実態が食い違うことになります。
もうひとつ抜けやすいのが、指示事項の欄です。点呼は、確認するだけの場ではありません。その日の運行について伝えるべきことがあれば、そこで伝えます。
天候、道路状況、荷主からの連絡、車両の注意点。伝えた内容が記録に残っていると、点呼が確認と指示の両方を果たしている形になります。
巡回指導で点呼記録が見られる部分
巡回指導では、点呼記録が重点的に見られます。見られ方には傾向があります。1枚ずつ内容を精査するというより、まとまりとして辻褄が合っているかという見方になります。
具体的には、次のような突き合わせが行われます。
- 運行の実績があるのに、点呼記録が無い日が無いか
- 点呼の時刻と、日報の出庫時刻が矛盾していないか
- 実施者の欄が埋まっているか、補助者の割合が偏っていないか
- アルコール検知の記録が全件について残っているか
1件でも抜けがあると、他の日も同じではないかという見方になります。そのため、先回りできるのは、月末に日報と点呼記録の枚数を突き合わせておくやり方です。運行があった日の数と、点呼記録の枚数が合っているか。数を数えるだけの作業ですが、抜けはこれで見つかります。
抜けが出やすいのは、決まった場面です。ひとつは、臨時の運行です。急な依頼で1台だけ動いた日は、日報は書かれても点呼記録が漏れることがあります。
ふたつめは、他社から借りた車両や、応援で来た運転者が乗った日です。いつもの流れから外れるため、記録の側も外れやすくなります。
みっつめは、年末年始や連休中の運行です。事務所に人が少ない時期は、記録が後回しになりがちです。
この3つの場面を意識しておくだけで、月末の突き合わせで見つかる件数が減ってきます。見つかった抜けは、その場で埋めずに、なぜ抜けたのかを1行書き残しておくと次につながります。同じ場面で繰り返しているなら、そこは仕組みで直せる部分になります。
準備の進め方は巡回指導の準備にまとめています。
点呼の方法に迷ったときの判断順序
点呼の方法に迷ったときの判断順序は、上から順に見ていく形にすると決めやすくなります。
- 運行管理者が対面でできるか はい対面で行う いいえ次へ
- 補助者が対面でできるか はい補助者が行う(3分の1は運行管理者) いいえ次へ
- 遠隔点呼・IT点呼の体制を届け出ているか はい機器を使って行う いいえ次へ
- 遠隔地で業務を始める・終えるため対面できないか はい電話その他の方法 いいえ運行の組み方を見直す
上から順に見て、できる方法を選ぶ
この順序で見ていくと、例外から入ることがなくなります。逆に例外から入ると、「対面できたはずの運行まで電話で済ませていた」という状態になりやすくなります。
点呼で確認する内容そのものは、点呼で確認することに整理しています。方法を決めたあとは、確認事項が押さえられているかを見ておくと、形がそろってきます。
制度の例外は、現場を回すために用意されているものです。使えるようにしておくと、無理な運行を組まずに済むようになります。方法を選ぶことと、確認事項を守ること。この2つは別の話として持っておくと、判断がぶれにくくなります。
点呼にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
点呼は、対面以外の方法がここ数年で段階的に広がっている分野です。数年前の手順書のままだと、使える方法を見落としていることがあります。
| 時期 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 2022年4月1日 | 機器・施設・運用の要件を満たせば、営業所の優良性にかかわらず遠隔点呼ができるようになった | 国土交通省 報道発表(2022年3月23日) |
| 2023年4月1日 | 点呼告示が定められ、遠隔点呼と業務後自動点呼が「対面による点呼と同等の効果を有する方法」として位置づけられた。業務後自動点呼の機器の認定も開始 | 令和5年国土交通省告示第266号、自動点呼機器認定要領 |
| 2025年4月30日 | 点呼告示の改正で業務前自動点呼が加わった | 令和7年国土交通省告示第347号 |
| 2026年6月26日 | 遠隔点呼機器で運転者の情報を共有できる場合に、所属営業所以外の運行管理者等が対面で確認すれば、遠隔点呼を受けたものとみなす規定が加わった(公布の日に施行) | 点呼告示の一部改正(国土交通省 物流・自動車局 資料) |
点呼の確認事項そのもの(酒気帯び、疾病・疲労・睡眠不足、日常点検)は変わっていません。広がっているのは誰が、どこから確認してよいかです。長距離の運行で電話点呼に頼っている場合は、遠隔点呼に置き換えられる場面がないかを見直す余地があります。
出典:
- 貨物自動車運送事業輸送安全規則(e-Gov法令検索)
- 国土交通省「遠隔点呼が実施できるようになります!」
- 国土交通省「自動点呼機器認定要領」
- 国土交通省「点呼告示の一部を改正する告示について」(2026年6月)
- 関東運輸局「貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について」
確認日は2026年10月3日です。自社で使える点呼の方法と届出の手順は、所管の運輸支局(輸送部門)で確かめられます。
点呼に出てくる用語
点呼の決まりは、規則と通達の言葉で書かれています。言葉の範囲を押さえておくと、どの方法が使えるかを判断しやすくなります。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 対面による点呼 | 運行管理者等が運転者と直接向き合って行う点呼 | 輸送安全規則第7条第1項 |
| 運行上やむを得ない場合 | 遠隔地で業務を始める・終えるため、所属営業所で対面できない場合など。車庫と営業所が離れている場合は当たらない | 輸送安全規則の解釈及び運用について 第7条1(1) |
| 電話その他の方法 | 携帯電話・業務無線など、運転者と直接対話できる方法。メール・FAXは当たらない | 同 第7条1(2) |
| 中間点呼 | 業務前・業務後のどちらも対面などで行えない業務で、途中に少なくとも1回行う点呼 | 輸送安全規則第7条第3項 |
| 補助者 | 運行管理者の業務を補助させるために選任する人。代理はできないが、点呼の一部は行える | 同規則第18条第3項、通達 第18条関係 |
| Gマーク営業所 | 全国貨物自動車運送適正化事業実施機関が認定した安全性優良事業所 | 通達 第7条1(4) |
| 点呼告示 | 対面による点呼と同等の効果を有する方法(遠隔点呼・自動点呼)を定めた国土交通省の告示 | 令和5年国土交通省告示第266号 |
点呼の用語で取り違えが多いのは「IT点呼」と「遠隔点呼」です。IT点呼はGマーク営業所などの優良性が条件で、遠隔点呼は機器と施設の要件が条件です。同じカメラつきの機器を使っていても、どちらの制度で届け出たかで決まりが変わります。
点呼と一緒に押さえておきたいこと
点呼の酒気帯びは、道路交通法の基準値未満でも「あり」になる
点呼で確認する「酒気帯びの有無」は、呼気1リットルあたり0.15mg以上かどうかを問わないとされています(通達 第7条1(13))。検知器が少しでも反応したら、数値が小さくても乗務させない形にそろえておくと、補助者が迷わずに済みます。点呼記録簿の結果欄には、数値と「乗務させなかった」という措置の両方を残します。
点呼を電話で行う運行は、運行指示書とセットになる
点呼で中間点呼が必要になる運行(業務前・業務後のどちらも対面などでできない運行)では、運行指示書を作って運転者に持たせることとされています(輸送安全規則第9条の3)。運行指示書と写しは、運行の終了の日から1年間保存します。運行指示書と点呼記録簿を同じ日付で綴じておくと、巡回指導で「なぜ電話だったのか」を一度に示せます。
点呼の検知器は、営業所に備えたものを使う
点呼の酒気帯びの確認は、目視などに加えて、その運転者の属する営業所に備えたアルコール検知器で行うと定められています(輸送安全規則第7条第4項)。通達では、携帯型の検知器を営業所に備え置いて運転者に持たせる形もこれに当たるとされています。携行させる検知器は、出発前に電源が入ること、損傷がないことを確かめる形が求められています。

よくある質問
補助者はどのくらいまで点呼できますか。
国土交通省の通達(輸送安全規則の解釈及び運用について)で、運行管理者が行う点呼は、その営業所で行うべき点呼の総回数の少なくとも3分の1以上でなければならないとされています。補助者だけで回すことはできません。自社の数え方は所管の運輸支局で確かめられます。
IT点呼を導入するには何が必要ですか。
IT点呼は、Gマーク営業所など輸送の安全の取組が優良な営業所で行える方法です。点呼機器と、運輸支局長等への報告書(原則として実施予定日の10日前まで)が要ります。営業所の優良性を問わない遠隔点呼という方法もあるため、どちらが使えるかを所管の運輸支局で確かめておくと確実です。