運送業のアルコールチェック|白ナンバーとの違い

公開 2026年8月21日/更新 2026年10月3日

商い屋 運送 編集部法令の原文と省庁の資料で確認:2026年10月3日
目次12項目

アルコールチェックには、2つの枠組みがあります。緑ナンバーの運送事業者に求められるものと、白ナンバーの事業所に求められるもの。根拠になる法令が違います。

一般に、ニュースなどで話題になるのは白ナンバー側の制度です。2022年4月から段階的に義務化された、安全運転管理者による確認のことを指しています(道路交通法施行規則第9条の10)。一方で、運送事業者の側はそれより前から義務がありました。点呼でアルコール検知器を使うことは、2011年5月1日から求められています(国土交通省)。

緑ナンバー(運送事業者)

  • 貨物自動車運送事業輸送安全規則
  • 点呼の一部として実施
  • 記録は点呼記録簿に

白ナンバー(一般の事業所)

  • 道路交通法・施行規則
  • 安全運転管理者が実施
  • 記録は1年保存
同じアルコールチェックでも、根拠が違う

ポイントはここです。運送事業者にとっては、アルコールチェックは点呼の一部です。独立した作業ではなく、点呼の中で行う確認事項のひとつになります。

緑ナンバーと白ナンバーの違い

緑ナンバーと白ナンバーの違いは、目的ではなく、制度上の位置づけにあります。運送事業者の場合、業務前と業務後の点呼で確認します(貨物自動車運送事業輸送安全規則第7条)。点呼を行う人は、運行管理者または補助者です。補助者に点呼の一部を任せる場合でも、運行管理者が行う点呼は総回数の3分の1以上とされています(同規則の解釈及び運用について)。

白ナンバーの場合、安全運転管理者が確認します。運転の前後に実施し、記録を1年保存します。対象は、乗車定員11人以上の自動車を1台以上、またはその他の自動車を5台以上使う事業所です。

自社が両方を持っている場合もあります。緑ナンバーの車両と、営業用の白ナンバー車を併用している事業所です。このとき、同じ会社の中に2つの運用が並びます。

車両によって、確認する人も記録する場所も変わります。そのため、混ざらないように、記録の様式を分けておくと扱いやすくなります。

営業車で外回りをする事務職員がいる場合も、白ナンバー側の対象になります。運転者だけを見ていると、ここが抜けます。

アルコールチェック記録に残す項目

アルコールチェック記録に残す項目は、枠組みによって少し違います。運送事業者の場合、点呼記録簿の中に確認した結果を書きます。

項目書くこと
実施日時点呼の日時
点呼の方法対面・遠隔点呼・電話など(対面でない場合は具体的な方法)
検知器の使用アルコール検知器の使用の有無
結果酒気帯びの有無(数値も残すと確かめやすい)
実施者・受けた人点呼を行った人と運転者の氏名
車両自動車登録番号など

この項目は、輸送安全規則第7条第5項と、国土交通省の通達(貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について)に沿った形です。

数値については、検知されなかった場合も含めて記録しておくのが良いです。「異常なし」とだけ書く形だと、測ったのか測っていないのかが分かりません。0.00という数値が入っていると、実施したことが読み取れます。

アルコールチェック記録簿を点呼記録簿と別に持つやり方もあります。どちらでも構いませんが、片方に寄せておくと探しやすくなります。

アルコール検知器の管理|常時有効に保持する

アルコール検知器そのものにも、常時有効に保持するという管理が求められます。壊れたまま置いてあるものは、この条件を満たしません。

国土交通省の通達では、確かめる内容と頻度が次のように示されています。

  • 毎日:電源が確実に入ること、損傷がないこと
  • 毎日が望ましく、少なくとも週1回:酒気を帯びていない人が使ったときに検知しないこと
  • 毎日が望ましく、少なくとも週1回:洗口液などアルコールを含む液体を口に噴霧してから使ったときに検知すること

このほか、メーカーが示す交換の目安や校正の時期を過ぎていないかも、あわせて見ておくと安心です。

センサーには寿命があります。使用回数や使用年数で交換が必要になる機種が多くなっています。交換の時期を過ぎた検知器は、数値が出ていても信頼できません。

購入した日と、交換の目安を台帳に控えておくと、期限の管理ができます。車両の管理と同じ場所に置いておくやり方が扱いやすくなります。

そのうえで、予備を1台持っておくと、故障したときに止まりません。点呼の場面で検知器が使えないと、確認そのものができなくなります。

機種を選ぶときに見ておきたいのは、次のような点です。据え置き型は、精度が安定していて、使用回数の上限も大きい傾向があります。事務所での点呼に向いています。

携帯型は、持ち運べる代わりに、センサーの寿命が短めのものが多くなっています。直行直帰の運行で使う場合は、交換の頻度も見ておきます。

通信機能つきの機種は、結果が自動で記録に残ります。台数が多い事業所では、転記の手間が減ります。

導入の費用だけでなく、センサー交換の費用も含めて比べておくと、数年で見たときの差が分かります。安いものを買って交換が頻繁になると、結果として費用がかさむことがあります。

直行直帰・宿泊運行のアルコールチェック

直行直帰や宿泊をともなう運行では、事務所の検知器が使えません。このときは、携帯型の検知器を持たせる形が一般的です。

問題になりやすいのが、測定したことをどう確かめるかという部分です。数値を口頭で聞くだけだと、本人が測ったかどうかを確かめる材料がありません。実務では、次のような方法が使われています。

  • 表示された数値を読み上げてもらう
  • 測定結果の画面を写真で送ってもらう
  • 通信機能つきの検知器を使い、結果が事務所に届く形にする

通達でも、電話などで点呼をするときは携帯型の検知器を持たせ、測定結果を電話などで報告させる形(通信機能つきの機器なら営業所へ送る形を含む)とされています。あわせて、応答の声の調子などで目視等の確認も行います。台数が少ないうちは、写真を送ってもらう形が始めやすい方法になります。

  1. 1 携行 検知器を持たせる
  2. 2 測定 運転者が測る
  3. 3 伝達 数値を報告・写真送信
  4. 4 記録 点呼記録簿に残す
離れていても、確認と記録の流れは同じ

携行させている検知器は、事務所に据え置いた機器より管理が抜けやすくなります。そのため、定期的に事務所へ戻して動作を確認する、といった決めごとを置いておくと安心です。

点呼の方法そのものについては点呼は誰がどこまでできるかに整理しています。

アルコールが検出されたときの記録と対応

アルコールが検出されたときの対応は、あらかじめ決めておく必要があります。酒気を帯びた状態の乗務員を運行の業務に就かせることはできません(輸送安全規則第3条第5項)。その日の運行は、組み直しになります。

このときに大事なのが、記録です。検出された事実、数値、その後どう対応したか。ここを記録に残しておきます。

検出された記録も、確認が実際に働いていた証拠になります。検出から乗務の取りやめまでの流れが記録に残っていると、あとで経緯を聞かれたときに説明しやすくなります。

実際に検出があったときは、隠さずに記録します。対応が適切であれば、記録が残っていることのほうが説明しやすくなります。

対応の流れも、あらかじめ決めておくと動けます。誰が判断するのか、代わりの運転者をどう手配するのか、本人への対応をどうするのか。その場で考えると、時間がかかります。

検出があったあとの対応も、決めておくと迷いません。本人への聞き取り、教育の実施、しばらくの間の確認を強める運用。どこまで行うかは事業所によって変わります。

大事なのは、決めた対応を全員に同じように適用することです。人によって扱いが変わると、公平さの問題になります。そのため、就業規則や社内の取り決めに書いておくと、判断の根拠がはっきりします。

もうひとつ、本人が申し出やすい状態にしておくことも効きます。前夜に飲みすぎたと自覚がある場合に、本人から言い出せると、検出される前に配車を替えられます。逆に、申し出たら不利になる運用だと、黙って測ることになります。申し出た場合の扱いを決めておくと、事故を防ぐ側に働きます。

アルコールチェック記録は点呼記録と分けるか

アルコールチェック記録を点呼記録と分けるかどうかは、置き場所を決める話になります。点呼記録簿の中に入れるか、別の帳票にするか。どちらの形も使われています。

点呼記録簿の中に入れると、記録が1か所にまとまります。点呼を行った事実と、確認した結果が同じ行に並びます。

別の帳票にすると、アルコールチェックだけを取り出して見られます。白ナンバーの車両と運用をそろえたい場合は、こちらが扱いやすくなります。

判断の材料になるのは、自社にどちらの車両があるかという部分です。緑ナンバーだけなら、点呼記録簿にまとめるのが簡単です。両方ある場合は、様式を分けておくと混乱しません。

決めたら、変えないほうが良いです。途中で様式が変わると、あとから見返すときに探す場所が2か所になります。

巡回指導でアルコールチェック記録が見られる点

巡回指導では、アルコールチェックの記録も確認されます。見られ方としては、運行のあった日について記録がそろっているかという点が中心になりやすい部分です。

運行があった日に記録がない、乗務後の記録だけがない、といった抜けは見つかりやすい部分です。そのため、月末に日報の枚数と点呼記録の枚数を突き合わせておくと、抜けはここで見つかります。

準備の進め方は巡回指導の準備にまとめています。

アルコールチェックを続けるための工夫

アルコールチェックは、毎日必ず発生する作業になります。台数が増えると、点呼の待ち行列に影響します。1人あたり30秒でも、10人なら5分になります。

短くする工夫は、いくつかあります。検知器を2台置いて、並行して測れるようにする方法があります。予備として持っておくものを、平常時にも使う形です。

記録簿を事前に用意しておく方法も効きます。その日の運転者名と車両番号を印字しておけば、結果だけを書けば済みます。

出庫時刻を数分ずつずらすやり方も、待ち時間を減らします。全員が同じ時刻に集まる形をやめるだけで、行列が消えます。

もうひとつ、続けるうえで効いてくるのが、扱い方です。疑いをかける作業として運用すると、場の空気が重くなります。全員が毎日行う確認として淡々と進めるほうが、長く続きます。

管理者自身も測る形にしている事業所があります。同じことを全員が行うという形にすると、受け取られ方が変わってきます。

前夜の飲酒が残る理由をどう伝えるか

前夜の飲酒は、時間が経てば抜けるものだと思われがちです。実際には、体格や飲んだ量によって、抜けるまでの時間が大きく変わります。前夜に飲んだ分が翌朝に残っていることは、珍しくありません。「寝れば大丈夫」という感覚とのずれが、検出につながります。

伝え方としては、責める形より、目安を示す形が届きやすくなります。どれくらいの量で、どれくらいの時間がかかるのか。一般的な目安を資料として配っておくと、自分で判断できるようになります。

乗務員教育の題材としても使いやすい内容です。実施したら乗務員教育記録に残しておきます。安全に関する記録の回し方は安全記録を回すにまとめています。

前日の勤務が遅く終わった日は、飲む時間も遅くなります。運行の組み方と、翌朝の状態はつながっています。拘束時間の管理と合わせて見ると、無理が出ている時期が分かります。

なお、制度の内容は改正で変わることがあります。自社の運用が現行の要件に合っているかは、所管の運輸支局や警察署に確認しておくのが確実です。

日々の作業としては、1人あたり数十秒のものです。仕組みとして回っていれば、負担はそれほど大きくなりません。逆に、回っていない状態のほうが、あとから時間を取られます。まずは、検知器の交換時期が分かる状態になっているか。そこから見てみるのが早道です。

アルコールチェックにかかわる最近の動き(2026年10月時点)

アルコールチェックは、白ナンバー側の義務化と、緑ナンバー側の点呼のやり方の広がりが同じ時期に進みました。

時期内容根拠
2022年4月1日白ナンバーの安全運転管理者に、目視等による酒気帯びの確認と記録の1年保存が義務に道路交通法施行規則第9条の10
2023年4月1日点呼の条文が「対面、または対面と同等の効果を持つ方法」に改められ、同一事業者内の遠隔点呼と業務後自動点呼が本格運用に令和5年国土交通省令第31号、輸送安全規則第7条
2023年12月1日白ナンバーでも、アルコール検知器を使った確認と、検知器を常時有効に保持することが義務に道路交通法施行規則第9条の10
2024年4月遠隔点呼と業務後自動点呼を、宿泊施設や休憩施設、車内などでも受けられる形に告示が改正された国土交通省 運行管理高度化ワーキンググループ資料
2025年4月末業務前の自動点呼と、事業者をまたいだ遠隔点呼が実施できる形に告示が改正された。貨物軽自動車運送事業者も対象に同上

緑ナンバーで影響が大きいのは、点呼の方法が増えたことです。遠隔点呼や自動点呼を使う場合も、アルコール検知器での確認と記録は点呼の一部として残ります。始める前に、運輸支局への届出など所定の手続きを確かめておくと安心です。

出典:

確認日は2026年10月3日です。緑ナンバーの点呼とアルコールチェックは所管の運輸支局、白ナンバーの安全運転管理者の業務は事業所を管轄する警察署で確かめられます。

アルコールチェックに出てくる用語

アルコールチェックの言葉は、緑ナンバーと白ナンバーで似ていて、出どころが違います。

用語意味出典
点呼業務の前後などに運転者の状態を確かめ、必要な指示をすること貨物自動車運送事業輸送安全規則第7条
アルコール検知器呼気中のアルコールを検知し、有無または濃度を警告音・警告灯・数値などで示す機器国土交通大臣の告示(輸送安全規則第7条第4項)
目視等で確認運転者の顔色、呼気の臭い、応答の声の調子などで確かめること輸送安全規則の解釈及び運用について
酒気を帯びた状態運送事業では、呼気0.15mg/L以上かどうかを問わない同上(第3条第5項関係・第7条関係)
遠隔点呼離れた場所から、対面と同等の効果を持つ方法で行う点呼対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法を定める告示
安全運転管理者白ナンバーの車を一定台数以上使う事業所で選ぶ、運転者の管理をする人道路交通法第74条の3
アルコールチェック酒気帯びの有無の確認を指す通称法令上の定義はない

アルコールチェックの用語で取り違えやすいのは「酒気を帯びた状態」です。道路交通法の罰則の基準とは別の考え方で、運送事業では数値の大小より「アルコールが検知されたかどうか」で見ます。

アルコールチェックと一緒に押さえておきたいこと

運送業のアルコールチェックの基準値は「0.15」ではない

運送業のアルコールチェックでは、道路交通法の酒気帯び運転の基準(呼気1リットルにつき0.15mg)を下回っていても、酒気を帯びた状態として扱うとされています(輸送安全規則の解釈及び運用について、第3条第5項関係・第7条関係)。そのため、「0.10なら乗務できる」という判断は成り立ちません。検知器が反応したら、その日の乗務から外す扱いを社内の決まりに書いておくと、点呼をする人によって判断が分かれません。

アルコールチェックの記録の保存は、点呼記録として1年

運送業のアルコールチェックの記録は、点呼の記録として1年保存とされています(輸送安全規則第7条第5項)。記録は書面でも電磁的方法でもよいとされています(同通達)。通信機能つきの検知器を使う場合は、機器の契約を切り替えたときに過去1年分を取り出せるかを、先に確かめておくと安心です。

アルコールチェックのタイミングは業務前・業務後と、途中の点呼

運送業のアルコールチェックは、業務前と業務後の点呼で行います。さらに、業務前・業務後のどちらも対面などで行えない運行(長距離の宿泊運行など)は、途中で少なくとも1回、点呼をして酒気帯びの有無を確かめると定められています(輸送安全規則第7条第3項)。この中間点呼の記録が抜けやすいため、運行指示書と点呼記録簿を同じ綴りにしておくと、確認の漏れに気づきやすくなります。

商い屋 運送 編集部がまとめました運送業の様式を無料で配り、使い方と法令の決まりを記事にまとめています。法令の数字は e-Gov の原文で確かめてから載せています。

よくある質問

検知器の種類に指定はありますか。

国土交通大臣の告示で、呼気中のアルコールを検知し、その有無または濃度を警告音・警告灯・数値などで示す機能を持つ機器とされています。通達では、エンジンがかからなくなる機能を持つものも含むとされ、性能の要件は当面問わないとされています。具体的な機種の指定はありません。

記録は点呼記録簿に含めてもよいですか。

含めて構いません。点呼記録の酒気帯び欄に測定値まで記入すれば、別冊は不要です。

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