荷主への連絡文|遅延の連絡と運賃改定の申入れ

公開 2026年9月3日

目次8項目

荷主へ伝えにくい話をするとき、文書を出すこと自体をためらう場面があります。遅れの連絡を入れれば叱られる、運賃の話を出せば取引が切られる。そう考えて、口頭で済ませたり、そもそも言わずに終わらせたりします。

一般には、事実と見込みを先に伝え、そのうえで対応を書きます。伝えないままにするほうが、後で関係を悪くします

とはいえ、書き方によって受け取られ方が変わるのも確かです。

ポイントはここです。荷主への連絡文は、取引を続ける前提で書くことで、伝えにくい内容も出せるようになります

ここでは、遅延の連絡と運賃改定の申入れという2つを取り上げ、書く内容、出す時期、そして型にして残すところまでを整理します。

荷主への連絡文とは何を伝える文書か

荷主への連絡文には、性格の違う2つがあります。急いで伝えるものと、時間をかけて話し合うものです。

遅延のご連絡

  • 急いで伝える
  • まず電話、あとで文書
  • 事実と見込みが中心
  • 1回で完結する

運賃改定のお申し入れ

  • 時間をかけて話す
  • 文書から始める
  • 根拠と提案が中心
  • 何度かやり取りする
急ぐものと、時間をかけるものに分かれる

左は、その場の段取りを相手に組んでもらうためのものです。一方で右は、条件そのものを見直してもらうための働きかけになります。

そのため、書き方も出す時期も違ってきます。

電話と文書を役割で分ける

遅延の連絡は、まず電話で伝えるのが早く届きます。一方で、電話だけだと言った言わないの話になりやすくなります。

電話で伝えて、文書で残すという順序にすると、両方の利点が使えます

相手の社内で回ることを前提に書く

荷主の担当者に送った文書は、その人の社内で回覧されることがあります。上司へ報告する材料として使われる場面です。

そのため、担当者だけが分かる書き方だと、上へ伝わりません。便名や荷物の内容、日付といった特定できる情報を入れておきます。

そのうえで、経緯を知らない人が読んでも分かる形にします。

取引を続ける前提で書く

伝えにくい内容ほど、言い訳や前置きが長くなりがちです。一方で、読む側が知りたいのは事実と、これからどうなるかです。

謝罪の言葉を並べるより、状況と対応を先に書くほうが誠実に伝わります。そのうえで、今後も取引を続けたいという姿勢を示します。

関係を切る前提の文書と、続ける前提の文書では、書き方が変わります。

荷主への遅延のご連絡に書くこと

荷主への遅延のご連絡は、相手が動ける情報から順に書きます。経緯を最初から説明すると、知りたいことが後ろに来ます。

  1. 1 対象の便 どの荷物か特定
  2. 2 到着の見込み 何時になるか
  3. 3 現在の状況 いまどこか
  4. 4 原因 分かっている範囲
  5. 5 当面の対応 どうするか
相手が動ける情報から順に書く

相手が最初に知りたいのは、何時に着くかです。そのため、原因より先に見込みの時刻を書きます。

項目内容書くときの目安
対象の便出荷日と便名、荷物相手の伝票番号を添える
到着の見込み予定の時刻幅を持たせて書く
現在の状況車両の位置分かる範囲で
原因渋滞、故障、天候など事実だけを書く
当面の対応代替の手配など決まっていることを
連絡先担当と電話番号直通の番号を

右の列は、書くときの目安です。そのうえで、相手の伝票番号を添えると、荷主の側で照合しやすくなります。

到着の見込みを先に書く

到着の見込みが分かれば、相手は受け入れの段取りを組み直せます。逆に、見込みが書かれていないと、いつまで待てばよいか分かりません。

正確な時刻が読めない場合は、幅を持たせて書きます。そのうえで、分かった時点で改めて連絡する旨を添えておきます。

見込みが変わったときは、その都度連絡を入れます。

原因は事実だけを書く

原因の欄には、確認できていることだけを書きます。推測を書いて、後から違っていた場合に信用を失います。

調査中である旨を書いておくと、後で内容が変わっても説明できます

再発の防止は別に伝える

遅延の連絡は、その便について伝える文書です。再発の防止策まで書き込むと、長くなって要点がぼやけます。

同じ原因が繰り返されている場合は、別の機会に改めて伝えます。そのうえで、社内で決めた対策を具体的に示します。

急ぎの連絡と、改善の報告は分けて出す形が扱いやすくなります。

荷主への遅延のご連絡を出す時期

荷主への遅延のご連絡は、早いほど相手が打てる手が増えます。到着した後に連絡しても、相手は何もできません。

  • 遅れが見えた時点 10 相手が段取りを組める
  • 予定の時刻の前 6 まだ間に合う
  • 予定の時刻を過ぎて 2 相手が待っている
  • 到着後 1 連絡の意味が薄い
連絡の時期と、相手が打てる手の余地(相対的な比較)

上に行くほど、相手にできることが増えます。そのため、確定していなくても見えた段階で入れるほうが役に立ちます。

遅れそうな段階で入れる

遅れが確定してから連絡すると、相手の準備の時間が無くなります。渋滞に入った時点、故障が分かった時点で入れるほうが親切です。

「遅れる可能性がある」という段階の連絡でも、相手は準備ができます。そのうえで、結果として間に合った場合は、その旨を伝えます。

早めの連絡が続くと、信頼につながります。

運転者から事務所への経路を決める

遅れに最初に気づくのは、現場の運転者です。その情報が事務所へ届かないと、荷主への連絡が遅れます。

運転者から事務所への経路を決めておくと、連絡が遅れません

定型の文面を用意しておく

遅延の連絡は、急いで出す文書です。一から文面を考えていると、その分だけ時間がかかります。

便名、時刻、原因、対応を差し替えるだけの型を用意しておきます。そのうえで、原因ごとに何パターンか持っておくと、さらに早くなります。

型があると、担当が誰でも同じ水準の文書が出せます。

荷主への連絡文で使える数字をそろえる

荷主への連絡文、特に運賃の話をするときは、数字が要ります。「厳しい」という言葉だけでは、相手も社内を説得できません。

  • 便ごとの原価燃料・人件費・車両
  • 待機の時間荷待ちと荷役
  • 公表の指標燃料価格と標準的な運賃
自社の数字と外の指標を、両方そろえる

自社の数字だけだと、相手には検証できません。一方で、公表されている指標だけでは、自社の事情が伝わりません。

便ごとの原価を集計する

運賃の話をするには、その便にいくらかかっているかが要ります。燃料、人件費、車両の償却、高速代。これらを便ごとに集計します。

日報とデジタコの記録から、走行距離と時間が取れます。そのうえで、燃料の単価と人件費の時間単価を掛けると、おおまかな数字が出ます。

細かい精度より、傾向が分かる形で足ります。

待機の時間を記録に残す

荷待ちの時間は、運転者の拘束時間に含まれます。一方で、運賃には反映されていないことが多い部分です。

待機の時間が数字で出ていると、別建てで請求する話ができます

公表されている指標を添える

燃料の価格や、標準的な運賃といった指標は公表されています。自社の数字に添えると、値上げの根拠が客観的になります。

指標の出どころと時点を明記しておくと、相手が確認できます。そのうえで、自社の数字と指標の両方を並べて示します。

外の数字があると、相手も社内で説明しやすくなります。

荷主への運賃改定のお申し入れに書くこと

荷主への運賃改定のお申し入れは、現状・根拠・提案の3つで組みます。どれが欠けても、相手が検討する材料になりません。

  • 現状いまの運賃と原価
  • 根拠何がどれだけ上がったか
  • 提案いくら、いつから
現状・根拠・提案の3つで組む

3つのうち、抜けやすいのは3つ目の提案です。苦しい事情だけを書いて、いくらにしてほしいかを書かない文書になりがちです。

上がった費用を項目ごとに書く

「経費が上がった」とだけ書くと、相手は判断できません。燃料、人件費、車両の価格、保険料。項目ごとに、いつからいくら上がったかを書きます。

前回の運賃を決めた時点と比べる形にすると、変化が伝わります。そのうえで、その中で自社が吸収してきた分も示します。

努力の跡が見えると、受け止め方が変わります。

標準的な運賃との差を示す

国土交通省が示している標準的な運賃は、話し合いの目安として使えます。自社の現行運賃との差を示すと、水準が客観的に分かります。

標準的な運賃は話し合いの目安として使えます

提案は幅ではなく1つ出す

「5%から10%の値上げを」と幅で出すと、相手は下限で受け取ります。1つの数字を出したほうが、検討の対象になります。

そのうえで、いつから適用したいかも書きます。時期が書いていないと、話が先送りされます。

数字と時期の両方が入っていると、相手が社内で稟議に乗せられます。

荷主への運賃改定のお申し入れを出す時期

荷主への運賃改定のお申し入れは、出す時期で結果が変わります。相手が予算を組んだ後では、その期は動かせません。

  1. 相手の期の切り替わりを把握しているか はい次へ いいえ担当に確認する
  2. 予算を組む時期の前か はい出す時期として良い いいえ次の期を狙う
  3. 根拠の数字がそろっているか はい次へ いいえ原価の集計を先に
  4. 担当者の上に届く形か はい申し入れを出せる状態 いいえ回覧される書き方に直す

相手が予算を組む前に出すと、検討の対象に入る

運賃改定の申入れを出す時期の判断

4つのうち、最初の2つが時期に関わる部分です。そのため、荷主ごとに期の切り替わりを把握しておくと、動く時期が決まります。

相手の予算の時期を聞いておく

荷主の決算期や予算を組む時期は、聞けば教えてもらえることが多いものです。運賃の話をしていない平時に、雑談の中で確認しておきます。

そのうえで、荷主ごとの一覧に書いておくと、翌年も使えます。期の切り替わりの3か月前あたりが、申し入れの時期になります。

時期を外すと、内容が良くても次の期まで待つことになります。

一度で結論を求めない

運賃の改定は、担当者だけで決められる話ではありません。社内で検討する時間が要ります。

そのため、出してすぐに返答を求めない形にします。そのうえで、いつごろまでに返答をいただきたいかは書いておきます。

期限が無いと、そのまま止まることがあります。

断られたら条件を変えて出す

全体の運賃改定が難しいと言われたときは、部分から話を始めます。待機時間の別建て、特定の路線だけ、燃料サーチャージの導入。

全体が動かないときは、部分から話を始めます

荷主への連絡文でつまずきやすいところ

荷主への連絡文で最も多いつまずきは、出すこと自体をためらう段階です。関係が悪くなることを心配して、伝えないまま時間が過ぎます。

  • 出すのをためらう 5関係を気にする
  • 根拠がそろわない 4原価の集計がない
  • 時期を外す 3予算が固まった後
  • 担当者で止まる 3上に届かない
つまずく場所と、影響の大きさの目安

いちばん上の「ためらう」は、根拠がそろっていないことが背景にあることが多くあります。そのため、数字を用意すると出しやすくなります。

原価の集計を先に整える

運賃の話を出せない理由の多くは、根拠になる数字が無いことです。感覚として苦しいことは分かっていても、示せる形になっていません。

日報とデジタコの記録から、便ごとの走行距離と時間を出します。そのうえで、燃料と人件費を掛け合わせると、おおよその原価が見えます。

数字が出ると、話を切り出しやすくなります。

担当者の上に届く書き方にする

現場の担当者は、運賃を決める権限を持っていないことが多くあります。そのため、その人が上司へ説明できる形の文書にします。

経緯を知らない人が読んでも分かる書き方にして、数字を並べます。そのうえで、提案の内容を1行で示しておくと、上へ上げやすくなります。

担当者に負担をかけない形が、結果として早く進みます。

荷主勧告の仕組みを背景として押さえる

貨物自動車運送事業法には、荷主勧告という仕組みがあります。荷主の行為が原因で運送事業者が法令に違反した場合に、荷主へ勧告を行うものです。

仕組みを知っておくと、話し合いの立ち位置が変わります

荷主への連絡文を型にして残す

荷主への連絡文は、毎回ゼロから書くと時間がかかります。型を作って、差し替える部分だけを変える形にします。

  1. 1 型を作る 遅延と改定の2種類
  2. 2 差し替える 便名と数字だけ
  3. 3 出した記録 日付と相手を残す
  4. 4 結果を残す 返答の内容
  5. 5 次に生かす 通った書き方を残す
型と記録を残すと、次のやり取りが早くなる

型を作るだけでなく、出した記録と結果まで残すところに意味があります。そのうえで、次に同じ相手へ出すときの材料になります。

出した記録を荷主ごとに残す

いつ、誰に、何を出したかを荷主ごとに残しておきます。運賃の交渉は数年おきに起きるため、前回の経緯が分かると助かります。

前回いつ改定したのか、そのとき何を根拠にしたのか。そのうえで、相手からどういう返答があったかも書いておきます。

担当が代わっても、経緯が引き継げます。

通った書き方を蓄積する

同じ内容でも、書き方によって受け止められ方が変わります。うまく進んだときの文面は、残しておくと次に使えます。

逆に、断られたときの文面も残しておきます。そのうえで、何が足りなかったかを短く書き添えます。

蓄積があると、担当が代わっても水準が落ちません。

定期的に見直す時期を決める

運賃は、放っておくと何年も同じままになります。年に1回、荷主ごとの運賃と原価を並べて見る時期を決めておきます。

そのうえで、原価が上がっている先から順に話を始めます。すべての荷主に同時に出す必要はありません。

見直しの時期を決めておくと、動く機会が毎年やってきます。

様式は遅延のご連絡テンプレート運賃改定のお申し入れからダウンロードできます。

よくある質問

遅延の連絡は電話で済ませてもよいですか。

まず電話で伝えたうえで、文書を出す形が広く使われています。電話は早く伝わりますが記録に残りません。到着の見込みや原因を文書で残しておくと、後の確認や再発の防止に使えます。

運賃の改定はどう申し入れるとよいですか。

根拠を添えて文書で申し入れる形が扱いやすくなります。燃料や人件費の上がり方、標準的な運賃との差といった数字を並べると、話が具体的になります。口頭だけで伝えると、社内で検討する材料が相手に残りません。

申し入れを断られたらどうしますか。

一度で結論を求めず、条件を変えた案を出す形が広く使われています。全体の値上げが難しい場合、待機時間や付帯作業の分だけを切り出す方法があります。取引の継続そのものを考える段階では、荷主勧告の仕組みも背景として押さえておきます。

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