実運送体制管理簿は誰が作るのか|対象と階層の考え方
公開 2026年8月21日
実運送体制管理簿は、社内に前例がない書類です。法改正で新しく導入されたもので、「去年はどうしていたか」を聞ける相手がいません。
だから最初の質問が「うちは作るのか」になります。ここから順に整理します。
なお、適用の範囲や記載事項は省令で定められ、運用の解釈も固まりつつある段階です。自社が対象かどうかの最終判断は、所管の運輸支局にご確認ください。
そもそも何のための書類か
目的は多重下請構造の見える化です。
荷主が運送を頼んだとき、実際に運んだのが誰なのかが分からない、という状態が長く続いてきました。間に何社も入り、そのたびに手数料が引かれ、最後に運ぶ会社の取り分が減る。この構造を見えるようにするのが趣旨です。
つまりこの書類は、「実際に運んだのは誰か」を元請が把握して残すためのものです。
誰が作るのか
作成するのは元請事業者です。ここでいう元請とは、荷主(真荷主)から直接運送を引き受けた事業者を指します。
- 荷主 → 自社(元請) → 下請 … 自社が作る
- 荷主 → 他社(元請) → 自社(下請) … 自社は作らない。ただし元請への報告が求められる
下請の立場でも無関係ではありません。 元請から「実運送を行った事業者の情報を報告してほしい」と求められる立場になります。
どの運送が対象か
すべての運送が対象になるわけではありません。一定の規模以下の運送は除外されています。
除外の基準は省令で定められており、貨物の重量による判定が含まれます。「1.5トン」という数字を聞いたことがあるなら、この判定のことです。 ただし数値と判定方法は正確に確認する必要があるため、ここでは断定しません。所管の運輸支局か、加入している協会に確認してください。
判断の順序としては次のようになります。
- 荷主から直接引き受けた運送か(元請か)
- その運送は除外基準に当たらないか
- 当たらないなら、管理簿に記載する
階層をどこまで書くか
記載するのは、実際に運送を行った事業者です。自社で運んだ場合は自社を記載します。「自社実施」と書けば足りますが、空欄にはしないでください。記録漏れと区別がつかなくなります。
下請に出した場合は、その事業者を記載します。さらにその先(2次下請)に出されていた場合も、把握できる範囲で記載することになります。
ここが最大の実務課題です。自社が直接把握できるのは、自社が委託した相手までです。その先は、委託先からの報告に依存します。
報告を受ける仕組みを契約に入れる
管理簿が埋まらない原因は、ほぼこれ1つです。下請から報告が来ない。
運送委託契約の中で、次の3つを決めておいてください。
- 何を報告するか(実運送を行った事業者の商号・所在地・許可番号)
- いつまでに(運送日の翌営業日まで、月末締めの翌5日まで など)
- どうやって(所定の様式をメールで、フォームで など)
契約に一文入っているだけで、督促の根拠になります。口頭でお願いしているだけだと、忙しい時期に止まります。
日々の運用に落とす
月末にまとめて思い出そうとすると、必ず抜けます。決めた瞬間に書くのが唯一の方法です。
配車表に「自社/協力会社(社名)」の欄を作っておけば、配車を組んだ時点で記録が始まります。月末は、その欄を管理簿に転記するだけの作業になります。
報告が来ていない運行は、「※未報告」と書いて残してください。 空欄にすると、記録漏れなのか報告待ちなのかが後から区別できません。督促した日も備考に書いておけば、対応した経緯を説明できます。
引受書とつなげる
運送引受書を作っているなら、そこに引受書番号があります。管理簿の備考にその番号を書いておくと、条件と実運送体制が1本の線でつながります。
よくある質問
自社で全部運んでいる場合も作成が必要ですか。
対象となる運送を荷主から直接引き受けた場合、実運送事業者として自社を記載することになります。適用範囲は所管の運輸支局にご確認ください。
下請から報告が来ないときはどうしますか。
未報告と記録に残し、督促した事実も書いてください。そのうえで、契約に報告の方法と期限を定める運用に切り替えることをおすすめします。