荷主への連絡文|遅延の連絡と運賃改定の申入れ
公開 2026年9月3日
目次8項目
- 1荷主への連絡文とは何を伝える文書か
- 電話と文書を役割で分ける
- 相手の社内で回ることを前提に書く
- 取引を続ける前提で書く
- 2荷主への遅延のご連絡に書くこと
- 到着の見込みを先に書く
- 原因は事実だけを書く
- 再発の防止は別に伝える
- 3荷主への遅延のご連絡を出す時期
- 遅れそうな段階で入れる
- 運転者から事務所への経路を決める
- 定型の文面を用意しておく
- 4荷主への連絡文で使える数字をそろえる
- 便ごとの原価を集計する
- 待機の時間を記録に残す
- 公表されている指標を添える
- 5荷主への運賃改定のお申し入れに書くこと
- 上がった費用を項目ごとに書く
- 標準的な運賃との差を示す
- 提案は幅ではなく1つ出す
- 6荷主への運賃改定のお申し入れを出す時期
- 相手の予算の時期を聞いておく
- 一度で結論を求めない
- 断られたら条件を変えて出す
- 7荷主への連絡文でつまずきやすいところ
- 原価の集計を先に整える
- 担当者の上に届く書き方にする
- 荷主勧告の仕組みを背景として押さえる
- 8荷主への連絡文を型にして残す
- 出した記録を荷主ごとに残す
- 通った書き方を蓄積する
- 定期的に見直す時期を決める
荷主へ伝えにくい話をするとき、文書を出すこと自体をためらう場面があります。遅れの連絡を入れれば叱られる、運賃の話を出せば取引が切られる。そう考えて、口頭で済ませたり、そもそも言わずに終わらせたりします。
一般には、事実と見込みを先に伝え、そのうえで対応を書きます。伝えないままにするほうが、後で関係を悪くします。
とはいえ、書き方によって受け取られ方が変わるのも確かです。
ポイントはここです。荷主への連絡文は、取引を続ける前提で書くことで、伝えにくい内容も出せるようになります。
ここでは、遅延の連絡と運賃改定の申入れという2つを取り上げ、書く内容、出す時期、そして型にして残すところまでを整理します。
荷主への連絡文とは何を伝える文書か
荷主への連絡文には、性格の違う2つがあります。急いで伝えるものと、時間をかけて話し合うものです。
遅延のご連絡
- 急いで伝える
- まず電話、あとで文書
- 事実と見込みが中心
- 1回で完結する
運賃改定のお申し入れ
- 時間をかけて話す
- 文書から始める
- 根拠と提案が中心
- 何度かやり取りする
左は、その場の段取りを相手に組んでもらうためのものです。一方で右は、条件そのものを見直してもらうための働きかけになります。
そのため、書き方も出す時期も違ってきます。
電話と文書を役割で分ける
遅延の連絡は、まず電話で伝えるのが早く届きます。一方で、電話だけだと言った言わないの話になりやすくなります。
電話で伝えて、文書で残すという順序にすると、両方の利点が使えます。
相手の社内で回ることを前提に書く
荷主の担当者に送った文書は、その人の社内で回覧されることがあります。上司へ報告する材料として使われる場面です。
そのため、担当者だけが分かる書き方だと、上へ伝わりません。便名や荷物の内容、日付といった特定できる情報を入れておきます。
そのうえで、経緯を知らない人が読んでも分かる形にします。
取引を続ける前提で書く
伝えにくい内容ほど、言い訳や前置きが長くなりがちです。一方で、読む側が知りたいのは事実と、これからどうなるかです。
謝罪の言葉を並べるより、状況と対応を先に書くほうが誠実に伝わります。そのうえで、今後も取引を続けたいという姿勢を示します。
関係を切る前提の文書と、続ける前提の文書では、書き方が変わります。
荷主への遅延のご連絡に書くこと
荷主への遅延のご連絡は、相手が動ける情報から順に書きます。経緯を最初から説明すると、知りたいことが後ろに来ます。
- 1 対象の便 どの荷物か特定
- 2 到着の見込み 何時になるか
- 3 現在の状況 いまどこか
- 4 原因 分かっている範囲
- 5 当面の対応 どうするか
相手が最初に知りたいのは、何時に着くかです。そのため、原因より先に見込みの時刻を書きます。
| 項目 | 内容 | 書くときの目安 |
|---|---|---|
| 対象の便 | 出荷日と便名、荷物 | 相手の伝票番号を添える |
| 到着の見込み | 予定の時刻 | 幅を持たせて書く |
| 現在の状況 | 車両の位置 | 分かる範囲で |
| 原因 | 渋滞、故障、天候など | 事実だけを書く |
| 当面の対応 | 代替の手配など | 決まっていることを |
| 連絡先 | 担当と電話番号 | 直通の番号を |
右の列は、書くときの目安です。そのうえで、相手の伝票番号を添えると、荷主の側で照合しやすくなります。
到着の見込みを先に書く
到着の見込みが分かれば、相手は受け入れの段取りを組み直せます。逆に、見込みが書かれていないと、いつまで待てばよいか分かりません。
正確な時刻が読めない場合は、幅を持たせて書きます。そのうえで、分かった時点で改めて連絡する旨を添えておきます。
見込みが変わったときは、その都度連絡を入れます。
原因は事実だけを書く
原因の欄には、確認できていることだけを書きます。推測を書いて、後から違っていた場合に信用を失います。
調査中である旨を書いておくと、後で内容が変わっても説明できます。
再発の防止は別に伝える
遅延の連絡は、その便について伝える文書です。再発の防止策まで書き込むと、長くなって要点がぼやけます。
同じ原因が繰り返されている場合は、別の機会に改めて伝えます。そのうえで、社内で決めた対策を具体的に示します。
急ぎの連絡と、改善の報告は分けて出す形が扱いやすくなります。
荷主への遅延のご連絡を出す時期
荷主への遅延のご連絡は、早いほど相手が打てる手が増えます。到着した後に連絡しても、相手は何もできません。
上に行くほど、相手にできることが増えます。そのため、確定していなくても見えた段階で入れるほうが役に立ちます。
遅れそうな段階で入れる
遅れが確定してから連絡すると、相手の準備の時間が無くなります。渋滞に入った時点、故障が分かった時点で入れるほうが親切です。
「遅れる可能性がある」という段階の連絡でも、相手は準備ができます。そのうえで、結果として間に合った場合は、その旨を伝えます。
早めの連絡が続くと、信頼につながります。
運転者から事務所への経路を決める
遅れに最初に気づくのは、現場の運転者です。その情報が事務所へ届かないと、荷主への連絡が遅れます。
運転者から事務所への経路を決めておくと、連絡が遅れません。
定型の文面を用意しておく
遅延の連絡は、急いで出す文書です。一から文面を考えていると、その分だけ時間がかかります。
便名、時刻、原因、対応を差し替えるだけの型を用意しておきます。そのうえで、原因ごとに何パターンか持っておくと、さらに早くなります。
型があると、担当が誰でも同じ水準の文書が出せます。
荷主への連絡文で使える数字をそろえる
荷主への連絡文、特に運賃の話をするときは、数字が要ります。「厳しい」という言葉だけでは、相手も社内を説得できません。
- 便ごとの原価燃料・人件費・車両
- 待機の時間荷待ちと荷役
- 公表の指標燃料価格と標準的な運賃
自社の数字だけだと、相手には検証できません。一方で、公表されている指標だけでは、自社の事情が伝わりません。
便ごとの原価を集計する
運賃の話をするには、その便にいくらかかっているかが要ります。燃料、人件費、車両の償却、高速代。これらを便ごとに集計します。
日報とデジタコの記録から、走行距離と時間が取れます。そのうえで、燃料の単価と人件費の時間単価を掛けると、おおまかな数字が出ます。
細かい精度より、傾向が分かる形で足ります。
待機の時間を記録に残す
荷待ちの時間は、運転者の拘束時間に含まれます。一方で、運賃には反映されていないことが多い部分です。
待機の時間が数字で出ていると、別建てで請求する話ができます。
公表されている指標を添える
燃料の価格や、標準的な運賃といった指標は公表されています。自社の数字に添えると、値上げの根拠が客観的になります。
指標の出どころと時点を明記しておくと、相手が確認できます。そのうえで、自社の数字と指標の両方を並べて示します。
外の数字があると、相手も社内で説明しやすくなります。
荷主への運賃改定のお申し入れに書くこと
荷主への運賃改定のお申し入れは、現状・根拠・提案の3つで組みます。どれが欠けても、相手が検討する材料になりません。
- 現状いまの運賃と原価
- 根拠何がどれだけ上がったか
- 提案いくら、いつから
3つのうち、抜けやすいのは3つ目の提案です。苦しい事情だけを書いて、いくらにしてほしいかを書かない文書になりがちです。
上がった費用を項目ごとに書く
「経費が上がった」とだけ書くと、相手は判断できません。燃料、人件費、車両の価格、保険料。項目ごとに、いつからいくら上がったかを書きます。
前回の運賃を決めた時点と比べる形にすると、変化が伝わります。そのうえで、その中で自社が吸収してきた分も示します。
努力の跡が見えると、受け止め方が変わります。
標準的な運賃との差を示す
国土交通省が示している標準的な運賃は、話し合いの目安として使えます。自社の現行運賃との差を示すと、水準が客観的に分かります。
標準的な運賃は話し合いの目安として使えます。
提案は幅ではなく1つ出す
「5%から10%の値上げを」と幅で出すと、相手は下限で受け取ります。1つの数字を出したほうが、検討の対象になります。
そのうえで、いつから適用したいかも書きます。時期が書いていないと、話が先送りされます。
数字と時期の両方が入っていると、相手が社内で稟議に乗せられます。
荷主への運賃改定のお申し入れを出す時期
荷主への運賃改定のお申し入れは、出す時期で結果が変わります。相手が予算を組んだ後では、その期は動かせません。
- 相手の期の切り替わりを把握しているか はい次へ いいえ担当に確認する
- 予算を組む時期の前か はい出す時期として良い いいえ次の期を狙う
- 根拠の数字がそろっているか はい次へ いいえ原価の集計を先に
- 担当者の上に届く形か はい申し入れを出せる状態 いいえ回覧される書き方に直す
相手が予算を組む前に出すと、検討の対象に入る
4つのうち、最初の2つが時期に関わる部分です。そのため、荷主ごとに期の切り替わりを把握しておくと、動く時期が決まります。
相手の予算の時期を聞いておく
荷主の決算期や予算を組む時期は、聞けば教えてもらえることが多いものです。運賃の話をしていない平時に、雑談の中で確認しておきます。
そのうえで、荷主ごとの一覧に書いておくと、翌年も使えます。期の切り替わりの3か月前あたりが、申し入れの時期になります。
時期を外すと、内容が良くても次の期まで待つことになります。
一度で結論を求めない
運賃の改定は、担当者だけで決められる話ではありません。社内で検討する時間が要ります。
そのため、出してすぐに返答を求めない形にします。そのうえで、いつごろまでに返答をいただきたいかは書いておきます。
期限が無いと、そのまま止まることがあります。
断られたら条件を変えて出す
全体の運賃改定が難しいと言われたときは、部分から話を始めます。待機時間の別建て、特定の路線だけ、燃料サーチャージの導入。
全体が動かないときは、部分から話を始めます。
荷主への連絡文でつまずきやすいところ
荷主への連絡文で最も多いつまずきは、出すこと自体をためらう段階です。関係が悪くなることを心配して、伝えないまま時間が過ぎます。
いちばん上の「ためらう」は、根拠がそろっていないことが背景にあることが多くあります。そのため、数字を用意すると出しやすくなります。
原価の集計を先に整える
運賃の話を出せない理由の多くは、根拠になる数字が無いことです。感覚として苦しいことは分かっていても、示せる形になっていません。
日報とデジタコの記録から、便ごとの走行距離と時間を出します。そのうえで、燃料と人件費を掛け合わせると、おおよその原価が見えます。
数字が出ると、話を切り出しやすくなります。
担当者の上に届く書き方にする
現場の担当者は、運賃を決める権限を持っていないことが多くあります。そのため、その人が上司へ説明できる形の文書にします。
経緯を知らない人が読んでも分かる書き方にして、数字を並べます。そのうえで、提案の内容を1行で示しておくと、上へ上げやすくなります。
担当者に負担をかけない形が、結果として早く進みます。
荷主勧告の仕組みを背景として押さえる
貨物自動車運送事業法には、荷主勧告という仕組みがあります。荷主の行為が原因で運送事業者が法令に違反した場合に、荷主へ勧告を行うものです。
仕組みを知っておくと、話し合いの立ち位置が変わります。
荷主への連絡文を型にして残す
荷主への連絡文は、毎回ゼロから書くと時間がかかります。型を作って、差し替える部分だけを変える形にします。
- 1 型を作る 遅延と改定の2種類
- 2 差し替える 便名と数字だけ
- 3 出した記録 日付と相手を残す
- 4 結果を残す 返答の内容
- 5 次に生かす 通った書き方を残す
型を作るだけでなく、出した記録と結果まで残すところに意味があります。そのうえで、次に同じ相手へ出すときの材料になります。
出した記録を荷主ごとに残す
いつ、誰に、何を出したかを荷主ごとに残しておきます。運賃の交渉は数年おきに起きるため、前回の経緯が分かると助かります。
前回いつ改定したのか、そのとき何を根拠にしたのか。そのうえで、相手からどういう返答があったかも書いておきます。
担当が代わっても、経緯が引き継げます。
通った書き方を蓄積する
同じ内容でも、書き方によって受け止められ方が変わります。うまく進んだときの文面は、残しておくと次に使えます。
逆に、断られたときの文面も残しておきます。そのうえで、何が足りなかったかを短く書き添えます。
蓄積があると、担当が代わっても水準が落ちません。
定期的に見直す時期を決める
運賃は、放っておくと何年も同じままになります。年に1回、荷主ごとの運賃と原価を並べて見る時期を決めておきます。
そのうえで、原価が上がっている先から順に話を始めます。すべての荷主に同時に出す必要はありません。
見直しの時期を決めておくと、動く機会が毎年やってきます。
様式は遅延のご連絡テンプレート、運賃改定のお申し入れからダウンロードできます。
よくある質問
遅延の連絡は電話で済ませてもよいですか。
まず電話で伝えたうえで、文書を出す形が広く使われています。電話は早く伝わりますが記録に残りません。到着の見込みや原因を文書で残しておくと、後の確認や再発の防止に使えます。
運賃の改定はどう申し入れるとよいですか。
根拠を添えて文書で申し入れる形が扱いやすくなります。燃料や人件費の上がり方、標準的な運賃との差といった数字を並べると、話が具体的になります。口頭だけで伝えると、社内で検討する材料が相手に残りません。
申し入れを断られたらどうしますか。
一度で結論を求めず、条件を変えた案を出す形が広く使われています。全体の値上げが難しい場合、待機時間や付帯作業の分だけを切り出す方法があります。取引の継続そのものを考える段階では、荷主勧告の仕組みも背景として押さえておきます。