実運送体制管理簿は誰が作るのか|対象と階層
公開 2026年8月21日/更新 2026年10月3日
目次11項目
実運送体制管理簿は、2024年5月に公布された改正貨物自動車運送事業法で設けられ、2025年4月1日から作成が義務になった書類です。前例がない書類なので、「何を書けばよいのか」から迷いやすいところになります。
一般に、新しい書類が入ったときは、様式を探すより先に、何のために作る書類なのかを押さえておくと迷いが減ります。この書類の場合は、その荷物を実際に運んだのは誰かを、荷主から見えるようにすることが目的になっています。
- 1 荷主 運送を依頼する
- 2 元請 引き受けて管理簿を作る
- 3 下請 実際に運ぶ/さらに委託する
- 4 管理簿 誰が運んだかが並ぶ
多重下請けが常態化している中で、荷主が実態を把握できないという課題がありました。管理簿は、その見えない部分を書面にするための仕組みです。
実運送体制管理簿とは|何のための書類か
実運送体制管理簿とは、その荷物を実際に運んだ会社を書き並べ、責任の所在をはっきりさせる書類です。
荷主から見ると、依頼した相手と、実際に運んだ会社が違うことがあります。間に何社か入っている場合もあります。事故や遅延が起きたとき、どこに何が起きたのかが追えない。この状態を減らすために、管理簿が入りました。
書くのは、実際に運んだ会社です。途中で仲介した会社ではありません。ここが名前から読み取りにくい部分になります。「実運送」という言葉が、実際に車を出して運んだ会社を指しています。
もうひとつの狙いは、下請構造そのものを見えるようにすることです。何次まで下りているかが書面に残ると、階層の深さが自社でも把握できるようになります。深い階層は、運賃の目減りにも、責任の不明確さにもつながります。
管理簿は、取り締まりのための書類というより、構造を見えるようにするための書類だと捉えておくと、書く内容が決めやすくなります。
実運送体制管理簿は誰が作成するのか
実運送体制管理簿を作成するのは、真荷主から運送を引き受け、その運送に他の運送事業者を使った元請事業者になります(貨物自動車運送事業法第24条の5第1項)。真荷主とは、自らの事業のために運送を委託する荷主のうち、運送事業者や利用運送事業者ではない者をいいます(同法第12条第2項)。
ポイントはここです。元請かどうかは荷主から直接引き受けたかで決まり、管理簿が要るかどうかは他社を使ったかで決まります。自社の車で全部運んだ場合も立場は元請ですが、国土交通省のQ&A(問4-4)では、この場合の管理簿は不要とされています。一部でも他社の運送を使えば、作成の対象になります。
一方、他の運送事業者から仕事を受けた場合は、元請ではありません。その運送についての管理簿を作る立場ではないことになります。
ただし、下請の立場であっても通知の義務があります。実際に運んだ会社は、元請に対して自社の名称、運んだ貨物の内容と区間、請負階層を通知します(同条第4項)。さらに他社へ委託する会社は、元請の連絡先や真荷主の名称などを委託先に伝えます(同条第3項)。この通知が途切れると、元請の管理簿が埋まりません。
なお、2026年4月1日からは、貨物利用運送事業者が真荷主から引き受けた場合にも、元請として管理簿を作る義務が広がりました(同法第37条)。貨物軽自動車運送事業者は、作成の義務を負う元請事業者には含まれないとされています(国土交通省Q&A 問4-2)。
- 荷主から直接引き受けたか はい元請として管理簿を作る いいえ次へ
- 他の運送事業者から受けたか はい下請として元請に報告する いいえ対象外
- さらに他社へ委託したか はい委託先の情報も報告する いいえ自社で運んだ旨を報告
立場は「誰から受けたか」で決まる
自社が両方の立場を持つ場合もあります。A社の仕事は元請、B社の仕事は下請。この場合は、A社の運送についてだけ管理簿を作ることになります。案件ごとに立場が変わるという理解をしておくと、判断がぶれにくくなります。
実運送体制管理簿の対象になる運送
実運送体制管理簿の対象になるのは、真荷主から引き受けた1.5トン以上の貨物の運送のうち、他の運送事業者に委託したものです(貨物自動車運送事業法第24条の5第1項、同法施行規則第13条の13)。すべての運送について作るものではありません。自社の車で完結した運送は、委託が発生していないため対象外になります。
対象になるかどうかは、次の順で見ると分かりやすくなります。
- 真荷主から直接引き受けた運送か
- 1回の運送依頼の重さが1.5トン以上か
- その運送の一部または全部を、他社に委託したか
- すべてあてはまるなら、管理簿の対象
1.5トンかどうかは、真荷主から依頼を受けた時点の重さで判断するとされています(国土交通省Q&A 問4-8)。実際に運ぶ段階で分けて積んでも、依頼が1.5トン以上なら対象です。反対に、基本契約の合計が1.5トンを超えていても、1回ごとの依頼が1.5トン未満なら対象になりません(同 問4-8-3)。
実務で判断に迷いやすいのが、一部だけを委託した場合です。10台のうち2台だけ協力会社に出した、という形は珍しくありません。この場合も、委託した部分について記載が必要になります。一部の委託でも対象になるという点は、押さえておきたい部分です。
もうひとつ迷いやすいのが、傭車と呼ばれる形です。呼び方が社内で何であれ、他の運送事業者に運んでもらっているなら、委託にあたります。そのため、呼称ではなく実態で判断するのが良いです。
判断の分かれ目になりやすい形を、いくつか挙げておきます。車両だけを借りて自社の運転者が乗った場合は、運んでいるのは自社です。委託にはあたりません。反対に、車両も運転者も相手方のもので、自社は手配だけをした場合。これは委託になります。
利用運送の登録で行っている運送も、実際に運ぶのは他社です。管理簿の考え方としては、実運送を行った会社を書くことになります。
自社の車と協力会社の車が混在する運送では、混在していること自体を書いておくと後から読めます。「10台のうち2台を委託」という形が残っていれば、量の感覚も伝わります。迷った案件が出たときは、社内で判断を1行残しておくと、次に同じ形が来たときに早く決まります。
実運送体制管理簿の階層はどこまで書くか
実運送体制管理簿の階層は、実際に運んだ会社までをたどって記載する形になります。法令では「請負階層」と呼ばれ、真荷主と元請の契約のあとに結ばれた運送契約の数で数えるとされています(同法第24条の5第1項第3号)。元請の委託先が1次、その委託先が2次という数え方です(国土交通省Q&A 問4-9)。
- 元請(自社)
- 一次下請
- 二次下請
- 実際に運んだ会社
ここで問題になるのが、下位の階層の情報をどう手に入れるかという部分です。自社が直接契約しているのは一次下請までです。その先に誰がいるかは、報告してもらわないと分かりません。
報告してもらう仕組みが無いと、管理簿は埋まりません。ここが、この書類のいちばん現実的な難しさになります。書式を用意することより、情報が集まる形を作ることのほうが手間がかかります。
階層が深い案件ほど、情報は届きにくくなります。一次下請は自社と直接の関係があるので、頼めば答えてくれます。二次、三次と下りるにつれて、自社との接点は薄くなります。
そのため、法律は通知の流れを決めています。元請は委託先に、元請の連絡先・真荷主の名称・委託先の請負階層を伝えます。委託先がさらに委託するときは、同じ内容を次の委託先に伝えます。そして実際に運んだ会社が、元請に直接、名称・貨物の内容と区間・請負階層を通知する形です(国土交通省Q&A 問4-7)。
一次下請に「その先の分をまとめて報告してほしい」と頼む運用もできますが、法律上の通知は実際に運んだ会社から元請に届く形になっています。委託するときに元請の連絡先を書面に載せておくと、三次・四次の会社からも通知が届きやすくなります。
階層が3つ4つと続く案件がある場合は、そもそも運賃がどこまで残っているのかという話にもなります。管理簿を作っていくと、この構造が数字として見えてきます。深い階層が常態化している取引は、見直しの候補になります。
下請から報告を受ける仕組みを契約に入れる
下請から報告を受ける仕組みは、契約の側に入れておくのが確実です。口頭の依頼だけで回している関係では、報告の義務が伝わりません。「聞いたら教えてくれる」という状態だと、案件ごとに催促することになります。
契約書や運送引受書に、次の内容を入れておく形が広く使われています。
- 実運送体制管理簿の対象の運送であること(委託先に確実に伝えるよう、Q&A 問4-7で求められています)
- 実際に運んだ会社が元請に通知する項目(商号又は名称、貨物の内容と区間、請負階層)
- さらに委託する場合は、元請の連絡先と真荷主の名称を委託先に伝えること
- 通知の方法と期限
とくに3つ目が効いてきます。「報告してください」だけだと、いつまでに、どの形で送るのかが決まりません。決まっていないと、月末になって集める作業が発生します。
依頼のたびに送る書面の中に、報告欄を作っておくやり方もあります。同じ紙で依頼と報告が済むと、やり取りが1往復で終わります。
もうひとつ、実務上のコツがあります。新しい協力会社と取引を始めるときに、この報告の話を先に済ませておくことです。あとから頼むと、条件を追加したように受け取られます。
実運送体制管理簿の書き方と運用
実運送体制管理簿の書き方は、案件ごとに1枚作る形にすると運用が回しやすくなります。月にまとめて作ろうとすると、記憶をたどる作業になります。委託した時点で1行書いておくほうが、結果として早く終わります。
書く内容は、次のような形になります。法令で決まっているのは3項目で、残りは運用のために足しておくと便利な項目です。
| 項目 | 書くこと | 法令上 |
|---|---|---|
| 実運送事業者 | 実際に運んだ会社の商号又は名称 | 必須(第24条の5第1項第1号) |
| 貨物の内容と区間 | 「食料品」「東京から大阪」程度でよい(Q&A 問4-10) | 必須(同第2号) |
| 請負階層 | 何次の委託か | 必須(同第3号) |
| 真荷主 | 依頼を受けた相手 | 任意(運用のため) |
| 運送の日付・案件番号 | 引受書と突き合わせるため | 任意(運用のため) |
作るタイミングを決めておくと、抜けが減ります。配車を組んだ時点で、委託が発生する運送だけを別に控えておく。この一手間があると、月末の作業が数分で終わります。
配車から記録までの流れは配車から記録までに整理しています。
実運送体制管理簿と運送引受書をつなげる
実運送体制管理簿は、運送引受書とつなげておくと運用が楽になります。引受書は、荷主から引き受けた内容を書くものです。管理簿は、その運送を誰が運んだかを書くものです。同じ運送についての表と裏になっています。
別々に作る場合
- 同じ内容を2回書く
- 案件番号が一致しない
- 突き合わせに時間がかかる
つなげて作る場合
- 引受書の番号を管理簿に書く
- 転記が減る
- あとから追える
引受書に案件番号を振り、管理簿にも同じ番号を書いておく。これだけで、あとから照会があったときに探せるようになります。番号は凝ったものでなくて構いません。日付と連番で足ります。
実運送体制管理簿の運用で先に決めること
実運送体制管理簿のような前例がない書類は、社内で解釈が分かれやすくなります。同じ会社の中でも、担当者によって書き方が変わってしまうと、あとで見返せません。
最初に決めておくと楽になるのは、次の3つです。
ひとつめは、作るタイミングです。委託が決まった時点なのか、運送が終わってからなのか。前者のほうが抜けにくくなります。
ふたつめは、保管する場所です。案件ごとのファイルに綴じるのか、管理簿だけをまとめるのか。引受書と同じ場所に置くやり方が扱いやすくなります。
みっつめは、報告が来なかったときの扱いです。委託先から情報が届かない場合に、誰が催促するのかを決めておきます。
なお、対象や記載事項の細かい部分は、国土交通省のQ&Aが改訂されるたびに整理が足されています。自社の運送が当てはまるかどうかは、所管の運輸支局に確認しておくのが確実です。
よっつめとして、荷主から求められたときの出し方も決めておくと安心です。真荷主は、元請に対して業務時間内はいつでも管理簿の閲覧や謄写(写しを取ること)を求められると定められています(同法第24条の5第5項)。求められたときに、その案件の分だけを取り出せる形になっているかを確認しておくと良いです。
年度ごとに1つのファイルにまとめている場合、必要な部分だけを抜き出すのに時間がかかります。そのため、案件ごとに1枚という形にしておくと、そのまま出せます。
はじめは手間に見える書類ですが、続けていくと自社の下請構造が見えるようになります。どこで階層が深くなっているかが分かると、取引の見直しにも使えるようになります。
半年ほど溜まったところで、委託先ごとの件数を数えてみるのも良い方法です。特定の会社に集中しているなら、その会社が動けなくなったときの備えを考える材料になります。件数が少ない会社が多く並んでいるなら、関係を絞る余地があるかもしれません。
制度として求められて作る書類ですが、溜まったものを読むと自社の姿が見えてきます。そこまで使えると、作る手間が回収できるようになります。
実運送体制管理簿にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
実運送体制管理簿は、2024年から2026年にかけて2つの改正で形が決まってきた制度です。「いつから」「誰が」は、改正のどちらを見ているかで答えが変わります。
| 時期 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 2024年5月15日 | 改正物流法(令和6年法律第23号)が公布され、実運送体制管理簿・運送契約の書面交付などが定められた | 国土交通省 改正貨物自動車運送事業法Q&A |
| 2025年4月1日 | 一般貨物自動車運送事業者に、管理簿の作成・1年保存、書面交付、運送利用管理規程などの義務が始まった | 貨物自動車運送事業法第12条・第24条の5 |
| 2025年6月11日 | トラック適正化2法(令和7年法律第60号・第61号)が公布された | 同Q&A 問1-2 |
| 2026年4月1日 | 貨物利用運送事業者が元請になる場合にも管理簿の作成義務が広がった。二以上の段階にわたる委託を制限する努力義務も始まった | 同Q&A 問1-2・問4-3 |
| 公布から3年以内 | 許可の更新制度と、適正原価を下回る運賃・料金の制限が施行される予定 | 同Q&A 問1-2 |
実運送体制管理簿の記載事項(実運送事業者の名称、貨物の内容と区間、請負階層)は、2026年4月の改正でも変わっていません。変わったのは作る立場の範囲です。利用運送の登録を持つ会社が元請になる取引では、作る側が入れ替わっていないかを見直しておくと安心です。
出典:
- 貨物自動車運送事業法(e-Gov法令検索)
- 貨物自動車運送事業法施行規則(e-Gov法令検索)
- 国土交通省「改正貨物自動車運送事業法について」
- 国土交通省「改正貨物自動車運送事業法 Q&A」(令和8年3月31日時点)
確認日は2026年10月3日です。自社の取引が対象になるかは、所管の運輸支局(輸送部門)で確かめられます。
実運送体制管理簿に出てくる用語
実運送体制管理簿の条文は、ふだんの現場の言葉と少しずつ違う言葉で書かれています。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 真荷主 | 自らの事業のために運送事業者や利用運送事業者に運送を委託する者で、運送事業者・利用運送事業者ではないもの。一般の消費者は含まれない | 法第12条第2項、Q&A 問1-3 |
| 元請事業者 | 真荷主から引き受け、管理簿を作る事業者 | 法第24条の5第2項 |
| 実運送 | 事業用自動車を使って行う貨物の運送 | 法第24条の5第1項第1号 |
| 請負階層 | 真荷主との運送契約のあとに結ばれた運送契約の数 | 法第24条の5第1項第3号 |
| 元請連絡事項 | 元請の連絡先と真荷主の名称など、委託先に伝える事項 | 法第24条の5第2項・第3項 |
| 傭車 | 他の運送事業者に運んでもらうことを指す現場の言葉。法令上の定義はない | なし |
用語でいちばん取り違えが多いのは「荷主」と「真荷主」です。他の運送会社から仕事を受けたとき、その運送会社は真荷主ではありません。管理簿を作るのは、その先にいる真荷主から直接受けた会社です。
実運送体制管理簿と一緒に押さえておきたいこと
実運送体制管理簿に罰則はないが、行政処分の対象にはなりうる
実運送体制管理簿の作成・保存の義務に違反しても罰則はないとされていますが、法第33条に基づく行政処分などの対象になる可能性があるとされています(国土交通省Q&A 問4-18)。国への定期的な提出は要りませんが、監査やトラック・物流Gメンの調査で求められたときは出す必要があります(同 問4-17)。通知が届かず作れなかった場合は、一義的には通知を滞らせた会社の責任と整理されています(同 問4-19)。そのうえで、元請も把握に取り組むよう求められています。
委託の流れが決まっている取引は、1回作れば足りる
真荷主から引き受ける時点で、実際に運ぶ会社までの委託の流れがすべて分かっている場合は、運送ごとに作らなくてよいとされています(施行規則第13条の14)。Q&A(問4-11、問4-11-2)では、最初の運送で1回作り、委託の流れや運ぶ会社が1社でも変わったらその運送を記録する形が示されています。最初の記録から1年たったら、改めて記録し直します。
配車表で兼ねてもよく、電子でもよい
実運送体制管理簿に決まった様式はなく、必要な3項目が入っていれば既存の配車表を使ってもよいとされています(Q&A 問4-15)。電子データでの作成・保存も認められています(法第24条の5第1項、Q&A 問4-16)。作る期限の定めはありませんが、運送が終わったあと遅滞なく作るのが望ましいとされています(同 問4-14)。

よくある質問
自社で全部運んでいる場合も作成が必要ですか。
国土交通省の改正貨物自動車運送事業法Q&A(問4-4)では、真荷主から引き受けた貨物をすべて自社で運んだ場合は不要とされています。一部でも他の運送事業者の運送を使えば対象になります。迷う取引は所管の運輸支局で確かめられます。
実運送体制管理簿の保存期間はどのくらいですか。
引き受けた貨物の運送が完了した日から1年間、営業所に備え置くと定められています(貨物自動車運送事業法第24条の5第1項)。電子データで保存することもできます。
下請から報告が来ないときはどうしますか。
法律上は、実際に運んだ会社が元請に通知する義務を負っています(同法第24条の5第4項)。届かない場合も、元請は実運送事業者と請負階層の把握に取り組むよう求められています(国土交通省Q&A 問4-19)。催促した記録を残し、委託の書面に通知の方法と期限を入れておくと、次から届きやすくなります。